兼田徳幸
帰宅すると、リビングに張り詰めた空気が流れていた。
小学生の弟が万引きしたかも、と母が言う。目の前にいる弟の手には、ポカリスエットのペットボトルが握られていた。
「それ、どうしたん?」
「なんで持ってるの?」
母が繰り返し尋ねるが、弟は口ごもっている。
「あのね。えっと、えっとね……」
色白で目がくりくりした弟は、4歳違い。ブロックのおもちゃで2人でよく遊んでいた。その弟がダウン症で知的障害があると母から教えられたのは小学1年のときだ。お姉ちゃんが代わってあげたい。幼心にそう思ったのを覚えている。
弟は何をするにも家族の誰かと一緒だった。登下校は必ず集団で、ひとりで買い物に出かけたこともなければ、お金を持ったこともない。
ところが、その日は母が仕事か…
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