『共同親権』の導入で“親都合の離婚”に苦しむ子どもは救われる?
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《離婚後も双方に親権残る「共同親権」検討…法相》
7月中旬、読売新聞の朝刊一面に、政府が共同親権の導入を検討していることが報じられた。
離婚後、親権の奪い合いの裁判でもめたり、誘拐にも似た強引な引き離しが行われるなど、子どもが親の争いの犠牲になるケースが後を絶たない。政府は2019年にも、親権制度を見直す民法改正について法制審議会に諮問する見通しだ。
『共同親権』の導入で何が変わる?
『共同親権』について、離婚後の家族問題に詳しい大正大学の青木聡教授は、『親権』という言葉を『親責任』と置き換えるとわかりやすいとし、次のように説明する。
「『共同親責任』は、離婚しても父母が共同で親としての責任を果たしていきましょうという意味です。メリットは、離婚後も子どもが心理的・経済的に安定し、子どもに与えるさまざまな悪影響を減らせる点です。離婚しても父母が争わずに養育していれば、子どもは両親のそろった子どもと変わりなく育っていきます」
現在の民法は、離婚後の親権はどちらかの親が持つ単独親権。そのため、強引な手法がとられることもあるという。
都内在住の熊田南海子さん(34)は、強制的に子どもと引き離された経験がある。現在は、長男の有希くん(9)と次男の祥希くん(6)と暮らす熊田さんだが、離婚劇は夫側の一方的な手口で口火が切られた。
「'13年10月15日に、子ども2人を連れ去られたんです」という熊田さん。夫とその両親、兄夫婦が一緒に来て、義母と熊田さんが口論している間に、義兄夫婦が子どもを連れ去ったという。
「警察も呼んだのですが、義母と元夫が、3日後に子どもは帰る予定と説明して、警察が連れ去りを止めることはありませんでした。3日後には戻ってきませんでした。後からわかりましたが、連れ去りの翌日には別の幼稚園に通う手はずになっていました。
夫の実家から、何度もお金を無心されたことなどが原因で離婚したいと伝えたとき、“有利な離婚の仕方を知っているから”と。何を言っているのかなと思っていたのですが……」
子どもの引き渡しを求めた審判を申し立て、熊田さんが2人の息子に面会できたのは、連れ去り後から3か月後のこと。
「裁判所の試行面会でやっと会えたのですが、私のことを警戒した様子でした」
会えなかった間、父親は母親にまつわるエピソードを捏造し子どもに刷り込んだ。
連れ去りから約1年後に離婚が確定し、親権は熊田さんのもとに。連れ去られた側に親権が認められるのは珍しいケースだ。
「共同親権になれば、私のように、子どもを連れ去って親権を獲得する“有利な離婚”ができなくなると思います」と法改正に期待する。同時に、
「面会交流権は親が子どもに会う権利だけではなく、子どもが親に会う権利でもあるんです。新しい家族を大切にしてほしいと思いますが、この子たちにも会ってほしいと思います」
熊田さんがそう訴えるのは、離婚後、週に2~3回会いに来ていた元夫が再婚後、だんだんと子どもに会いに来なくなり、息子が送るLINEにも既読スルー……。
2人の子どもは無邪気で「お父さん大好き!」と声をそろえる。昨年の11月、有希くんの誕生日のお祝い以来、会えていないという。
「パパに会いたいよ」
遠慮がちに有希くんが伝えた言葉が切なかった。
再婚後の親権選択について前出・青木教授が説明する。
「欧米では、共同親権を持つ父母が子どもの意見を聞きながら、再婚後の養育についてどうするかを話し合い、親権のあり方を再度、選択することになります」
親同士の関係構築が必須
元夫への恐怖感、拒絶感が強く「離婚後も連絡をとる必要があるとは思いもしなかった」と話すのは一般社団法人『りむすび』の、しばはし聡子代表。別居・離婚後に子育てする親をサポートする共同養育コンサルタントを務めているが、ご自身も何の知識もなく離婚に踏み切り、憂うつな思いをしたことがあったという。
「離婚はできましたが、調停で面会交流が月に1~4回という取り決めがなされた。息子に会いに来るたび、頭を抱えていました。元夫に息子を会わせるのが嫌でした」
と振り返る。
離婚したのに元夫と関わりたくない。だが、息子は父親と会うことを喜んでいる……。
そこで、しばはしさんは夫婦問題カウンセラーの資格を取ることを決意。面会交流を見学するなどした結果、自分自身が変わって、子どもの父親である元夫に向き合わなければいけないと思ったという。
「子どもの情報を夫に伝えようと連絡をとることにしたのです。劇的に関係は改善しました。元夫も憤りが静まり、“ありがとう”と言ってくれる。“ありがとう”ともっと言わせたいと思ったら、苦しかった気持ちがスッと楽になったんです」
現在は月に2回、子どもは元夫の家に泊まりに行く。しばはしさんが仕事で忙しいときは預かってもらい、学校の保護者会に行けないときは出席してほしいと伝え、学校から子どものことを注意されたら、それを父親から伝えてもらうなど、
「育児のいいところだけでなく、たいへんなところも分担してもらうようにしています」
共同親権には賛成の立場だ。
「共同養育するために離婚後の親同士の関係構築は必須です。公的な支援も、ひとり親支援は充実していますが、共同親権になれば支援体制も変わってくると考えています。
子どもは離婚後も共同で育てていくのが当たり前だと認知され、社会に浸透すれば、離婚すると親はひとりという固定概念が払拭されていく」
「パパとママの離婚は私が原因でしょう」
都内の出版社に勤める水戸耀司さん(仮名、50)は現在、小学6年生になった娘(11)と暮らすが、彼女が2歳半のときに、夫婦のいさかいは始まった。離婚裁判や面会交流調停など長い不毛な戦いを余儀なくされた水戸さんは、
「共同親権であれば、裁判をすることだってなかった。今まで裁判費用で500万円ほど使いました。バカげたお金ですよ」
と精根使い果たした長期戦を回想。娘はのびのびと元気に過ごしているが、最近言われたことが心に刺さっている。
「“パパとママが離婚したのは、私の取り合いが原因なんでしょう”と自分を責めることを言うんです。違うよと伝えてはいるのですが……」
2歳半の娘を連れ去った元妻は、夫からDV被害を受けていると警察に通報し、DVを理由に離婚裁判を申し立てた。結果、DVがでっち上げだと証明され、離婚は認められなかった。判決まで2年の月日を要した。水戸さんが、可愛い盛りの娘に会うことができたのは、娘が連れ去られてから1年2か月後だった。
「私と会わせて大丈夫か確認をする試行面会で会えました。最初、きょとんとした顔をしていました。肩車をすると、“パパ”って言ってくれたんです。娘は肩車が好きでいつもせがまれていましたから」
面会交流も、“病気だ”“運動会がある”などと嘘の言い訳をでっち上げられ、8か月間も会えなかったことも。
妻が申し立てた2度目の離婚裁判で、離婚が認められ、娘の親権は母親が持つことに。
「娘に対して、私の悪口をひどく吹き込んでいたようなのです。娘はそのたびに“パパはそんな人じゃない”と、嫌な気持ちになったと話していました。
面会交流が終わり引き渡すときに娘は、毎回帰るのを渋るのです。泣きじゃくったこともありました」
娘を妻に引き渡した際、妻の手を振り払い水戸さんの車に乗り込んできた。そして“パパ、早く車を動かして”と叫ぶ娘の声を聞き、水戸さんはとっさの判断で車を発進させ、娘を家に連れ帰った。
それから1年以上、父親のもとで暮らしていたが、親権のある妻は引き渡しを求める。引き渡しをしない親が引き渡すまでの間、1日ごとに裁判所に定められた金額を支払わなければならなかった。
「子どもを返還しない場合は1日3万円の罰金が科せられるのです。致し方なく、娘を妻のもとへ連れて行きました」
娘はその3日後、再び自分の意思で、父親と祖母が住む家に帰ってきたという。
その後、元妻とは和解。そのかわり、子どもには会わせることを条件としていた。
「娘が母親に会いたくないと言っているんです。私としては母親を嫌いにならない方向にもっていきたいと思っています。子どもには、パパもママも大好きでいてほしいんです。パパとママは娘のことを愛している、宝物だと思っていることを知ってほしい」
そう胸の内の葛藤を明かしてくれた。
夫婦と親子の関係は別もの
青木教授によれば、ノルウェーでは離婚裁判になると子どもは父母から引き離され、里親委託養育になる。そのため、子どもと離れたくない父母は、裁判にならないように離婚を進めていくという。
離婚経験があり、“離婚後子育て応援弁護士”として活動する稲坂将成法律事務所の古賀礼子弁護士も、元夫と元妻、元夫と子どもの関係は別ものと訴える。
すでに元夫とは離婚が成立していたが、養育費の見直しの提案をすると“小学校は義務教育だからお金はかからない”と元夫は渋りはじめた。
「話が平行線だったため、元夫に養育費の支払いの調停を申し立て、調停の場に携わったのが、私の弁護士としての初仕事でした」
息子は、“養育費はいらないからパパとの時間が大切”と訴え、古賀弁護士は板挟みに。
結局、以前と変わらぬ金額で合意したが、調停では父母は今後一切、連絡をとらないこと、面会は父子が直接やりとりをする決まりに。
父子の関係は良好で、
「私は見ていませんが、面会の別れ際には親子で熱い抱擁があったりと、血のつながった親子の絆というのは深いものなのだなと感じています」
共同親権については、
「私のように父母は決して仲はよくないが、父子の仲は非常にいいケースがあることを知ってほしい。必ずしも離婚した夫婦が仲よく協力しなければならないわけではない。
離婚後も親という意識を持つことで、適正な分担のもとで育児が行われ、社会の意識も変わり、男性の育児休暇取得率も上がると思います」
前夫との間にできた妻の子を虐待死させた東京・目黒区女児虐待死についても、親権の問題が関係していると分析し、
「親権という重荷を背負わされ、本当の父親にとって代わって行動したのですが、それが間違った方向に向かってしまった」
そのうえで、
「母になるための支援機関は多く存在するが、継父などへの支援はほとんどない。この点も問題かなと思っています」
都内在住の40代女性は、成長した娘と父親を会わせようと元夫を訪ねたことがある。
「お前は母親として何をしたんだって、文句を言われましたからね。養育費は月2万円しか払っていない男にですよ! 月々2万円で子どもが育つかよ、って逆に腹が立ちました。娘には、父親のことは忘れなさいと伝えました」
腹立たしい気持ちが、思い出すたび今も消えないそうだ。
'16年度に厚生労働省が行った全国ひとり親世帯等調査では、母子家庭で父親から養育費の支払いを受けているのは約2割。共同親権の導入に期待がかかる。
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不妊治療の“やめどき”問題、経験者が語る
イラスト/もりたりえ
「頑張ってきた自分を誇りに思ってほしい」
不妊治療に足を踏み入れた人の多くが頭を悩ませるのは、そのやめどきだ。お金や時間、労力を注ぐものの子どもはなかなかできず、年齢は上がり、妊娠率は下がっていく──。
「金銭的なリミットがあれば、泣く泣くでもやめるしかない。難しいのは、お金がなんとかなってしまう方。最近は金融機関で簡単にローンを組めることもあり、悩む方が増えています」
こう話すのは不妊治療経験者の心のサポートをする一般社団法人『MoLive』(モリーヴ)代表の永森咲希さんだ。なぜ不妊治療はやめづらくなるのか?
