本日は、児童精神科外来で比較的目にすることの多い疾患、「心身症」について説明しましょう。
あ、大人でも心身症の人はものすごく多いです。
つまり、すべての年代通じて良くみられる疾患ということです。
そもそも心身症ってなんでしょうか?
身体の痛みや違和感など身体症状が主な訴えにもかかわらず、内科や外科的精査では異常が認められない病気、ということです。心身症とか、自律神経失調症とかいう言い方もします。正式な診断カテゴリーの病名ではないですが。子どもで言えば不登校に身体表現性障害は良くみられます。
心身症は、DSM-Ⅳや、ICD-10では「身体表現性障害」「転換性障害」と言います。テンカンと言っても、てんかん発作のてんかんとは違います。Conversion disorder を訳して転換性障害です。ですので、精神科医療現場では「あの患者さんコンバージョンじゃないの?」なんて言い方をしたりします。テンカン、って言ったらどっちか混乱しますからね。
大体来られる方のパターンとして、『身体症状があるけど、身体の病気じゃないから「こころの病気」でしょう』、と。
このような診断の考え方を「除外診断」と呼びます。
これ、結構重要です。
昔は、頭痛や腹痛など不定愁訴ではまず内科や外科に行くのがお決まりでした。
ただ、最近精神科疾患が多くなり認知も進み、精神科受診の敷居もかなり低くなったため、頭痛や腹痛でいきなり精神科を受診される人がずいぶん増えてきました。
でも、なんでもかんでも「こころの病気」「こころの問題」とするのは危険です。
子どもの頭痛で脳神経外科へ念のため紹介したら脳腫瘍だったこともありました。
まず、身体疾患を精査し、除外することです。その上で初めてこころの病気が診断できます。
無用な検査は避けるべきですが、血液検査や画像検査って結構必要なんです。
さて無事に診断できたとして、ここで要注意!
身体の検査をしました、何も異常なかったです、じゃあこころの問題ですね!
・・・と、正直に患者さんに言うことは実はあんまりおススメできません。
身体疾患を除外できても、否定することには罠が潜んでいるのです。
現代児童青年精神医学、青木省三先生が担当された『身体表現性障害』の項目から引用しましょう。
心因性という言葉を使うとしたら、「ストレスとかショックが身体の変調をきたす」というように本人の責任範囲を越えた原因を指摘する方がよい(性格などの本人に属するものを原因としないこと)。
それからは励まし励まし、行動療法的なアプローチをとります。
症状があるのが問題ではありません。
症状によって、実生活の行動範囲が制限されるなど、出来ないことが増えてくるのが問題なのです。
ですから、症状を消すのにこだわらずに、出来ることをぼちぼち継続する。チャレンジする。
そして、出来たことを診察で医師はきちんとフィードバックする。保護者さん・教師・大人なら家族さんに、原因探しよりも出来たことを評価するなど良いこと探しをしてもらう。
こんな感じで治療しています。
僕もアトピーもちです。まあこれもある意味身体疾患です。高校生のときから、原因探しをとことんされたり、自分を全否定されてもっと強くならな駄目!体質改善しろ!とか散々言われてきて、そのような物言いが患者さんにとっては百害あって一利なしということを身をもって感じることが出来ました。
そのようなことが解っただけでも自分がアトピーもちの意味はあったかなあと良いように捉えていますw
さて、まとめます。
・心身症、身体表現性障害は良くみられる疾患です。
・有病率は諸説あり過ぎてわかりません。成書で書かれているよりもっと多い、数%はある印象です。
・女性のほうが多いです。
・診断には身体の精査が必要ですが、身体がどこも悪くないと言い切らないことも大切です。
・良いこと探しをする、出来ていることを減らさないように。まずは現状維持を大切にしましょう。
・それからひとつひとつスモールステップで出来ることを増やしていく。
・抗不安薬などのお薬を補助的に使用することも有効です。
本日はこの辺で、ではまた!
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