<東京新聞の本>
節約家計ノート 2020
丸山 晴美 監修
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【書評】「国境なき医師団」になろう! いとうせいこう著◆「独立、中立、公平」貫く誇り[評]石井麻木(まき)(写真家)国境なき医師団。紛争、災害、貧困、暴力、難民、病気…。一人でも多くの命を助けようと、いち早く現地入りし世界各地での医療、人道援助活動を行っている組織。ずっと気になっていたが、知っているようで知らなかったということを思い知らされた。ようやく全貌のうちのひとかけら、ふたかけらでもつかむことができた。 新たに知った事実として驚いたのは、医療スタッフと非医療スタッフの割合が約半々ということ。団体名から想像するように、医師を中心に構成されていると思っていた。すばらしい医療スタッフの他にロジスティシャン、アドミニストレーター、水・衛生管理専門家、建築士、プロジェクト責任者、活動責任者、通訳、調理師、ドライバー、守衛など。それぞれのスペシャリストの集合体。そして全ての人材の重要性。災害時などに常々思う、それぞれができることをする、の最たるものを示してくれている。 そして知れば知るほど「独立、中立、公平」を実現している。活動資金の95%は民間、多くは個人からの寄付。武器製造に関連している企業や製薬会社などからの寄付は一切受けないこと。気高さと透明性。命を守るために非武装を貫く姿勢。 「苦悩する会長、無力さに向き合う会長、絶望に打ちのめされる会長――こんな会長、他に見たことがない」。半年間に約百人を看(み)取ること…、救えた命よりも救えなかった命のことを考え続けていること…、想像の追いつかない絶望。無力感。それでも「真摯(しんし)に打ちのめされては、淵から這(は)い上がるようにまた行動する」。その姿を想(おも)うだけで胸が詰まり感情が満杯になり背筋が伸びる。知ることしかできないというのは、知ることならできるということ。 災害時に「写して伝えてほしい」という声を現地の方からいただいてから、写させてもらうことも多くなった。拾われない声、かき消されてしまう小さな声に耳を傾け続けたい。どんな形でもいい。心だけでも、国境なき医師団になりたい。 (講談社現代新書・990円) 1961年生まれ。作家、クリエーター。著書『想像ラジオ』『小説禁止令に賛同する』など。 ◆もう1冊いとうせいこう著『「国境なき医師団」を見に行く』(講談社) PR情報
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