韓国・文在寅は何がしたかったのか…「GSOMIA騒動」が与える影響

韓国の相対的な役割は低下していく
佐藤 丙午 プロフィール

民主主義の功罪

いうなれば、GSOMIAの失効回避に際し、韓国は民主主主義の「喜劇」とも呼ぶべき状況に陥っている。

社会的アイデンティティを背景とした民意を反映した外交・安全保障政策が理想的なのは言うまでもない。民主主義国は、民意を政治制度と政治過程を通じて実行しようとする。

しかし、政治体制の如何を問わず、国家として存在している以上、国家の利益を追求する必要がある。この二つの必要性は、往々にして対立的な関係を生む。民意と国家は、異なる方向を向くことが多い。このため、民主主義国家の政治指導者は、時に批判されつつ、国家全体の利益を選択することが求められてきた。

 

文大統領は短期的な政治利益と、長期的な国益を天秤にかけ、自身が批判される可能性があるにもかかわらず、賢明にも国家としての合理的な決断を行った。

しかし、非合理的で感情的な決定を行う可能性がある政治指導者という烙印が捺された意味は重く、韓国内では日本から対話の再開を得たと勝ち誇ることはできても、少なくとも日米両国からは「愚かな」政治指導者であり、信頼できないパートナーと見なされることになる。

実際、日韓の間でGSOMIAが存在するとしても、共同作戦を想定していないため、それほど実効的な意味はない。

やはりこれは日米韓の三ヵ国の協力関係の中に存在することに意味があり、韓国以外のパートナーからの信頼が欠けることにより、今後はたとえ協力関係があるにせよ、韓国の相対的な役割は低下していくことになる。

韓国世論は、自国の「軽さ」に我慢できなくなるだろう。そして、その不満が日韓関係の何に向かうか、日本は慎重に見極める必要があるのである。