1つ目の要素は、嗅覚神経のメカニズム。
人間の嗅覚受容体は機能するもので390種近くあり、
特定の匂い物質のみを感受する受容体や、
1つの匂い物質に対し複数の受容体が感受する組み合わせで得た情報を、
興奮性ニューロンである僧帽細胞や房飾細胞などの糸球体モジュールに伝えます。
興奮性ニューロンは、匂い情報を活動電位というシグナルに変換します。
僧帽細胞や房飾細胞から糸球体に接続する神経細胞のことを、
樹状突起といいます。
この樹状突起という神経細胞は、
匂い刺激の有無によって増減する事が近年の研究で明らかになりました。
匂い刺激によって木の枝のように神経細胞が大きく広がれば、
効率良く匂いシグナルが伝わるようになります。
これは嗅覚の発達を示唆します。
この新たに神経細胞が生み出される神経新生といわれる現象ですが、
一昔前まで、成体で神経細胞は決して再生しないとされていました。
近年になって成体期の神経新生が確認されましたが、
嗅覚と脳の一部だけで体内でも稀です。
嗅覚の神経細胞は
匂い刺激があれば成長し、無ければ減少するのです。
CS患者を苦しめる香害の原因、日常にあふれかえる匂い刺激は、
そのほとんどが人工的に作られた化学物質です。
消臭剤なのに香料を付加している、本来消すべき匂いを付ける矛盾した製品。
洗浄力さえあれば雑菌が繁殖する素となる栄養素も残らず洗い落とせるはずなのに、
洗浄力を差し置いて殺菌力を謳い文句にする洗剤。
それらの付加された本来余計な機能は、
性能を誇示するため長期間、持続するよう開発されています。
結果、身近にある人工的な香料や殺菌剤は
常に嗅覚を刺激し続けることになります。
刺激を受け続けるからこそ嗅覚は発達するのです。
このよういな匂い物質は、開発される以前である昔は当然存在していません。
刺激が無ければ嗅覚の神経細胞は減少するので、
昔の標準的な嗅覚能力であれば現在のような香害の問題は無かった訳です。
空気中に漂う有害物質等の匂い刺激に応じ、
個別の嗅覚受容体の興奮性ニューロンが発達することで、
CSの初期段階では特定の匂い刺激シグナルを、より強く脳に伝え易くなり、
悪化しMCS(多種化学物質過敏症)になると対象の匂い刺激受容体は多数種に及ぶと思われます。
嗅覚からのシグナルは次に扁桃体の皮質核に送られます。