優勝の可能性をわずかに残した緊張感たっぷりの一番、朝乃山が力みなぎる左上手一本で流れをひっくり返した。立ち合いから竜電を押し込んだが、相手の右下手投げで右差しがすっぽ抜けると後退。それでも、左上手を離さず投げ返し、体を入れ替えた。土俵下になだれ込む逆転の寄り切りで、11勝目をつかんだ。
「最後はしっかり体をぶつけられた。土俵際、上手をもっと下から絞って取れば、楽に寄れたので反省しないと」。単独での年間最多勝を確定させる今年55勝目を挙げてなお、やや辛口の自己採点が充実の証しだった。
新三役の場所前は、勝ち越しが目標だった。有言実行を果たしたが「ここで終わったら、クリアじゃない」と、すでに視線は来年の大関とりへ。千秋楽の重みは誰よりも分かっている。勝って初Vを含む飛躍の一年を締めくくる。