アメリッシュガーデン改

姑オババと親戚の物語をブログで綴っております・・・ブログ界のちいさなディズニーランドを目指しています

「お前、いったい何者」と聞かれると、マジ言葉を失う【明智光秀と織田信長7】ドラマ『麒麟がくる』の帰蝶役が決定。

登場人物:オババは私の姑。ディズニー狂で元気一杯の76歳。以前の【結婚と毒親】シリーズでは、多くのオババファンができました。そして、今回は戦国時代に意識が飛び、他人の身体をアバターとして生きるオババ&アメリッシュのお話です。

 

f:id:funyada:20191123144218j:plain

戦国時代の老女のイメージとして。

(前回までのあらすじ:1573年の母娘を生かすため兵隊になる決意をしたオババとアメリッシュ。7人の仲間と一緒にオトリとして編成された部隊に配属され、敵から逃亡して坂本城に戻る道をさがしている)

 

坂本城への道、琵琶湖の湖辺

 

「お前たち、いったい何者なんだ」

 

仲間となった7人の小頭(こがしら)トミに聞かれたんだけど、これほど答えにくい質問ってないわけで・・・、

学校の教室で、ぼーっと窓から外見ていたら、社会科の教師が同じ質問したときと同じくらい困った。ま、ちょっとその時とはニュアンスが違うけど。ともかく、あれはものすごく退屈な授業だった。だって黒板の前で、ただ教科書をダダ読みするだけ授業ってなんの意味があるんだろう。

 

でも、いい加減な授業をする教師と、1573年のトミの質問には、なんていうか言葉の重みがちがって、だから誠実に答えたいって思ったんだ。

 

450年ほど後の未来から来たとか、この体はおカネとおマツのだけど、実は21世紀の人間なんだとか、アインシュタインの時空理論で空間が交差する時の概念自体が不確かなものでとか、1573年に意識が飛んだ憶測も述べたかったけど、それは混乱させるだけだと思う。控えめに言っても。

 

もし、ここにスマホがあって、google検索したって、まともな解答なんてできっこない。

 

こうした言葉を、コンマ1秒、秒速で脳内信号が走ったわけで・・・

だから、最初に、この返事をする前に、ものすごく考えはしたと弁解しておく。そして、誠実に答えたいって、そう考えた結果、なぜか、私、こう言っちゃたんだ。

 

「ヒト科です」

 

オババは首を振り、トミは目をぐるっとまわして、それから、ちょっとコブシを握った。演歌のコブシじゃない、手でげんこつ作るほう。

それから、肩をすくめて、で、「どっちへ行けばいいんや」って聞いた。

 

琵琶湖のほとりは闇に包まれ、完全に夜になっていた。

 

坂本城へ帰るには北極星で方向をみればいいって言ったら、

先ほどの「お前たち、いったい何者なんだ」って、非常に答えにくい質問が飛んだわけだけど、まあ、ともかく空を見上げた。

 

いや、もうね、そりゃ綺麗な星空。満点に輝く星々に圧倒されちまって、たぶん、近くから見ていれば、すごく間抜けな顔をしてたと思う。

戦国時代、人間は愚かな戦いばかり繰り返していたけど、空は平和な21世紀なんて、ケってくらい綺麗なんだよ。

 

「オババ、なんて荘厳な美しさ」

「ああ、信じられないくらいの星だ」

「天の川までくっきりしてます」

「そうだな」

 

これほどの星空って、ある意味、自然の脅威みたいで、人を感動させると同時に恐れさえ抱かせてしまうものだ。

 

「おいおいおい、空をぼーっと見ている場合やない」

「あ、すみません。あまりに星がすごくて」

「それが珍しいのか。腹のたしにはならんぞ」

「トミ、ハマが疲れているし、馬も限界だ」と、カズが声をかけてきた。

ふと見ると、まだ小学生にしか見えないハマは、いつの間にか眠った馬を背に雑草の間で横になっている。無理をして大人の足についてきて疲れ切っているのだろう。

「少し仮眠を取って戻ろう」

「ああ」

 