治療継続を進め続けるクリニックも
「体外受精などは1回に何十万円もかかります。治療を重ねれば重ねるほど多くの時間やお金を費やし、その費やしたものを取り戻そうという本能が働き、やめられなくなるところがあるように思います」(永森さん、以下同)
たとえはよくないが、勝つまで続けてしまうギャンブルと似たところがある。
医療の問題もある。女性は高齢になるほど妊娠しにくくなるが、それでも治療継続をすすめてくるクリニックも中にはあるという。
「先日、相談に来られたのは40歳のときから12年間治療をされた方。流産を重ね、50歳が近づいたころ、ドクターに“もうやめたほうがいいですか”と聞くと、“可能性はまだあるのに”などと言われやめられず、その後、ひどい更年期とうつに見舞われ、最終的には仕事を辞めざるをえない状態になったと泣かれていました。そんなふうに病院に治療を引き延ばされる話もときどき聞きます」
自分はやめたいと思っても、義父母からプレッシャーを受けるケースもある。
「義母が家に来ると最初にトイレに入り生理用品をチェックし、生理用品が減っていると“またきたの?”と嫌みを言われるそう。また、夫のカバンに離婚届とお見合い写真を見つけて問いただしたところ、義母のすすめだったことがわかったという人もいます」
永森さん自身は43歳のとき、6年間にわたる治療生活に終止符を打った。きっかけとなったのは同じクリニックに通い妊娠・出産後にかかった病気を苦にして、自ら命を絶った知人の死と、自分自身に卵巣がんの疑いが浮上したことだった。
「そこから急に不妊治療を続けることが怖くなったんです。いま思うと、きっかけを探していたんだと思います。ずっと“いつやめたらいいんだろう”と思いながら、決断できないでいたので。以前の私だったら、知人の死も自分と重ね合わせることはなかったでしょうし、卵巣がんでなかったとわかった時点で治療を再開していたはずです」
当事者同士で話してみるのもひとつ
不妊治療をやめるきっかけをつかめずにいる人は今も多くいると思われるが、そういった人はどうしたら決断できるのか。
「“治療命”になって、ほかのことが見えなくなり、自分らしさを失っている方が多いので、自分を立て直す環境作りができるといいと思います。治療中は今回ダメならまた次、それがダメならまたその次と、精神的に歯止めがきかなくなることがあります。いったん治療を休み、そこから距離をとってみる。そうやって治療を休むことで自分を取り戻す方もいます」
ほかに、当事者同士で話してみるのも一案という。
「私ども(MoLive)の茶話会(わかち合いの会)に参加し、ほかの方の話を聞いて、やめる決断をされた方もいました。なかなか人に話せない、話しても理解してもらえないといったテーマについて話せる場があることで、“自分だけじゃない”と孤独感が薄れたり、共有し合うことで気持ちが落ち着いたりと、みなさん想像以上に得るものがあったとおっしゃいます」
不妊治療をやめる決断はとても難しい。子どもが欲しいのはもちろんわかるが、少しでも「やめたほうがいいかも」と思う気持ちが出てきたら、その気持ちを認め、これまで頑張ってきた自分を誇りに思ってほしい、と永森さんは話す。
なお治療中の人たちは、「不妊治療をやめれば、もう親になれない」と思っていることが多いが、別の形で子どもと家族になるケースもある。里子や養子を迎えるという選択だ。
《PROFILE》
永森咲希さん ◎不妊カウンセラー、家族相談士、キャリアコンサルタント(国家資格)、産業カウンセラー。自身の経験をもとに、不妊治療者やその周囲の人たちに対する支援活動などを行う。
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『妻のトリセツ』著者が伝授、“腹立たしい夫”の教育術
40万部を超えるベストセラー『妻のトリセツ』の著者、人工知能研究者で脳科学コメンテーターの黒川伊保子さんが、待望の『夫のトリセツ』を出版。妻の「なんで、うちの夫はこうなの!?」を徹底解説、夫婦円満のための夫取り扱いを伝授―。
40万部を超えるベストセラー『妻のトリセツ』の著者が夫婦円満のための夫取り扱いを伝授 イラスト/サトウヨーコ
結婚生活35年を経て、今や戦友であり、執事とさえいえるまで、夫を立派に育て上げた黒川さん。そんな黒川さんの夫も最初は、「豚小間肉200g買ってきて」と買い物をお願いすればパック詰めの豚小間肉が200gぴったりに表記されていないから「どれを買えばいいかわからない」と泣きが入り、ア然としたとか。
その後は、おつかいのたびにメモを渡して教育。200gの許容範囲である190g~240gの豚小間肉を買えるように成長したそう。
そもそもなぜ、夫はこんな簡単な買い物さえできないのか?
「男性の脳は外で敵と闘って問題解決し、狩りで成果をあげるようにできていて、家の中で働くようにはできていないからです」(黒川さん、以下同)
原因は男女での“脳の違い”
女性の脳は、いろいろなことを同時並行でこなせるマルチタスク。半径3m以内に神経を配り、子どもを育てるようにできている。例えば、仕事の手を休めることなく、夕飯の献立を考えたり、朝、子どもが傘を持って学校に出かけたか心配したりできる。
それに対して、男性の脳は、ひとつのことに集中して完璧にやり遂げようとする、シングルタスクだという。
車の運転や本棚の組み立てはうまくても、複数の家事を同時にこなすことはできないため、妻たちの「なんでそんなこともできないの!?」という怒りを買うことになる。
しかも、目の前の妻が家事や育児にテンテコ舞いしていても、察して手を貸すこともない。こうした夫の態度にも「気がきかない!」と、妻の神経は逆なでされる。
「これは愛情がなくなったわけでも、意地悪をしているわけでもないんです。ただ、女性の動きと男性の動きでは違うため、脳が認識できないだけなのです」
女性と男性では、所作(動作)が異なるため、例えば、鎖骨の使い方も違う。胸骨と肩甲骨をつなぎ、腕を支える鎖骨は、横にスライドする動きと、縦に回転する動きがある。
物をとるとき、女性は鎖骨をスライドさせ、自然と流れるようなワンアクションに、男性は鎖骨を回転させて物をつかみ、その回転を戻すツーアクションになる。
ワンアクションの妻はツーアクションの夫を認識しやすいが、逆に夫は妻の所作が認知できないという。
根気良く口に出すことが大事
夫の無神経さが男性脳のなせるわざだということを理解できたからといって、あきらめるしかないのか?
