香港の区議会議員選挙で投票所に並ぶ人たち(24日、香港)
【香港=渡辺伸】政府への抗議活動が続く香港で24日、地方議会にあたる区議会議員選挙の投票が始まった。刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする条例改正案への反対を契機に、大規模なデモが今年6月に始まってから初めての選挙だ。香港政府や中国に批判的な民主派の議席は現在約3割にとどまり、どれだけ議席を伸ばせるかが焦点となる。
香港島の中心部にある投票所では24日、投票開始の7時半前になると、多くの有権者が列に並んだ。投票所周辺でのトラブルなどを警戒し、警察官がパトロールをする場面も見られた。
会社経営者の女性(35)は民主派に票を投じた。「香港人の権利を守るために主張することが大切だ。警官がデモの参加者を相次いで逮捕していることは問題だ」と語った。50代の会社員男性は4年ごとに行われる区議会選に毎回参加している。「今回は香港にとってとても重要な選挙だ。デモは平和的ならば賛成できるが、過激なデモには賛同できない」と話した。
林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官も24日朝に投票した。投票後、記者団に対して「選挙が平和的に行われるよう期待している」と述べた。
香港の区議会は18の区に設置されている。今回の選挙では452の小選挙区で議席が争われる。区議会は条例や予算をつくる権限はなく、地域にかかわる政策を政府に提言する役割に限定されている。2014年の抗議活動「雨傘運動」の後、15年に行われた前回の区議会選では親中派が約7割の議席を確保した。
注目すべきなのは、区議会選の結果が政府トップである行政長官の選挙(次回は22年の予定)に影響を及ぼす可能性があることだ。行政長官の選挙は産業界などから選出された1200人の選挙委員による間接選挙だが、そのうち一部は区議会に割り当てられている。もしも民主派が区議会選で過半数の議席を取ると、行政長官の選挙に間接的に影響力を持てるようになる。