シャルティアが精神支配されたので星に願ったら、うぇぶ版シャルティアになったでござる   作:須達龍也

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最終回、書き上げることができました。


27(最終回)

「……わかった」

 

 

 

 断ることはできなかった。

 

「…そうそう、いち、にの、さん。いち、にの、さん。お上手です、アインズ様…」

 楽しそうなシャルティアの腰に手をまわし、ぎこちなくステップを踏む。

 ダンス技能は持っていないので、ダンスをしているわけではないのだろう。二人でゆっくりと回りながら歩いているという判定なのだろうか。

「わがままを言いまして、申し訳ございませんでした」

「ん?」

 右足、左足…と考えていたところに、シャルティアからの謝罪の言葉があった。

 

「…最後に、アインズ様と踊りたかったのです…」

 

 透明な笑顔で、シャルティアがそう言った。まるで死ぬ間際のような…遺言のようだった。

「…どういうことだ?」

「…なんとなくわかります。わたしはそろそろこの世界とお別れします」

 予感というよりは、確信を抱いているようだった。

「…ちゃんとお話はしておりませんでしたね」

 シャルティアは静かに、踊りながら、言葉を続ける。

 

「…わたしの世界は…止まってます…」

 

「…と、止まって?」

「…時間停止対策をしていたからでしょうか? それがわかりました…」

 何でもないことのように、続ける。

「…でも、魔法ではないようです。意識はあるんですが、動くことも喋ることもできませんでした。できるのは考えることだけ…」

「…シャルティア」

「…時間が止まってしまったことは、別にいい…」

 

「…動けないことも、問題ない…」

 

「…喋れないことだって、どうでもいい…」

 

 

 

「…ただ、アインズ様のお傍にいられないことが…それだけが、それこそが、耐えられなかった…」

 

 

 

「…だから、アインズ様にこの世界に呼んでいただいたのは、とても嬉しかったです。夢のような時間でした…」

「……シャルティア…」

 シャルティアの独白が、音楽に乗って、静かに聞こえる。

「…これでまた、この思い出だけで、頑張れます。…また時間が動き出したら、向こうのアインズ様にも教えてあげたいです。別の世界でも、アインズ様は素敵でしたって…」

 

 そこで、オルゴールの音が止まる。

 

「…ああ、終わってしまった。…ありがとうございました。アインズ様…」

 

 そっと離れようとするシャルティアを、強く抱きしめる。

 

「シャルティア、行くな! この世界にいればいい。なんとかしよう! してみせる!!」

 似たような世界だと思っていた。

 アルベドとマーレはいないようだが、他のみんなと、向こうの俺と仲良く楽しく生きている世界だと思っていた。

 

 だから、しょうがない。

 

 

 …だから、向こうの俺に返してあげないといけないと、そう我慢したんだ!

 

 

「…わがままですね、アインズ様。…でも、すごく嬉しいです…」

「シャルティア!」

「…でも、ダメです。夢はいつか醒めるものです…」

 

 …シャルティアの透明な笑顔が告げていた。止めても無駄だと、覚悟はとうにできていると…

 

「…わがままなのは、わたしです。話すつもりはなかった。でも、話したのはわたしのわがままです…」

 

 

 

「…わたしのこと、忘れないで欲しかったから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …それから、数日後のことだった。”傾城傾国”の効果が消えたのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔導国…かつてエ・ランテルと呼ばれたそこは、王国から分割され、一人の王を抱く別の国となった。

 かつての都市長がいた部屋、玉座こそ新たにこしらえたが、ナザリックの玉座の間とは荘厳さでは、遠く及ばない。

 そこには、自分達の支配者が新たな国を支配したことに祝賀の言葉を贈るために、すべての守護者が集まっていた。

 

「面を上げよ」

 