「私は“キャンペーン”と“パニック”作戦を繰り返すことで、夫の家事分担を少しずつ増やしていきました」
“キャンペーン”とは、自分が今日やるべきことを夫に知らしめること。
「今日は洗濯して干して、お昼ご飯を作って、床もワックスがけして、それが乾く間にベランダを掃除して、買い物して、夕飯のギョーザも作らなきゃ! よし! 頑張ろ!!」
押しつけるのではなく、あくまで自分で確認、点呼しているという体で言うのがポイント。そうすることで、認識できていなかった妻の家事が、どれだけ多いのか気づくようになる。
さらに、バタバタしながら「あれして、これして、もう家を出ないといけないのに、あーっ、洗濯物干す暇ないーッ!!」と、“パニック”を起こす。妻の混乱した状況を目の当たりにした夫も人の子、鬼ではないはずだから、「じゃあ、洗濯物は干しておいてあげるよ」となればしめたもの。
「ただし、1度ではできません。何度も繰り返し口に出すことが大事。そして、(夫が)手を差しのべてくれたときには、褒めそやしてください。そうすれば、そのうち、洗濯物干しは夫がやるようになりますよ」
そこまでじゃなくても、“ちょいと頼み”にスムーズに応えてくれるようになる。たくさんのタスクをしている妻から、「ゴミを捨てておいて」と言われれば比較的、素直に動けるものらしい。
しかし、その作戦で何でもかんでも夫に家事を押しつければいい、というものでもない。男性は家事をすることで、女性の6倍のストレスを感じるという。“家事ができない=男らしさ”でもあるため、家事ができるように夫の脳の機能がシフトすると、男らしさが減少することにもなる。
「ジャングルで身を守ってくれなくても、会社で出世しなくても、本棚が組み立てられなくても、男の魅力がなくなってキスをしたくなくなっても、家事を分担してくれればいいと思うなら、そうすればいいのです。それは女性の選択であり、覚悟です」
家事もしてほしいが、男らしさも失わないでほしいという欲張りな妻はどうしたらいいのか?
「どうしてもこれだけはしんどい、または、これなら夫の持ち味が生かせる、という家事を3つだけお願いしてみてください」
例えば、翌日の弁当用のご飯を仕込む、皿洗い、シャンプーなどの在庫管理といった具合だ。
「または、育児で大変な時期や夫の定年退職時に家事分担を増やすなど、ライフステージによって、変えるという手もあります」
男性ホルモンの一種「テストステロン」が出ている働き盛りの夫は、男性脳を強く使っているので、なかなか脳をシフトさせるのが難しい。また、妻も子育て中は女性ホルモンが出て女性脳を強く使っているため、この時期が夫婦間のギャップが、いちばん大きくなり、衝突しやすいのだとか。
夫ではなく“気のいい男友達”と思え
だから、50代になってお互い生殖ホルモンが減少すれば、ギャップも小さくなり、自然とうまくいくという。
そのときに、「定年退職後のルールを少しずつ決めたいの。これ、お願いね」と、1個ずつ提案していけばいいという。間違っても、「アナタ、仕事辞めたんだから、家事やってよね!!」とか、いきなり100のルールを押しつけたりしてはいけないそう。
それでも、どうしても夫に愛想が尽きて、離婚したいと思ったら?
「経験上、言わせていただくと、夫じゃなくて、同居している“気のいい男友達”だと思ってみては? 家賃を出してくれて、風邪をひいたらドリンクを買ってきてくれる。“なんていい人!”って思えますから(笑)」
夫の教育術をマスターしたら、さらに大事なことがあるという。
「夫が気がきかないのは、夫の母親の怠慢。“負の遺産”を未来の嫁に持ち越さないために、息子も教育してください!」
夫が妻の話に共感したり、いたわったりできないのは、母親が教育しなかったため。母親は息子との会話で「それは大変だったね」と、共感できる会話力や、レディーファーストの振る舞いを教えるべきだという。
本来、女性の脳は、ある男性の子どもを産み育てたら、本能的によりよい遺伝子を持つ次の男性を求めるようになるという。そのため、脳が目の前の男性が嫌になるよう、仕向けてくるという。
このような本能を乗り越えて、築いてきた夫婦関係。男女の脳の違いを理解することで、パートナーシップはもっとうまくいくはず。
夫を生かすも殺すも、妻のあなた次第です!
黒川伊保子さん(くろかわいほこ)
1959年生まれ。人工知能研究者。脳科学コメンテーター。感性アナリスト。随筆家。30年以上にわたり、AI(人工知能)開発に携わり、脳と言葉の研究を極める。著書に『女の機嫌の直し方』など多数
取材・文/小山内美貴子
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『DEATH NOTE』舞台初主演の甲斐翔真、「スタッフ泣かせるぐらい食い下がる」
甲斐翔真 撮影/森田晃博
社会現象になった伝説的大ヒットコミック『DEATH NOTE』をミュージカル化。2015年の世界初演以降、日本のみならず韓国、台湾でも大ヒットを記録した人気作『デスノート THE MUSICAL』が、2020年1月キャストを一新して上演される。
主人公は「ノートに名前を書かれた人間は40秒で死ぬ」“死のノート(デスノート)”を拾ったことから、犯罪者の粛清を始める成績優秀な高校生・夜神月。そのライト役にオーディションで2416名の中から選ばれたのは、ドラマや映画で人気上昇中の若手俳優・甲斐翔真さん。
なんと本作が初舞台・初ミュージカル・初主演。舞台にチャレンジする熱い思いを語ってくれた。
勧善懲悪ではなく、正義のぶつかり合いを
「オーディションでは、とにかく“『デスノート THE MUSICAL』に出演したいんです”という気持ちを大事に、それが伝わるようにって思いながら歌もセリフも技術的な面よりも熱量だけで頑張りました。
ライト役に決まったときは、うれしすぎて思わずガッツポーズをしてしまいました(笑)。でもオーディションを受けた方の人数を聞いて、役に恥じないように覚悟を持ってライトを演じなければいけないという責任感も生まれました。
初舞台で『デスノート THE MUSICAL』に出演させていただくのはすごくプレッシャーですが、新人だからこそ表せるアグレッシブさやパワーをがむしゃらに出していきたいです」
原作の漫画を読んで、甲斐さん自身が感じた夜神月との共通点。また役作りのアプローチについて聞くと。
「共通点は悪を許せないというか正義感が強いところかな。高校3年まで12年間サッカーをやっていて、ゴールキーパーだったので正義感で生きてきました(笑)。だから犯罪者を許せないというライトの最初の気持ちの部分には共感できます。今回はそこからまず役に入っていこうと思っています。
デスノートを使って犯罪者を次々に殺していくライトは、周りから見たら完全に悪に見えますけど、本人の中では芯が通っている。彼は本気で世界を変えたくて悪を撲滅したくてやったんだという姿勢が、世の中から見たらただの悪になっているという、そういうなんか悲しい感じが舞台の上で描けたら、ライトにも警察側やライトを追いつめる探偵のL(エル)にも感情移入できると思う。
勧善懲悪だとつまらないじゃないですか。どっちにも正義があって、結局は正義と正義のぶつかり合いだってことをしっかりと伝えたいです。ライトとエルがギリギリのところでやり合う感じ、ひとつミスったら全部崩れるみたいなところは醍醐味ですよね。神経を研ぎ澄ましてやっている感じが、舞台ならではの人間から出る生の緊迫感として出せたら強いと思うので頑張ります」
褒められると伸びないタイプ
今作をより魅力的にしているのは『ジキル&ハイド』『スカーレット・ピンパーネル』など数々のヒットミュージカルを手がけるフランク・ワイルドホーンの楽曲。
「歌が難しいんですよ。ワイルドホーンさんの曲はけっこう体力を使う曲が多いらしくて。今回の曲はロックだし、かといってライトはクレバーに歌わないといけないので、とにかく身体にすべてを染み込ませてやらないと。稽古場でスタッフを泣かせるぐらい食い下がって、300%出してぶつかっていきたいです」
初体験の舞台稽古で楽しみにしていることは?
