藤本 役者への道は遠かったですか。
伊原 24歳のときにプロダクションに所属して、やっと「役者」の仕事がきました。
藤本 どんな仕事ですか。
伊原 最初は舞台が多かったですね。そのうちコマーシャルの話がきてオーディションを受けたら受かっちゃった。でもモデルという仕事は性に合わなかった。お金は入るけど、役者に比べたら自分の力を出し切れないというか、何か、それこそラクして食べているような感じがしたんだよね。
藤本 どんな風に違うのでしょう。
伊原 モデルだって一流までいけばすごいけど、ぼくはまだまだそこまでいけてなかったし、舞台の千秋楽でスタンディングオベーションの感動なんかを味わってしまったら、それはもうはるかに感動の大きさが違っていた。そこに至る苦労が大きければ大きいほど、感動も大きいですからね。
藤本 本当に「役者」というお仕事が好きなんですね。「伊原剛志」は、これからどんな役者になっていくんでしょう。
伊原 見ている人が「伊原剛志って何者だ?」というような、いろんな顔を持つ役者になりたいですね。この世界によくあるのがひとつの役が当たってカラーが出来上がってしまって、そこから出ることができなくなってしまうという話。そういう意味では「イメージのないイメージ」を植えつけていきたいと、いつも思っています。
藤本 これからが楽しみですね。
伊原 いろいろ挑戦していきたい。常に表現できる環境を維持していきたいですね。
藤本 そのためには?
伊原 まずは体力づくり。8月から舞台が始まります。ハードな動きを要求されますし、立ち回りも多いので殺陣の練習とかもやっています。
藤本 どんなお芝居ですか。
伊原 劇団・新感線主宰の舞台で、市川染五郎さん、天海祐希さんとの共演です。タイトルは「阿修羅城の瞳」といって、歴史や神話をモチーフにした「新しい歌舞伎」と音楽性を強調した生バンドとのコラボレーション。新しいエンターテインメントの世界として、すごく注目されています。
藤本 面白そうですね。
伊原 8月は新橋演舞場で、9月は大阪松竹座ですからぜひ観に来てください。
藤本 ええ、絶対。でも、こうして伺っていると、舞台がお好きなんですね。
伊原 舞台はお客さんの反応が一目瞭然。人目にさらされる緊張は、役者としては絶対に必要。やっていて楽しいですね。
藤本 4月から始まったドラマに出ていらっしゃいますね。
伊原 TBSドラマ『こちら本池上署』(※2)では刑事役です。テレビも出させてもらいますが、これからは映画をもっとやっていきたいですね。
※2 こちら本池上署/4月からの新番組。下町にある警察署(本池上署)を舞台に繰り広げられる人情刑事ドラマ(TBS系全国ネット月曜日20:00~)。共演は、高嶋政伸、橋爪功ほか。
藤本 映画なら日本映画だけでなく、ハリウッドに進出とか?
伊原 うーん。英語は時間がかかりそうですねえ。でも映画は、役者はあくまでひとつの素材として参加するだけ。本当に自分のやりたいものっていうのは、やはり自分でつくっていかなきゃね。
藤本 何か計画をお持ちなんですね。
伊原 ぼちぼちですね。もうぼくも40歳。これから役者の仕事はどんどん減ってしまいますからね。ぼくは35歳が人生の折り返し点と思って、いろいろ考え出したんです。今は日本の映画もそうだけど、世の中が出来上がってしまっていて、システムにしてもダメなものがあり過ぎる。これは変えようとしてもなかなか変わらないからつぶしていかないとダメでしょう。
藤本 変革の時といわれていますね。
伊原 映画だけでなく政治も何もかも、世の中のしくみがパンパンでしょ。すべてがおかしくなってしまっている。
藤本 そんな時代にひとりのアーチストとして、また人間として、社会や人々に影響を与えられるのは素晴らしいことですね。
伊原 まだそんな器ではありませんよ。
藤本 伊原さん自身がどなたかに影響されたということはありませんか。役者でなくても、生き方の手本にしている方とか。
伊原 矢沢永吉さん。彼は今53歳。いくつになってもかっこよくあり続けているというのがすごいと思いませんか。
藤本 何かの番組で「どのアルバムが一番かと聞かれるけど、今が一番に決まってる」と永ちゃんが答えていたのを聞いて、ほんとにそうだと思ったことがありました。
伊原 同感です。今までがあって今の自分ですからね。常に今がベスト。40歳までは人生の準備期間だから、勝負はこれから。歳をとることはかっこわるいことではなくて、魅力的になっていくことですからね。
藤本 ステキに歳をとりたいですよね。
伊原 そうはいってもシワはできるし腹も出てくる。でもぼくは、日々ストイックであり続けたい。たいていの人は背負う物が多くなって冒険ができなくなってしまうんだけど、ぼくはいつだって何だって捨てていけるというスタンスでいたいですね。
藤本 精神的なことも大切ですね。
伊原 あれもこれもと常に好奇心旺盛であることが大事だし、社会のいろんな事柄に関心を持つことも必要でしょう。