枝を集めて火を起こし、数時間ほどだろうか、浅い眠りの仮眠をとった。

 

焚き火を眺めながら、ヨシが少し離れた場所で起き、こちらを警戒しているように見えた。ちらちらと鋭い視線を送ってくる。 

 

私は眠れなかった。

パチパチと枝を弾いて萌える焚き火の音を聴きながら、北斗七星を探した。この星ほど見つけやすい星座はない、ひしゃくの形で、そのカップ部分から先を5倍にした場所に輝く星、北極星を発見できる。

 

焚き火が下火になったころ、トミが「ほら、ハマ、起きな」と号令した。

私もオババも、その声で目覚めた。

いつのまにか眠っていたのだろう。

 

「あの、星! あれを目指して歩けばいい」

 

誰もなにも言わない。

 

「行こう」とオババが言った。

「ちょっと待て」

トミが太い枝を拾って、松明を作った。

「火がなければ歩きにくい」

 

こうして、私たちは湖のほとりの背高い雑草のあいだを足を取られながら歩いた。

空がうっすらとしてきた頃、多くの鳥が凄まじい声をあげる一角に差し掛かった。不吉なものを感じたよ、当然、わかると思うけど。

 

「あれは、鳥が集まっているけど」と、トミに聞いた。

「見たことがないのか」

どう答えてよいか迷って、それで黙っていた。

「おおかた死体でもあるんだろう。夜が明ける前には骨だけに食い尽くされている、と言ってもほとんど食べるとこなんかないがな」

「食べるとこがない」

「野垂れ死さ。骨と皮しか残ってまい」

 

戦いの跡こそないが、歩いた場所は雑草が生い茂り、人が手をいれた様子がない。どこまでも荒廃した大地が続いている。雑草でさえ食べられる物は食い尽くされる。戦乱の世とは、こういうものなんだと理解した。人も犬も例外なくやせ細っている。

 

21世紀で私はいかに痩せるか苦労していた。ダイエット本がバカ売れしている世界で生きていた。

なんだか恥ずかしくなったのは確かだ。

 

「オババ」と小さく話した。

「なんだ」

「私たちと意識が代わった、おカネとおマチ、あっちで食べ過ぎてませんかね」

「ああ、ありそうだ。それはまずい」

「10キロ太ったらどうします?」

「肥満で死ぬな」

「早く戻らないと」

「確かに」

 