「栗山(民也)さんの演出は素直に楽しみですし、日本を代表する演出家のもとで初舞台を踏めるのはすごく光栄です。こんな僕にどんなことを言ってくださるのか、特にライトは狂気に満ちあふれる役なので、知らなかった自分に会えるかもしれないですよね。
Wキャストも初めてで、自分と同じ役を演じる村井良大さんと1か月以上一緒に稽古できるのは楽しみですし、すごく心強いです。先輩の背中を見ながら頑張って、いいところは盗ませてもらおうと思っています(笑)」
高校1年のときに、原宿で現在の事務所にスカウトされたことが俳優になったきっかけ。続けてきたサッカーと高校生活をまっとうしてから始めたいという自分の意思で卒業後の2015年に事務所に入った。
「いちばん最初の仕事が菅原浩志監督の『写真甲子園0・5秒の夏』という映画で、北海道に泊まり込みのロケだったんですけど。それまで俳優や芸能界に全く興味がなかったサッカー少年が、いきなり北海道に放り出されて、芝居しろって言われて本当に大変でした。
夏だったので熱いし過酷で、撮影中は1ミリも楽しいなんて思えなかったですけど、完成した作品を見て“映画ってこうやってできるんだ”っていう感動があって。それが始まりで『仮面ライダーエグゼイド』に出演して、いろいろなドラマに出させてもらって、“役者で生きていくんだな”って思うようになりました。
原宿を歩いていたら奇跡が起きて、だから今ここにいるし、今回の舞台にも出られるって考えると人生ってすごいなって思うんですけど」
性格は、好きなことにはとことん打ち込む気分屋で負けず嫌い。
「褒められると伸びないんですよ、僕(笑)。褒められるより怒られるほうが、頑張れるし結果的に必ず伸びると思う」
今後の目標を尋ねると。
「甲斐翔真ってなんかいいよねって言われるようになりたいですね。なんかいいよねっていろいろ詰まっている気がして。文字面では伝わりづらいですけど。心のどっかに触れるような、人の心に何かを残せるような役者になりたいです。でも、まず自分の夜神月を演じ切ることですね。そして『デスノート THE MUSICAL』をより多くの方に知ってもらって、劇場に来ていただきたいです!」
かい・しょうま 1997年11月14日、東京都出身。'16年『仮面ライダーエグゼイド』でドラマデビュー。今年は、ドラマ『電影少女-VIDEO GIRL MAI 2019-』『いつか、眠りにつく日』、『パラレルスクールDAYS』、映画『君は月夜に光り輝く』などに出演。映画『シグナル100』が2020年1月24日公開。2月15日~16日に『15th Anniversary SUPER HANDSOME LIVE「JUMP↑ with YOU」』出演。
『デスノート THE MUSICAL』
作曲:フランク・ワイルドホーン 演出:栗山民也 出演:夜神月役・村井良大/甲斐翔真(Wキャスト)、L(エル)役・高橋颯、ほか。東京公演:1月20日~2月9日@東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)/静岡公演:2月22日~23日@清水マリナート/大阪公演:2月29日~3月1日@梅田芸術劇場 メインホール/福岡公演:3月6日~8日@博多座【公式サイト】http://horipro-stage.jp/stage/deathnote2020/
取材・文/井ノ口裕子 ヘアメイク/Emiy
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剛力彩芽、前澤氏との破局で女優生命ピンチどころか「最高のネタ」を得る
「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
剛力彩芽
第34回 剛力彩芽
女優・剛力彩芽が交際していたZOZOの創業者、前澤友作氏と破局したそうです。今どきの若い人らしく、セレブ的な交際をSNSで公開してネット民にひんしゅくを買い、それと関係があるかは不明ですが、CMなどのレギュラーも失っていった彼女。金に目がくらんだヤバいオンナ扱いされていた感がありました。
今回の破局で、女優生命がピンチといったニュアンスのネットニュースがたくさん上がっていました。けれど、私はむしろ逆で、剛力は最高のネタを得たのではないかと思うのです。
美貌や才能がキラキラ光る人がスカウトやオーディションを経て芸能界に入っていくわけですが、人の心をひきつけるにはキラキラだけではだめで、特に女性芸能人には“傷”も必要だと思うのです。
宮沢りえ、中森明菜がもつ“傷”に女性層の気持ちは動く
例えば、宮沢りえは19歳の若さで貴花田(当時)こと花田光司氏との婚約を発表します。トップアイドルと角界の若きプリンスというゴールデンカップルの誕生に日本は沸きましたが、まもなく婚約を破棄することとなります。破談の原因は語られませんでしたが、会見で「悲劇のヒロインにはなりたくない」と語った気丈なりえを覚えている人は多いのではないでしょうか。
家庭の問題も“傷”となりえます。1989年に、中森明菜が当時の交際相手、近藤真彦の家で自殺を図ったことがあります。明菜は『ザ・ベストテン』(TBS系)で結婚願望を明らかにしていたことから、当時のワイドショーや週刊誌では「結婚話が進まないことに悲観して、手首を切った」「重いオンナ」という意見が多くみられました。しかし、’95年に明菜は『マルコポーロ』(文藝春秋)のインタビューに答え、自殺未遂の原因として家族との確執をあげています。明菜のお金をあてに家族がビジネスを始めるもすぐにつぶしたり、明菜に内緒で事務所に借金をするなどたかられており、精神的に追い詰められていったようです。
スターといえども人間ですから、破談や家族からの裏切りはつらいでしょう。スターとしての実績があったうえで、「それはつらいだろう」と共感できるようなエピソードがあると、特に女性層は「応援してあげたい」という気持ちが高まるのではないでしょうか。
加えて、前回、立川志らくの回で書いたように(『グッとラック!』立川志らく、主婦層に受け入れられない「オジサン」の悪いヤバさ)、現代では情報元はテレビだけではありません。ネット、特にSNSの影響が強くなっています。誰もが簡単にコメンテーターになれる時代、芸能人は「憧れの存在」から「SNSのネタ」という側面も持つようになりました。そうなると、イジリやすい人、つまり「一般人と同じ」と思わせるネタを持つ芸能人に好感が集まるとも言えるでしょう。
破局と同時に元カレの女性トラブル報道
以上のことから考えると、順調すぎる芸能人生活を送ってきたこれまでの剛力は傷もない、かつSNSウケもしない存在だったと言えるのではないでしょうか。彼女は小学生のころに、大手芸能事務所にスカウトされて芸能界入り。順調にキャリアを積み、ドラマやCMに多数出演していました。『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)で、彼女自身が家族円満であることを話していましたから、明菜のように家族に裏切られることはなさそうです。
ところが、『ボクらの時代』(フジテレビ系)で「オスカー事務所には25歳まで恋愛禁止令がある」と明かしていた剛力が、恋愛禁止の年季が明けて選んだ相手が大金持ちの前澤氏だったわけですから、「一般人と同じ」を好むSNS民には大不評。昭和であれば、清純派女優と富豪の恋愛は王道としてもてはやされたかもしれませんが、今の時代には若干そぐわないところがあります。
しかし、神は剛力を見捨ててはいません。元カレ・前澤氏の不祥事が破局後すぐに『週刊文春』(文藝春秋)に掲載されたのです。前澤氏とSNS上でやりとりをしていた既婚女性が、前澤氏の新会社『スタートトゥデイ』で秘書を募集していることを知り、履歴書を送ったそうです。オフィスに誘われた女性は採用面接だと思い出かけたところ、オフィスで関係を持ったそうですが、不採用。前澤氏は面接ではなく、個人的な興味で会ってみたかったと説明したそうで。怒った女性が『週刊文春』に売り込むと訴えると、前澤氏は警察に被害届を出すと応じて、トラブルになっているようです。
いろいろツッコむところがありすぎる話ですが、有名企業の社長ともあろう人が、職場で人妻と何をやっているんだというのが大方の見方ではないでしょうか。大富豪・前澤氏のビジネスが順調で、人格も高潔という非の打ちどころがない人物であり、かつ本当に好きな人ができて剛力と別れたいというのなら、彼女にはなんとなく「捨てられたオンナ」のようなイメージがついてしまいます。しかし、こういう「しょうもないオトコ」的なエピソードがあると「そんなヤバいオトコとは別れてよかった」と潮目を変えることができますから、彼女には願ったりかなったりな告発でしょう。
SNSでいちばんウケる“ちょうどいい傷”をもらった
剛力は前澤氏から慰謝料として金銭をもらったとかなんとかいう記事もあるようですが、事実はさておき、前澤氏からもらった最も価値あるものは、「ダメ男と交際した」という、SNSでいちばんウケる傷ではないでしょうか。また傷の程度もちょうどよい。もし二人の間で別れ話が煮詰まって刃傷ざたになったり、暴露合戦になったら重すぎて笑えないのです。仕組んだのかと疑いたくなるくらい、今回の別れは彼女にとってちょうどいい。すべてがプラスではないでしょうか。
そうはいっても、剛力が前澤氏と交際する状態の前に、すぐに戻ることは難しいでしょう。単発のドラマや舞台で実績を重ねつつ、まずはバラエティー番組で、いじってもらったらどうでしょうか。宮沢りえが婚約破棄をしたとき、「傷ものになった」という人もいましたが、今は男性と別れたくらいで価値が落ちることはありません。むしろ、傷は財産と言っていいでしょう。
「ご存じのとおり、オトコを見る目がないもので」とか「飛行機はエコノミーで十分です」と自虐できたら、演技もキャラも立つ“ニュー剛力”が誕生するかもしれません。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。