 魔導王、アインズ・ウール・ゴウンのその言葉に、跪いていた守護者達が顔を上げる。

「皆、よく集まってくれた」

「ああ、魔導王陛下、なんとももったいないお言葉」

 第七階層守護者、デミウルゴスが歓喜に身を震わせながら、答えた。

「至高の御身にお仕えすることこそ、わたくし達にとって最大の喜びですわ」

 守護者統括、アルベドがそれに続いた。

「まったく、その通りでございます。どうぞ、なんなりとお命じ下さい」

 執事長、セバス・チャンがさらに続く。

「妾の力、この命、この身すべてが魔導王陛下のものでありんす」

 第一から第三階層守護者…目覚めたシャルティア・ブラッドフォールンが、喜色満面で続ける。

「ドンナゴ命令デモ、必ズヤ遂行致シマス」

 第五階層守護者、コキュートスが続く。

「あたし達、魔導王様の為なら、なんだってやりますよ」

「ぼ、ぼくも、精いっぱいがんばります」

 第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレが続き、そこでアインズが、最後の一人に目を向ける。

 

 

「わたしも、この身、ここにある限り、魔導王陛下にお仕え致します」

 

 

 シャルティア・ブラッドフォールンの少し後ろに控えていた、白いシャルティア・ブラッドフォールンが、そう続けた。

「魔導王陛下、全てのしもべを代表し、魔導国の記念すべき日を心からお祝い申し上げます」

「皆、ありがとう。だが、お前たちは私の大切な友人達の、子供のような存在だ、陛下などという堅苦しい敬称は不要。今まで通り、アインズと呼んでほしい」

 そのアインズの言葉に、守護者全員が歓喜に震える。

「…畏まりました。…アインズ様」

「ついにナザリックが表に出る時が来た。

 

 私はここに、アインズ・ウール・ゴウン魔導国の建国を宣言する!」

 

 

 

 

 以下は、追記しておこう。

 

 ”傾城傾国”の効果が消えた日…すなわち、こちらのシャルティアが目覚める日。その日、アインズが再び指輪を使用した。

 星にかけた願いは、向こうのシャルティアを返すことではなかった。この地に残す…その為の器には、死せる勇者の魂(エインヘリヤル)を使った。

 

「私は非常に我儘なんだ」

 

 その時のアインズの言葉が答えだった。

 その後、二人のシャルティアの呼称問題が話し合われた。

 

 

 

「シャルティア(姉)とシャルティア(妹)でいいんじゃない?」

「なんで妾が妹でありんすか!」

「ふむ、どういう意図ですかな」

「姉より優秀な弟などいない! って、ぶくぶく茶釜様もおっしゃってました」

「弟でもないでありんす!!」

「そのまんま、シャルティア(優)とシャルティア(劣)でいいのではないか」

「お、おとっ…ひどすぎるでありんす」

「いやいや、血の狂乱だよ、そのことを言っているんだよ、うん」

 死せる勇者の魂は、厳密には吸血鬼ではない為、血の狂乱はなかった。

 本来は魔法や一部のスキルが使えないはずだが、スキルとしてではなく一個の魂を持った為か、魔法もスキルも使用できるのに、それなのに血の狂乱がないという、シャルティアの上位互換と言ってしまえてしまう能力を持っていた。

「優ってほどかしら、シャルティア(普)とシャルティア(馬)でいいんじゃない」

「馬鹿って言った奴が馬鹿って、ペロロンチーノ様もおっしゃってたでありんすー!!!」

 

「フゥ、シャルティア(赤)ト、シャルティア(白)デ、イイノデハナイカ」

 

 コキュートスの案が採用されたことを、追記しておこう。




これにて、完結致しました。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。



以下、愚痴ですが、ハーメルンの仕様上仕方ないんでしょうけど
低評価付ける機能って、いるのだろうか。
普通に読むの止めればいいだけじゃん。

作者が豆腐メンタルだったり、書くのがしんどくなっている時期だと
(どっちも当てはまった)低評価つけるのって、イコール
「書くの止めろ、バーカ」って言ってるのと同じだよね。

以上、愚痴でした。

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