「なにを話してる」と、トミが聞いた。

「あ、あの、みな、どうして兵士になったのだろうって」と、誤魔化した。

「トミさんは、どうして兵士になった?」

「そりゃ、あんたらと同じや」と、言って、彼女は持った枝で目の前の草を払って歩きながら言った。「兵になりゃ、食べるものがある」

「家族はどうしてるの?」

「オヤジは畑仕事をしとるよ、お袋は弟を生んで死んだんや。兄は行方知らずで、まだ小さい弟は畑を手伝ってる。で、私が兵にでたってわけだ」

淡々とした口調だった。

そんな不幸が続けば、もっと劇的な話し方をしてもいいと思うけど、でかい体を器用に動かし、トミは「昨日の夕飯は豚汁を食べたよ」といった程度の話し方をした。

「そうか」

「カズやハマも似たようなもんや。要は口減らしや」と、後ろを振り返った。

「ヨシは、ちと違うがな。あれとテンは訳ありや」

すぐ後ろを歩いていたヨシが顔を上げた。

「あたしはね、あんたらとは違うんや」と、ヨシの話し方には、わかりやすい見栄が含まれている。

「父上は侍だった。織田軍に滅ぼされちまったから、運がない」

「負けちまった」

「そうや、屋敷があったんや・・・、あいつら、家まできやがって、母上は犯された、私の隣で、私と一緒にな」

淡々とヨシは語った。夜が言わせた打ち明け話だろう。

「そして、今じゃ、そこの兵として働いてる。皮肉なもんやないか」

「ヨシさん」

「よしとくれ、暗くたって、同情した目はわかるで、あんたなんかに、そんな目でみられるほど、おちぶれちゃいねぇ」と、言ってから、さらに付け加えた。

「どうしたって、腹はへる」

「親の仇を討とうとか思わなかったの?」

「あはは」と、彼女は乾いた声で笑った。

「嫌な親だった。いつも怒っていてな。いっそ殺されて清々したわ」

「ああ、そうだ、ヨシ。わてらが家族や。大事にしなや」

「戯れごと言ってんじゃねぇ」

ヨシはそう言ったが、少し嬉しそうな声音になった。

そう、この仲間はみな悲しい、悲しくて寂しい。

「テンは?」

「あれは、昔、オラの家近くの森でボロボロになって倒れとったんや」

と、トミがまた草むらを枝ではらった。

「倒れていた」

「ああ、無数の刀傷をうけてな。ともかく、体中に傷を負って死にかけていた。それで、オラの秘密の洞窟に運んで助けた。それ以来、ずっと一緒や」

「テンは、いったいどこから来たの」

「知らんわ。あんたらがどこから来たのか、どうでもいいようにな。訳あり、それだけや」

大きく息を吐いてからトミは続けた。

「まあ、こんな酷い目ばかりに合えばきっと神さんが見ててくれるさ。母ちゃんはそう言っとったよ、悪いことがあれば、同じくらいいいことがある。悪いことと良いことは半分半分、これからは、神さんがあんじょうしてくれるってな」

 

神さんがあんじょう・・・

 

彼女たちの知らない。

これから、まだ40年は戦乱の世が続くという歴史を知らない。とくにこの近江辺りは京都にちかく、徳川が天下を握るまで、この地は何度も戦いの場となって、それは1614年の大阪夏の陣まで続くんだよ。

 

いっとき、豊臣家が天下を取ったにしても、それも長くはもたない。

彼女たちが生きている間に平和な時代など訪れない。

 

私は口を閉じてオババを見た。

「ほら、あそこに見える。城だ」と、オババが言った。

 

高い背の雑草を透かして、城が見えた。

朝陽が右手から上がり、黄金色の光が城の側面を照らし始めていた。

 

「ち、帰れちまった」とトミが吐き捨てるように呟いた。

 

・・・つづく

 

*内容は歴史的事実を元にしたフィクションです。

*歴史上の登場人物の年齢については不詳なことが多く、一般的に流通している年齢などで書いています。

*歴史的内容については、一応、持っている資料などで確認していますが、間違っていましたらごめんなさい。

参考資料:#『信長公記太田牛一著#『日本史』ルイス・フロイス著#『惟任退治記』大村由己著#『軍事の日本史』本郷和人著#『黄金の日本史』加藤廣著#『日本史のツボ』本郷和人著#『歴史の見かた』和歌森太郎著#『村上海賊の娘』和田竜著#『信長』坂口安吾著#『日本の歴史』杉山博著#『雑兵足軽たちの戦い』東郷隆著#『骨が語る日本史』鈴木尚著(馬場悠男解説)#『夜這いの民俗学赤松啓介著ほか多数

 

f:id:funyada:20191123212604j:plain

麒麟がくる帰蝶役、川口春奈さん

麒麟がくる』の帰蝶役、川口春奈さんに決定

 

沢尻エリカ逮捕によって、穴があいた帰蝶役。

代役は川口春奈さんという女優さんだそうです。

 

私、このかたのお名前を知りませんでした。

で、速攻、お写真、プロフィールを見て、ああ、どこかで見たことがあるお顔って、ごめんなさいまし、思ったわけです。

 

凛として帰蝶の雰囲気にあってる方ですね。

ともかく、なんとしても『麒麟がくる』に期待したい私。もうここまでくるとね。ほとんど宗教。明智教に入信した信者の気もちで祈ってるわけです。

 

わかっとんな、NHK

こんな市井の名もない市民の願い、無駄にすんな。

ぜったい面白い大河ドラマを作っとくれ!!

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村 プライバシーポリシー お問い合わせ