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嵐の「音楽配信」は世間への挑戦、活動休止後のアイドル業界を見据えた決断
嵐
2019年11月3日、ついに嵐がジャニーズ事務所では初となる「全シングルの音楽配信」に踏み切った。この発表以降、各音楽配信サイトのチャート上位には今日に至るまでなお、嵐の作品が多数ランクインしている。
このニュースについて、櫻井翔はのちに「決断に至った2つの理由」を出演番組で明かしていた。ひとつは「世界中のファン、そして日本のファンと、インターネットを通じてみんなで一緒に大きな夢を描くため」。そしてもうひとつは「嵐からの後輩への置き土産」であるのだという。
令和元年のアイドルソングとその現状
「インターネット(音楽配信)を通じてファンと一緒に描く」「嵐からの後輩への置き土産」。この言葉の意味をより深く抑えるためには、嵐が現在トップランナーとして牽引している令和アイドルシーン、特に音楽作品における現状を知ることが必要かもしれない。
まずためしに、令和が始まった2019年上半期のオリコンCD&デジタルシングルランキング、そして2019年発売曲のみで構成されたJOYSOUND上半期カラオケランキングをそれぞれ見比べてみよう。
【オリコン】2019年 上半期シングルランキング/トップ5
1位 AKB48『ジワるDAYS』
2位 乃木坂46『Sing Out!』
3位 欅坂46『黒い羊』
4位 日向坂46『キュン』
5位 King&Prince『君を待ってる』
【オリコン】2019年 上半期デジタルシングルランキング/トップ5
1位 米津玄師『Lemon』
2位 back number『HAPPY BIRTHDAY』
3位 あいみょん『マリーゴールド』
4位 米津玄師『Flamingo』
5位 菅田将暉『まちがいさがし』
【JOYSOUND】2019年発売曲 上半期カラオケランキング/トップ5
1位 back number『HAPPY BIRTHDAY』
2位 King Gnu『白日』
3位 市川由紀乃『雪恋華』
4位 椎名佐千子『漁火街道』
5位 Aimer『I beg you』
「ファンからの支持」が直結しているCDシングル売上を見れば、令和に突入した2019年においてもなお、アイドルソングは音楽作品を通じてたくさんの支持を集めることに成功しているといえる。
しかし指標がデジタル市場や、アイドルファン以外の興味関心が多分に含まれたカラオケランキングになると、状況は一変。CD売上で圧倒的な存在感を見せているはずのアイドルソングたちは、もれなく圏外へと落ちていってしまうのが実情だ。
ちなみに、オリコン売上&JOYSOUNDのカラオケランキングでアイドルソングが同時期にトップ5入りを果たしていたのは、現時点で2013年リリースのAKB48『恋するフォーチュンクッキー』(2013年オリコン年間シングルランキング2位/2014年JOYSOUNDカラオケ年間ランキング2位)が最後の記録にもなっている。
ということはランキングの二極化、つまりアイドルの音楽作品と世の関心の間にできてしまった「距離」は、もう6年も、そして令和の今この瞬間も、止まらずにずっと広がり続けているということになる。
なぜ“国民的アイドルソング”は誕生しなくなったのか
平成の後半から令和のはじまりにかけて、なぜ日本のアイドルソングは世間一般の関心から離れていったのか。
かつて人々の共通の話題として、圧倒的な力を持っていたテレビコンテンツの衰退。ほかにもさまざまな要因はあるものの、その疑問を探るには、やはり国内で広がっていった「デジタル音源のダウンロード購入や定額制音楽配信サービス(サブスクリプションサービス、以下サブスク)」の話題を避けては通れないだろう。
総務省の令和元年版・情報通信白書によれば、ちょうど日本でスマートフォンの世帯保有率が50%を突破したのは、『恋するフォーチュンクッキー』がヒットしていたのと同じ2013年になる。
そのころからスマホアプリでの音楽再生が普及し、さらに2015年ごろからApple MusicやSpotify、LINE MUSICといった大手サブスクが一斉に登場したことで、日本国内のデジタル音楽市場は、急速に成長を遂げていくことになった。
しかしスマホ時代到来の直前に、ファン向けの購入特典という“発明”でCDチャートを制覇していた日本の大手アイドル運営は、一度、手にしてしまった成功の記録を手放せず、結果として音楽配信の分野ではかなり後れを取ってしまう。
例えば『恋するフォーチュンクッキー』のあとも、オリコンのシングル年間売上1位記録を伸ばし続けているAKB48は、音源のダウンロード販売自体は行っていたものの、サブスクについてはしばらくの間、CD発売から半年が経過しないと最新音源を聴くことができなかった。
そして男性アイドルでいえば、日本国内でトップのCD売上を誇るジャニーズ事務所のアイドルたちが、これまでデジタルフル音源の販売や、Youtubeでのミュージックビデオ配信をほとんど行ってこなかったという事実がある。
気になった音楽があれば、その場で調べて気軽に楽しむ。そんなスマホのある生活と完全に結びついた世の関心は、大手で有名であるほどCDの世界に閉じこもりがちだったアイドルからはどんどん遠ざかっていった。その結果「日本アイドルシーンの閉塞化」がいよいよ極まってきてしまったのだ。
しかし、ここでついに嵐が動いたのである。いや、これまで頑(かたく)なにネット進出をしてこなかった所属事務所のマネジメント方針を思えば、「やっと動くことができた」と言ったほうが正しいのかもしれない。
活動休止直前のアイドルによる挑戦と願い
11月3日に始まった嵐のデジタル配信解禁は、もちろん過去作の再評価や最新作のさらなる認知など、グループ自身に還元されるものもたくさんあるだろう。
しかしそれ以上に大きかったのは、この決断がトップアイドルグループの音楽作品をもう一度、日本の日常に結び付けていこうという、世間への「挑戦」そのものである、ということなのではないだろうか。
この先に見据えられているのはおそらく「世間と切り離されてしまったアイドルシーンの再集約」。そして、2020年末での活動休止もすでに公表している嵐の先導によって、アイドルが世間の関心と重なる大動脈がもう一度、確立できた場合そこには一体何が生まれるのか。
それはおそらく、2020年12月31日以降のアイドルシーンにおける「新たな国民的アイドルの誕生」。これまでのテレビ、CD、コンサートというルートだけでは決して生まれなかった、アイドルシーンの新しい未来、その可能性なのである。
《世界中に放て Turning up with the J-pop!》(嵐『Turning up』より)
あくまでも自分らしさ、日本のアイドルが歌い繋いできた“J-POP”のよさを貫いて、制作されたという彼らの初デジタルシングル『Turning up』。その“挑戦”の歌声を聴いていると、同時代に生まれ育ってきた、いちアイドルファンとしても大きなエールと感謝の言葉を送りたくなる。
乗田綾子(のりた・あやこ)◎フリーライター。1983年生まれ。神奈川県横浜市出身、15歳から北海道に移住。筆名・小娘で、2012年にブログ『小娘のつれづれ』をスタートし、アイドルや音楽を中心に執筆。現在はフリーライターとして著書『SMAPと、とあるファンの物語』(双葉社)を出版しているほか、雑誌『月刊エンタメ』『EX大衆』『CDジャーナル』などでも執筆。Twitter/ @drifter_2181
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公立教員を死に追いやる『変形労働時間制』危ない法案の中身
※写真はイメージ
増え続ける授業に採点、部活、保護者対応に生徒指導。膨大な業務に追われて、残業代はゼロ。それが学校で先生たちが置かれている日常だ。
そうしたブラックな環境に追い打ちをかけるような法案がいま、国会で審議されている。柱となっているのが、授業や学校行事などで忙しい時期に定時を延ばし、かわりに夏休みにまとめて休みを取り、年単位で働く時間を調整する『変形労働時間制』という制度。4・6・10・11月の勤務時間を週3時間増やし、その分を夏休みのある8月に振り替えて、5日程度の休みが取れるよう設定するイメージだ。「学校の働き方改革」の一環で、成立すると公立学校で導入できるようになる。
定時が延びて過労死も増える
この改革案に全国の先生たちは猛反対。撤回を求めるネット署名は11月15日時点で3万3000筆を超えた。署名に寄せられたコメントからは悲痛な叫びが聞こえてくる。
《休憩すらまともにとれていないのに、この制度はありえません》
《わが家は夏休みを待たずに倒れました。そういう先生方が多いのは事実です》
このネット署名を始めた現役教員・西村祐二さん(40)は、学校への変形労働時間制の導入を「教員への暴力」と言ってはばからない。集会を開き、署名を文科大臣らに届け、記者会見も開催。その席で西村さんはこう訴えた。
「教員もひとりの人間。聖職者でも神でもありません。こういった働き方を強いられていたら死んでしまいます」
SNSや著作のペンネーム・斉藤ひでみとして活動してきたが、ここへきて、募る危機感が実名で顔を出すことに踏み切らせたという。
「熱意を持って教育に取り組んできた先生方が年に何人も学校を去っていった。疲れ果て、倒れていった先生方が僕はもう、忘れられないんですよ。当時、学校に変形労働時間制があったら過労死されていたかもしれない。そんな同僚が次々に出る職場は異常です。教員の心身を壊し、生活を壊し、公教育を壊す暴力を僕は黙って見過ごせない。声を上げる教員の姿を生徒たちは見ています。おかしいことはおかしいと言っていい。そう生徒たちに伝えるためにも絶対、成立させちゃいけない」
変形労働時間制の何が問題か? 西村さんが続ける。
