歓喜は控えめだったが、その表情は誇らしげだった。圧巻、鮮烈の一撃。開始2分。松本の戦意を根こそぎ奪ってしまうような横浜M仲川のプレーにすごみがあった。
敵陣右サイドライン際で、仲川がパスを受ける。対面の松本MF高橋が距離を詰め、戻ってきた杉本と挟みこもうとした瞬間、仲川はスルスルと2人の間を抜けた。そのまま、ゴール前中央に向かって横へ横へドリブルすると、「マルコス(ジュニオール)とエリキが動きだしているのが見えていた」。ラストパスも選択肢だったが、「相手が迷っているのも見えていた」。敵味方の位置、動きだけでなく、心理まで明確に把握していた。
急襲する藤田、岩上の動きと胸中を見透かすように、シュートフェイクで置き去りにした。飯田、橋内が慌ててブロックに来たが、届くはずもない。左インフロントで小さくカーブを描いた弾道がGK守田の右手先を抜け、ネットを揺らした。
相手6人を手玉に取った“メッシ弾”。仲川の出場4戦連続得点、日本人トップの今季14点目で、チームは2年8カ月ぶりの首位に立った。残り2戦。「相手ではなく、自分たち(のこと)しか考えてない」と仲川。15年ぶりの優勝も、その両眼にははっきりと見えている。 (松岡祐司)