次に、米国のインド太平洋戦略について考える。
インド太平洋戦略の一つの目的は、将来の米中関係を考慮したものであることは言うまでもない。米中関係が、かつての冷戦のような、イデオロギー上の政治体制と地政学を兼ねた、包括的な対立に発展するかどうかは不明である。
中国は、政治体制としては社会主義を維持しているが、実質的には資本主義を受け入れて、国際経済のルールの下で活動している。
しかし、米中技術摩擦にみるように、米国が中国を「普通」の資本主義国家と見なしておらず、潜在的には対立関係が発展する可能性が高い。
そのような米中関係の下で、朝鮮半島の動向が国際政治の焦点となっているのは言うまでもない。
THAADのレーダーの問題等に見るように、米国にとって韓国の存在は、大陸に向けた橋頭保とも言えよう。もし今後米国と北朝鮮との関係が変化すれば、米国は中国に対してより大きなレバレッジを持つことになる。
逆の意味で、もし米国が韓国を失うことになれば、米国は戦略態勢を大きく後退させ、日本との安全保障協力をこれまで以上に深化させるか、海洋戦略の再構築を迫られることになる。米国にとっても、これはコストが大きいものになる。
これらの要因を考えると、日韓が対立し、米国が両国を安全保障上の資源として円滑に使用できなくなることの意味は大きい。
極端な表現を用いるとすれば、すべての国が「損」をするのが明確なのである。文大統領は、この構図を十分理解していることだろう。
今回はそれを、日本に対して高く売りつけようとしたが失敗した。かといって、今後そのように動かない保証もないのである。