「定時は延びて、忙しいとされる時期は1日10時間も働かせていいことになる。当然、過労死も増えるでしょう」
国の調査によれば、小学校の約3割、中学校で約6割の教員が健康被害の高まる「過労死ライン」を超える、月80時間以上の残業をしていた。
「定時が延びた時間帯へ学校行事や職員会議など、学校全体のための業務を組み込まれるおそれがある。すると、授業準備や採点など、個人でやる業務の時間がとれない。今でさえ、授業準備は家に持ち帰ってやるのが当然という風潮。タイムカードではわからない残業がエンドレスで増えていき、残業の実態を見えなくさせてしまう」(西村さん)
教員側の意見を反映させる機会が奪われている
そもそも学校に閑散期などあるのか? そう疑問を投げかけるのは、埼玉大学の高橋哲准教授(教育学)だ。
「先生たちは夏休みにも残業しているという実態がある。学校では突発的に保護者や生徒への対応を迫られることが多く、事前に忙しい時期とそうでもない時期の計画を立てるのは困難。本来、変形労働時間制を入れてはいけない職種なんです。また、有休取得さえ難しいほど多忙な先生たちが、そもそも休日をまとめ取りできるのかも疑問です。できたところで、1年の疲労を8月にまとめてとれますか? 人間の身体は、そんなふうにはできていません」
また、学校側に都合よく働かされることを防ぎ、先生たちを守るブレーキもない。
「民間企業で1年単位の変形労働時間制を導入するには、働く人の意見を反映させた協定を労使が合意して結び、それを労基署に届け出るなど、さまざまな手続きを踏む必要があります。しかし現在の法案では、これらの過程はすべてスキップできるとされている。労働当事者である教員側の意見を反映させる機会が奪われているのです」
校長や教育委員会のさじ加減ひとつで勝手に働き方を決められかねない。西村さんも「今まで以上に部活顧問を強制されやすくなるのでは?」と、恣意的運用を懸念する。
残業代というブレーキもきかない。公立校の教員は、月給の4%という教職調整額が支払われるかわりに、残業代は出ない仕組みになっているからだ。“定額働かせ放題”と呼ばれるゆえんだ。
「民間企業では『36協定』と呼ばれる労使の合意がなければ、社員に1日8時間以上の残業をさせることはできません。そして残業代を支払わなければならない。また、特別な事情があって労使の合意ある場合に限り最大で年720時間まで残業させることが認められていますが、これを超えたら罰則が科されます。一方、こうした長時間労働を防ぐブレーキが公立校の先生たちにはひとつもありません」
と、高橋准教授。そこへ変形労働時間制が加わると、暴走する可能性が。
「夏休みの休日まとめ取りだけでは長時間労働は減らせないため、文科省は対策として、時間外労働を規制するガイドラインを変形労働時間制と併せて入れると言っています。しかし、そもそもブレーキがないので、ガイドラインで認めている年最大720時間の残業をタダ働きさせてもいい仕組みとして機能するのではないか」(高橋准教授)
「子育てや介護と両立できない」と切実な声
勤務時間の延長は、家事や育児、介護を主に担う女性教員にとって、暮らしの土台を揺るがす問題だ。署名でも切実な声が寄せられている。
《子どもの保育園のお迎えが間に合わず、生活が成り立たなくなります》
《健康的な子育てなんてあきらめろ、嫌なら教師をやめろと言われているようなもの》
文科省は育児中の教員への配慮は大前提としているが、
「時短勤務の申請をすることさえプレッシャーに感じている人は多い。配慮しますよと言われても、教員間で負担に差が出てギスギスした現場になっていく」(西村さん)
「ただでさえ少子化で教員の数は減らされています。育児中の方に配慮するには人員が必要。財源もかけずに通達を出すだけなら何も配慮していないのと同じ」(高橋准教授)
学校がブラックな場所になるほど教員志望者は減っていく。高橋准教授によれば、
「教員採用試験の倍率は、大都市では軒並み低下。私の勤める大学でも、教員免許を取っていても約半数は教職を選んでいません。変形労働時間制になると拍車がかかり、優秀な学生が教職に就かなくなり、相対的に教員の質を下げていくことになるのでは?」
教員の質の劣化は、授業の質の劣化に直結する。
「小学校での英語など新しい授業がどんどん入ってくると、その都度、勉強が必要になる。例えば2時間は授業準備に割いていたところを、疲れて余裕がなくなれば、今日はもう1時間でいいかな、となるでしょう。その分、授業の質は落ちます。今でさえ生徒から相談があると言われても、10分だけ、すぐ職員会議だから5分だけ、という状況。いじめやトラブルなどに十分に対応できなくなるのではないでしょうか」(西村さん)
子どもたちのためにも教員が普通に働いて生活できる真の改革が求められている。
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山田涼介に坂口健太郎も「ママ好き男子」急増のワケ
芸能界でも「ママ好き」男子が急増中(左上から時計回りに)山田涼介、平松賢人、坂口健太郎、矢島愛弥
「お母さんのことが好き」
男性がこんな言葉を口走ったものなら、“マザコン”と認定され、女性から敬遠されてしまう悪条件の筆頭格だった……はず。
ところが最近では、坂口健太郎やHey! Say! JUMPの山田涼介、BOYS AND MENの平松賢人をはじめ、堂々と“ママ好き”“お母さんと仲よし”を公言する男性芸能人も増えている。マザコン=マイナスイメージ、そんな考え方は時代錯誤になっているのかも!?
嫌悪感を象徴した「アレクサ息子」
「お母さんと一緒に原宿に出かけたりしても、全然恥ずかしくないですよ」
こう話すのは、男性アイドルグループ「B2takes!!」のメンバーであり、元おニャン子クラブの渡辺美奈代を母に持つ矢島愛弥。美奈代とバラエティー番組で共演した際、母親との超がつくほどの仲よしぶりが話題を呼んだ“ママ好き男子”のひとりだ。
「いまどきの子は、男女問わず家族と仲がよいと思います。女の子もお父さんと一緒に出かけることも珍しくないです。親と一緒にいることに対して“ダサい”とかいう人もいますけど、そう決めつけるほうが“ダサい”という時代に変わってきてると思います」
と、キッパリ。現代の若者は、母親との仲のよさをからかわれてもそれほどダメージには感じないようだ。
ところが、そんな時代背景の変化に対して、結果的に一石を投じる形になったのが、AmazonのAIアシスタント「アレクサ」のCMだった(※現在は放映終了)。
テレビ電話を通じて、母親に肉じゃがの作り方を相談する男性に対して、きゃりーぱみゅぱみゅがツイッターで「アレクサのCMの息子みたいな男苦手」と投稿したところ共感の声が続出。
「彼女に振る舞うための料理なのに、おふくろの味を再現しようとしているのが気持ち悪い」「“今度の彼女は大丈夫?”という母親のセリフから、男性が毎回、母親に報告している感じがしてムリ」
などなど、多くの人々からネガティブな意見が寄せられ、いまだマザコンに対する反感が根強く残っていることを明らかにしてしまった。
“ママを自慢したい欲望”の顕在化か
男性が母親と親密な様子は、なぜ忌避感を覚えさせてしまうのか? 精神科医であり医学博士の春日武彦さんが説明する。
「“マザコン”という表現には、男尊女卑とか“女の上司の下で働く男なんてみっともない”といった価値観、精神的近親相姦といったイメージが付随しています。マザコン男はダメ男で、母親にしか相手にしてもらえない男……そういったイメージが残っている、ということでしょう」
また昨今、“ママ好き男子”が増えている背景に対しては、
「今に始まった話ではなく、クラスメートの母親が美人だと、みんなが羨ましがったり息子も誇らしげな顔をしていたものです。つまり“ママを自慢したい欲望”は普遍的なものとして考えることができます。
輪をかけて、近ごろのお母さんはおしなべてきれいです。かつてのような生々しい生活感を感じさせない。自慢するに足るお母さんばかりになると、ママ好きを公言する男子が出現しても不自然ではないでしょうね」と分析。
さらに矢島も「LINEやインスタグラムなどのコミュニケーションツールの登場も大きいのでは」と話す。
「家族同士でフォローし合うことも珍しくないし、スタンプひとつで感情を伝えられるので、より家族間が親密になりやすい。それに、ジャスティン・ビーバーなど外国人のインスタを見ると、母親を大切にしているような投稿が多い。そういうリスペクトを日常的に見る機会があったことも大きいですね」(矢島)
ママ好きを公言している男子ばかりに焦点が当たりがちだけど、息子好きを公言するママが増えていることも忘れてはいけない。モデルの蛯原友里が3歳の息子に対して「ちっちゃな彼氏みたいで毎日キュンキュンしてます」と発言したように、ママタレたちが「小さな彼氏」と称する投稿を発信していることも興味深い。
20歳の大学生を息子に持つ40代の女性は「母親サイドの心境の変化もあると思う」と話す。
「時代とともに子どもたちとの関わり方が変わるなかで、“完璧な母親像って何だろう”って考えると本当にわからない。でも、自分の母のような昭和的な“お母さん像”は、今とは違うなって。それに、昭和の母親像を求められるような社会でもないですよね」
24時間、母親然としている必要はなく、保護者としての責任を果たせば、ともに楽しんでもいいのではないか。だからこそ、一緒にライブに行ったり、映画を見に行ったりもするという。先のアレクサのCMにしても、
「彼女が到着した後も母親と通話していたらおかしいですけど、きちんと通話を切っている。母親と仲がよい、そのうえで彼女を優先する。線引きができていると思うので、そこまで非難すること? って思っちゃいますね」
と、“肉じゃが男性”に同情するほど。拒否反応を示す人の中には、かつて佐野史郎が演じた“冬彦さん”ではないけれど、前時代的な母親と息子の関係性しか知らないから、ついつい手厳しい意見を言ってしまうのでは!?
