日本人は「人種差別」のボーダーラインに鈍感?移民増の今求められる本当の「尊重」

生まれた国や肌の色、宗教などを理由に他者を侮蔑する「人種差別」は、いつの時代も存在する人類の大きな課題と言えます。

お笑いの世界では、人種差別や世の中のタブーを敢えてテーマにする場合があります。

9月に入って、人種差別の要素を感じるネタがSNSで炎上し謝罪に至るケースが続けざまに発生しました。

うち一件は7年前の映像ですが、SNS上での反応を見ると批判する人と擁護する人とに大きく分かれています。

外国人の目にはどう映ったのでしょうか。

日本人の人種差別に対する意識の在り方に迫ります。

外見や属性をいじる日本の芸人は「アウト」

炎上した問題の人種差別はお笑いコンビAマッソのもので、ネタ中で「大坂なおみ選手に必要なものは」「漂白剤」といったやり取りがされるものでした。

文脈としては「日焼けしすぎ」という流れだったようですが、大阪選手の肌の色を揶揄した発言であり、批判を受けて事務所を通じ大阪選手へ謝罪を行いました。

こういった偏見や人種差別などの問題にギリギリ触れていくお笑いのネタは、時に「とがったネタ」と表現されます。

しかしSNS上では「笑いと履き違えている」との声があがっています。

「風刺」という言葉に「刺さる」という文字が入っていますが、ナイフのようにとがっていてもいいのは、切り込んでいくべき社会の問題であって、人間のアイデンティティに関わることではないということでしょう。

Aマッソの一連の騒動に続いてネット上で非難を浴びたのが、お笑いコンビ金属バッドの2012年のネタです。

双子タレントの「マナカナ」こと三倉茉奈さんと三倉佳奈さんを題材にし、「カナはな、エイズなんやけど」や「猿とエッチしたらエイズになるわ」といったセリフが登場し、HIV陽性者の団体や支援団体などから猛烈な批判を浴びました。

ファンからは言葉狩りだといった擁護の意見もあがっています。しかし、多くの人が受け入れられないと感じています。

日本のお笑いにおける人種差別発言を、外国人はどう感じたか

SNS上では、一連の騒動について落胆と怒りを表明する書き込みが、外国人からも多くありました。

「恥ずべき」と批判する意見のほか、「日本全体の問題だと思う」や「被害者のような顔をせず、差別をしたと謝るべき」という意見も見られました。

なぜ日本人は「差別」に鈍感か

日本人が人種差別に鈍感である理由の一つは、移民が少ないことにあると考えられています。

実際、日本人口に対する移民比率は2017年時点で1.8%と低い数値です。

国別の移民数ランキングと移民比率:ファイナンシャルスターサイトより

移民を受け入れることは、さまざまな国が持つ文化や、個々人の背景、アイデンティティを受け入れ、尊重することだと言えます。

そんな中、人種差別については「人種差別に鈍感なことより、過剰反応することが問題」といった論調もしばしば見られます。

「悪気はなかった」「知らなった」という前提があれば、行為や発言が人種差別に当たろうと許して良いと考える人もいるようです。

昨今、人種差別の問題を考える時に議題となる「LCBT」について、LGBT法連合会が作成したLGBT報道ガイドラインに次のようなページがありました。

LGBT取材・報道の課題:LGBT報道ガイドラインより

差別的な発言や行為の前に、無知であることそのものに失望していることが伺えます。

なぜなら、知っていれば回避できる問題もあるからです。

日本が人種差別についての「国際感覚」を身に着けるべき理由

人口比率としてはまだまだ移民の割合が低い日本ですが、外国人居住者は確実に増加しています。

現政府は一億総活躍の実現を掲げ少子化対策や女性の労働環境改善に取り組んでいますが、労働力を補填する方法として外国人労働者の受け入れについても積極的な姿勢を見せています。

さまざまな国から労働者を迎え入れることで日本は多文化社会の色合いを濃くしていくでしょう。

大坂なおみ選手は10月に日本国籍を取得しました。彼女がどちらの国籍を選択したにしろ、日本人としてのルーツを持つこととアメリカ人としての習慣を持つことは、どちらも尊重されるべきことであると言えます。

アメリカ在住の理論物理学者は自身のサイトで、日本は「人口減少と高齢化による労働力不足解消のため移民を必要とする」「誰が本当に日本人であるかについての時代遅れの態度を再検討する必要がある」と述べています。

どこで生まれどこで育ち、肌や目の色が何色かではなく、今目の前にいる一個人がどういうアイデンティティを持っているか、それを傷つけていないか考える必要がありそうです。

参考:https://freethoughtblogs.com/singham/2018/09/20/naomi-osaka-and-racism-in-japan/

他者を尊重する意識と、尊重について考えること

2013年の流行語大賞に「おもてなし」が選ばれるなど、日本はホスピタリティが高い国だと自負している日本人が多いかもしれません。

インバウンドの満足度向上のための重要なポイントであり、外国人観光客を迎える時には心をこめて対応している店や人が多いと思われます。

おもてなしではなく、尊重の観点で見たときには異なるのかもしれません。

公共の場における中国人観光客の声の大きさがマナー違反に当たると批判されることがありますが、中国には大声で話すことで陰口を言っているのではないと示す文化があるようです。

相手の立場に立ってその文化を尊重すれば、マナー違反ではなく彼らなりの敬意の払い方であると解釈することもできます。

尊重しようという意識より、本当に尊重できているか、尊重の表現方法は間違っていないかと、問う姿勢が日本人には必要かもしれません。

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!