中国の電子マネーは進化を続けている。
その1つが、顔認証決済だ。AI(人工知能)の図形認識能力の発達によって、人間の顔を識別できるようになっているが、その技術を応用したものだ。
2017年9月1日に、電子マネーのアリペイが、杭州市のフライドチキンチェーン店舗で、「Smile to Pay」というサービスを導入した。これは、世界で初めての「顔認証支払い」だ。
利用者は最初に携帯番号を入力すると、そのあとは、スマートフォンを使わなくとも、店舗にある装置に顔を認識させるだけで決済できる。複数の人が写っていたり、髪型が登録時と異なっていても、正確に認証する。
中国は、いま顔認証技術で、世界の最先端にある。アリペイで用いている顔認識システムは、中国のスタートアップ企業の旷视科技(メグビー・テクノロジー)が開発したものだ。
メグビーは、アリババとアントフィナンシャル(アリペイを運用するアリババの子会社)から資金を受け入れた。アントフィナンシャルとテンセントは、顔認証ソフトを開発するいくつかの企業に出資している。商湯科技(センスタイム)はアリババから数億ドルを調達した。
その後、このサービスは急速に広がっている。
アントフィナンシャルは、2018年12月に、顔認証決済端末「蜻蜓(チンティン、トンボのヤンマの意味)を1199元(約1万8000円)で発売した。
これは、書籍サイズの顔認証モニターで、店舗のレジに接続すれば、顧客は顔をカメラに合わせるだけで支払いが完了する。
続いてテンセントも、2019年3月、QRコードでも顔認証でも決済が可能なウィーチャットペイの顔認証ユニット「青蛙」(チンワー)を発売した。
このように、激しい競争が続いている。
こうして アリペイまたはウィーチャットペイを利用できる顔認証装置は、中国各地の自動販売機や食料雑貨店、病院などで広がっている。
蜻蜓は、すでに1000店舗近くのセブン−イレブンに導入されている。
切符を使わずに顔認証で改札を通れる地下鉄も増え、顔認証決済の利用登録者は1億人を突破した。