ママだけでなく“ファミラブ”男子へ
「マザコンのコンって、コンプレックスの意味ですよね? まったくコンプレックスなんてないですよ」(矢島)
母には、敬意と感謝しかないという。
「今、自分が芸能活動をしているから痛感するのですが、母は芸能活動をしながら毎日お弁当を作ってくれたり、学校行事に参加してくれたりしたんだなって。どれだけ大変だったんだろうと思うんです。僕も来春、大学を卒業するので、育てられる側ではなくなります。恩返しではないですけど、親孝行をして、母に楽をさせたいです」
母親へのリスペクト。それこそが、ママ好き男子の根底にある共通の思いなのかもしれない。
「自慢することが“恥”とか“あられもない”と指弾されなくなったので、母親込みの自己顕示があって当然ということなのでしょう。個人的に、ママ好きを公言できる男子は、自己肯定感に満ちているんだろうなと、ちょっと羨ましいくらいです」(春日さん)
最後に、矢島からこんな提案が。
「マザコンやファザコン、シスコンなど、言葉のイメージが悪いから、母親や家族と仲よくしている男子も悪くとらえられがちになる。むしろ僕は、家族を大切に思い、仲よくすることがどうして悪いのかわかりません。僕は父も母も弟も好きです。言わば、ファミリーラブ(笑)。
これからは“ファミラブ”じゃないですけど、マザコンとは違う呼び名が浸透したらいいなって思います」
ママ好き男子たちがこの先、新しく家族を築き上げる際も“ファミラブ”をモットーにできれば、もっと世の中は変わるかも─。
やじま・まなや 1997年、東京都生まれ。タレントとしてテレビ、舞台で活躍中。2019年8月からメンズアイドルグループB2takes!!に新メンバーとして加入し、新たなステージに挑戦中。
かすが・たけひこ 1951年、京都府生まれ。精神科医、医学博士。著書多数。小説家としての顔も持つ。
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『AID』で生まれた女性「私は母に裏切られた」
父親が“実の親”ではないとある日突然、わかったら…… ※写真はイメージです
不妊治療のひとつにAID(Artificial Insemination by Donorの略)というものがある。これは男性側に不妊の原因がある場合に、第三者の精子を用いて人工授精を行う方法だ。日本語では『提供精子による(非配偶者間)人工授精』などと呼ばれる。国内では1948年に慶応大学病院で初めて実施されて以来、数万人の子どもたちがAIDによって生まれてきたとされる。
ここ10年ほど、体外受精を何度も試みて失敗した人たちがAIDに流れてきているが、見知らぬ他者の精子を体内に入れ、その子どもを産み育てるという状況は通常では少々考えづらい。
AIDで生まれた子ども本人はその事実をどう受け止めているのか──。当事者の自助グループ『DOG』の石塚幸子さんに話を聞いた。
母への怒りと、よくわからない不安と
「私が事実を知ったのは23歳のときです。父親が遺伝性の病気だったので、私もDNA検査を受けようかと悩んでいたところ、母親に呼ばれて“お父さんとは血がつながっていないから遺伝はない”と聞かされて。昔、慶応病院でほかの人の精子をもらう不妊治療を受けてあなたは生まれた、その精子が誰のものかはわからない、ということを言われました」
初めは病気の遺伝がないことに「正直ホッとした」という。だがその後、部屋に戻り、時間がたつにつれ混乱が彼女を襲った。
「母親がずっと私に隠し事をして、ウソをついていたことがショックでした。父親の病気のことがなければ言わなかったはずで、それがすごく嫌だった。“わたしの人生は母のついたウソの上に成り立っていた”と思えてしまったんです」
その後の母親の対応も追い打ちをかけた。母親は娘のつらさを理解することができなかったのだ。
「ショックをひとりで抱えきれず友達に相談したら、母にそれを責められました。母はAIDを“人に打ち明けるべきではない”と思うほど後ろめたいものと感じていて、そんな技術で私が生まれたんだ、と思うととてもつらかった。“なんでそんなに悩む必要があるの”と言われて、悩むことすら許されないのかと余計に苦しくなりました」
当時は「悲しいのと母親への怒りと、よくわからない不安がまぜこぜ」だったという。
本当に変えるべきは私たちの価値観
事実を知ったのち、幸子さんはAIDについて自力で調べ続ける。なぜ自分がこんなに苦しいと感じるのか? 考えるうちに、医療の問題に行き当たった。
「医師は“子どもさえ生まれれば全部OK”と思っていて、生まれてから起こる問題に目が向いていなかったんだと思います。AIDは戸籍上は完全に実子と同じなので、親が黙っていればわからないことが多い。子どもに隠し通せれば問題は起きないと、医師も患者も思っていたんじゃないでしょうか。治療技術ばかりを先行させて、“考える”ということをしてこなかったから、こんなことになったんだと思います」
幸子さんはAIDについて「いまのやり方のままならやめたほうがいい」と考えている。では、どんなやり方ならいいのか?
「不妊のつらさの大本には“結婚して夫婦になったら子どもを産むのが当然”みたいな社会の価値観があります。不妊のつらさは不妊治療で子どもを産んでも解決しません。今は“普通の家族”を装うため不妊治療の技術を使う人が多いけれど、本当に変えないといけないのは私たちの価値観のほうでは。もっと多様性が認められるといいですね」
そのためには、社会全体で「家族とは何か」「血縁だけが親子なのか」といったことを話し合い、そのうえでAIDを使うことの是非についてもみんなで議論してほしい。そう彼女は考えているという。
「血縁の有無に関係なく、自分たちが家族と思えば家族だと思うんですね。AIDでつくられた家族も、養子や再婚家庭、同性カップルなども“ふつうと違う”と思われがちですが、いろんな形があって当たり前だよね、とみんなが受け止めるようになるといい。
わが家のように外見は整っていても実はウソや隠し事がある関係より、血縁がなくても信頼関係があるほうが『家族』だと思います」
なお『出自を知る権利』については、早めに法的整備が必要だと思いつつも、彼女の中ではそれがいちばんではないという。
「人によりますが、私は母に裏切られたという感覚がいちばんつらかった。なので『出自を知る権利』についてもっとオープンに議論され、親が子どもに対して隠すことなく、告知をしやすくなる環境が整うきっかけになれば、と思います」
そうすれば、子どもへの告知も進み、自分のような思いをする人を減らせるだろうと彼女は考えている。
《PROFILE》
石塚幸子さん ◎『非配偶者間人工授精』で生まれた人たちのグループ『DOG』を立ち上げる。『AIDで生まれるということ~精子提供で生まれた子どもたちの声』(萬書房刊)の著者のひとり。
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捨てない・買いすぎ・収集癖、なかなか言えない「モノハラ」解決法
「モノによるハラスメント=モノハラ」解決法
モノハラ=お金とスペースの侵略
他人や家族の「モノ」のせいでイライラ・モヤモヤしてしまうことはありませんか?
「モノがあることで自分の“スペース”と“お金”が侵されていると感じさせられることが原因。相手にとっては大切なモノでも、自分には不要だったり、そこにあることがジャマだったりすると、不快・迷惑=ハラスメント、つまりモノハラと受け取れてしまうのです」
そう解説してくれるのは住生活アドバイザーで収納のプロ、すはらひろこさん。
「モノハラの影響は不快なだけではありません。仕事や勉強などの作業中に余分なものが視界入ると空間認知力の乱れを引き起こし、脳へ悪影響を及ぼします」(すはらさん)
やるべきことに集中できないのは、もしかしたら誰かの置いたモノの影響を受けている可能性も!
「モノに対するとらえ方は人によって異なるため、モノハラ加害者であってもほとんどの人はその実感を持っていないのが問題なんです」(すはらさん)
被害者だと思っていた自分が実は加害者でもあった……なんて場合も少なくありません。まずはよくあるモノハラ問題の事例をチェックして、わが身を振り返ってみて。
よくある4つのタイプ別に、「モノハラ」実例をご紹介。あなたの身の回りでも、こんなトラブルありませんか?
1.捨てない
ジャマでしょうがいないものでも、所有者にとっては捨てられない理由があるもの。たまり続けるモノたちを前に、イライラもつのるばかり。
「モノをため込む母に困っています。もらいものの食器や雑貨、古い衣類や紙袋まで、使いそうにないものでも、後で判断するからとりあえず置いといてと言ってとにかく保管、結局そのまま。散らかっているわけではないから捨ててと強くは言えないものの、ジャマなことは間違いない。どうするのがよいか、答えが見つかりません」(51歳・事務)
「過去の趣味グッズ、マンガ、はかない服……。夫はなんでも保管したがります。大切な思い出の品らしいですが、私には理解不能。わが家の収納には限りがあることを理解してほしいです!」(44歳・主婦)
2.収集癖
男性に多い収集癖タイプ。集めれば集めるほどに征服欲・購買欲が膨らむので、モノは増える一方。趣味と言われると否定もできず、悩ましい。
「スニーカー収集が趣味の夫。下駄箱だけでは入りきらなくなり、部屋に専用の棚を作って飾りだしました。下駄箱のスペースを占領しているだけでも不快なのに、部屋に帰ると自然とスニーカーが目に入ってきて、ストレスです」(38歳・マスコミ)
「キャラクターグッズを集めまくる妻に困惑。最初はかわいい趣味程度の印象でしたが、今では寝室をファンシーなぬいぐるみや雑貨が埋めつくすまでに成長。安眠できないから少し捨てるかなにかしててと言うと、他人を見るかような目で見られ、心が折れた」(41歳・営業)
3.買いすぎ
ストック品は確かに必要。たまのご褒美ショッピングも悪くない。けれどその程度がすぎる場合、買うこと自体に依存している可能性も。
「妻の趣味は読書。それ自体はいいことだと思うのだが、読んでない本はもう数えきれないほどたまっているし、買って満足してるようにも見える。すでに本棚からはあふれ出ていて、正直ジャマ。そろそろ限界だと伝えてもいいでしょうか」(48歳・教育)
「洗剤、電池、保存食……夫がストック品を買いあさることが不愉快。ネットでもスーパーでも、安売りしているのを見つけると、張り切ってまとめ買いしてしまいます。食品には賞味期限があるし収納スペースはないし、メリットを感じられません」(48歳・主婦)
4.勝手に場所占拠
共有スペースに勝手にモノを置いてしまうのは、職人気質の“わが道を行く”タイプに多い傾向が。これがベストな置き場所と信じているから厄介。
「席が隣の同僚は、デスクがいつも書類や私物で山積みの状態。さらに共有の通路にも紙袋などを置いて勝手にモノ置き場にアレンジしている始末。こちらも気がちるし、少し片づければ?と提案してみたが、『これがいちばん便利なので』との返事が」(41歳・代理店)
「ダイニングテーブルで過ごすことの多い夫は、新聞やスマホの充電、ノートパソコンにリモコンまで、ふだんよく使うものをすべて椅子から手が届く範囲に配置。日中片づけても、夜になれば何もなかったかのように元どおりの配置に」(51歳・主婦)
お互いのモノへの感じ方を共有する
どちらかが我慢するだけでは解決しないモノハラ問題。片づけを催促する前に、まずはお互いのモノへの感じ方の違いを理解しあうのが、問題解決への第一歩に。
「モノがあることでイライラさせられると、その所有者が全面的に間違っている!と考えがち。でも、本来モノをどこに置くか、どれだけ手に入れるかに正解はありません。相手を否定する前に、まずは自分の希望通りにすることで本当にその不快が解消されるのか、冷静に考えてみましょう」(すはらさん)
もしかしたら、そのイライラは相手のモノハラが原因ではない可能性も。
「他人との共同生活ではさまざまなことですれ違いやいざこざが生じるのは当然のこと。他人の行動や感情で自分の心をすり減らさないためにオススメなのが、共有スペースの中にお互いの聖域を作るという方法。気持ちに余裕が生まれ、相手のテリトリーや考えを尊重できるようになれるはず」(すはらさん)
長く続いたモノハラ問題を短期間で解消させようとしても、困難なだけでメリットなし。コミュニケーションをとりながら、お互いにとってプラスになる共通のゴールを目指し、ジワジワ改善させていくつもりで取り組みましょう。
解決のヒント
・否定から入らない
・イライラの原因を突き止める
・各自の聖域を作る
・共通の目標を作る
・短期決戦を目指さない
・自分を大切にする
「モノハラ」タイプ別解決法
1.「捨てない」の解決法 片づけを催促する前にモノの量を体感させる
「モノをため込みがちなタイプの場合、そのモノの量や質に自分自身の価値を投影してしまっていることがよくあります」(すはらさん)
いきなりモノを捨てるように促してしまうと、相手は不安や怒りを感じてしまう場合が。
「まずは相手の捨てられない気持ちに共感することが第一。そして、片づけたいモノを広げるなどして、全体量を把握してもらいましょう」(すはらさん)
“これらをより使いやすいように整理しよう”という前提で話を進めれば、いるものといらないものを冷静に判断してくれるはず。
2.「収集癖」の解決法 コレクションは「人格」。否定せずルールを決めて
「収集癖タイプにとって、コレクショングッズはまさに自分の魂そのもの。雑に扱われれば人格を否定されているも同然に感じてしまいます」(すはらさん)
集めているモノそのものを否定することは厳禁と心得ておいて。もちろん、自慢のグッズで共有のスペースを無尽蔵に侵略することを受け入れる必要はなし。全部は飾れないことを理解してもらい、展示スペースはここ、保管場所はここまでと、事前に決めておきましょう。
「そのときも邪魔に扱うのではなく、大切なモノだからこそきれいに扱おうという認識で話し合いを進めることが大切です」(すはらさん)
3.「買いすぎ」の解決法 買う行為は責めず冷静に現状を提示
「買いすぎてしまうタイプの場合、買う行為を非難しても解決にはつながりません。相手が機嫌よくリラックスしているタイミングを見計らい、「使っていないものがこれだけたまっているね」「いくら分がムダになってしまったよ」と、現状を具体的に提示してあげるのが効果的」(すはらさん)
ムダに気づけば、次第に買い物量が落ち着いてくるはずです。またこのタイプは何かしら買い物に依存したい理由がある可能性も。相手が置かれている状況や気持ちに目を向けてみると、解決の糸口が見つかるかもしれません。
4.「勝手に場所占拠」の解決法 お互いの希望をうまくすり合わせて
「相手がモノの置き場所をマイルールで決めてしまうタイプの場合、そのルールを全面変更させるのはかなり困難かもしれません。でも、逆にあなたの希望どおりの場所に置き場所を変えさせるのは、相手にあなたのルールを強要することでもあるのです」(すはらさん)
使いやすさや快適さはあくまでも主観にすぎないという認識を共有すること。そのためにはコミュニケーションが不可欠です。全面降伏を求めずに、ここがお互いの妥協ラインというポイントを探しだすべく、納得するまで話し合いましょう。
モノハラ被害者は加害者でもある!?
言われ放題のモノハラ加害者たちに、われこそは被害者だと主張する相手に向けて言いたいことがあるかと聞いてみたところ、「片づけろ片づけろと言うけれど、冷蔵庫の中の賞味期限ぎれの食品は、片付けなくていいいの? 怖くて開けられません」
「洗面所を占領している化粧品も、ある意味コレクションですよね」……などなど、耳が痛いご意見が続々。モノハラは、誰もが加害者になりえる問題なんですね。
使わないけど手放せないモノの新しい活用方法「レンタルアプリ」で賢くお片づけ
家にある邪魔なモノでも、どうしても、わけあって捨てられない場合ってありませんか? そんな捨てられないモノ対策としていま、注目されているのが、売る・捨てるのではなく「貸す」という選択肢。
昨年10月に開始されたスマホアプリサービス「貸し借りアプリAlice.style」は、アプリ上で簡単に出品・レンタルが可能なサービス。出品する側は、部屋の片づけ&小遣い稼ぎになり、借りる側は試してみたい家電や美容器具を気軽にレンタルできると大好評。売るわけではないので、出品後に再度必要になれば手元に戻すことも可能。どうしても捨てられない悩みを解決する、新しい選択肢です。
監修/すはらひろこ 株式会社アビタ クエスト代表・住生活アドバイザー。テレビ東京『テレビチャンピオン』の「お部屋リフォーム王」で収納女王に選ばれ「収納のスペシャリスト」として注目され、テレビや雑誌で活躍。『5分間「整理・収納」BOOK』(三笠書房)など著書・監修多数