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回復術士のやり直し~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~ 作者:月夜 涙(るい)

第二章:回復術士は嘲笑う

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第七話:回復術士は剣聖を慰める

 もう一人の役者として呼んだのは王女フレア。

 今日だけは、フレイアに王女フレアとして振る舞ってもらう。

 すべては、剣聖クレハ・クライレットを”説得”するためだ。


「……フレア様、よくご無事で。まさか生きているとは思ってもいませんでした」


 クレハは動揺しながらも、ジオラル王国の一貴族として王女フレアに頭を下げる。

 偽物と疑いはしなかった。彼女は実際にフレアを見たことがあるし、彼女クラスになると、気で本物かどうかわかってしまう。


「クレハ、頭をあげてください。今の私は王女ではないのですから。私はケアルのおかげでなんとか、逃げのびることができました。もし、ケアルがいなければ殺されていたでしょう」


 フレアが悲しそうな表情を作る。

 そこに、深い事情があることを見る者に想像させる。


「フレア様も変装していたわけね」

「ええ、フレイアというのは仮の姿。私はジオラル王国の王女にして【術】の勇者。フレアです」


 さすがは、正真正銘の王女フレア。王女フレアの演技がうまい。


「何があったか聞かせていただいてもいいかしら?」


 俺が一度説明したにも関わらず、クレハは王女フレアに何があったかを問いかける。

 俺を信用できていない証拠だ。

 だが、フレアのことを信用しているからこそ、フレアに質問を投げかけた。


「いいでしょう。……私は、ある日、【癒】の勇者ケアルから、王国のものたちを【回復ヒール】したときに得た記憶を聞かされました。亜人たちを食い物にしている話や、魔族との戦争自体が王家による自作自演ということ。驚きましたし、とても信じられませんでした。お父様がそんなことを許すはずがない。だから、真相を確認しようとしました。その際に、信用していた近衛騎士隊長にケアルから聞いた話をしゃべってしまいました。そのせいでケアルは牢獄に閉じ込められてしまったのです。そこからすべてがきな臭くなりました」

「【癒】の勇者が、幽閉されたのはそういうわけだったの」

「……はい、私のせいでケアルは幽閉されていしまいました」


 俺が幽閉状態にあったことを知っているのは意外だ。

 大貴族だけあって、さまざまな情報が耳に入ってくるのだろう。


「私はケアルが捕まっても真相の追及をやめませんでした。ケアルをなんとか解放するように動きながら、情報を集め、そしてとうとう王国の闇を知ってしまったのです。ジオラル王国は人類を守る盾なんかじゃなかった。魔族との戦争を口実にしつつ、軍事力をちらつかせて他国の援助を吸い上げ、亜人を迫害し物のように扱い富を積み上げる。到底、許されることではありません。それを正そうとした私は、……暗殺者を差し向けられてしまいました。あの国はくるっています。邪魔になれば王女であろうと切り捨てるんです」


 クレハが息を飲む。

 フレアの演技が優秀なおかげで、すんなりと信じかけている。まあ、もともと王女フレアだったころから黒い内面を覆い隠す善人面は完璧だった。演技の才能があるのだろう。


「なんとか、暗殺者は退けはしましたが、私は絶望しました。王女であろうと内側からこの国を正すのは無理だと気付いてしまったのです。それどころか、ここにいればいつか殺されてしまう。……だから、せめて巻き込んでしまったケアルだけでも逃がそうとしました」

「もしかして、あなたが殺されて部屋が燃やされたのは」

「ケアルが仕込んだ芝居です。ケアルは私が殺されるのを良しとしませんでした。牢を抜け出したケアルは、私の死を偽装して二人で逃げてくれました。私たちは、本当の意味で世界を救う旅をしています。さきの氷狼族の村でもそのために戦いました。王国の兵士たちに襲われた村を、私とケアル。そして、氷狼族の少女と共に救ったのです」


 ふむ、五分で考えたにしてはそれっぽい話になっている。

 クレハは押し黙り、フレアの話を検証している。

 つじつまは合うし、真実の割合も多い。何より王女フレアが話しているという一点が、彼女を信じさせる強いファクターになる。


「……王国のために戦うのが正義だって信じて来たのに。王国が悪だったなんて」


 彼女は、この国の剣として言われるがまま戦ってきた。

 それはクレハが機械のような少女だというわけじゃない。それが人々のためだと誇りをもってやってきたのだ。だからこそ辛い修練にも、苦しい戦場にも耐えられた。

 その根底が崩れるのは、彼女にとって世界の崩壊に等しい。


「あなたは間違ってはいません。クライレット家の当主として正しい行動をとってきただけです。そのことを私もケアルも責めるつもりはありません。ただ、……この戦争そのものが、魔族からのものではなく、ジオラル王国が魔族に攻撃をしかけた結果だということも頭の片隅においてください」

「それは、本当なのでしょうか?」

「本当です。ジオラル王国は他国からの援助を受けるために魔族と人間が敵対したほうが都合がいい。だから、魔族たちの領土を荒らして戦争に持ち込みました」

「もし、そうだと言うなら、私の今までの戦いはいったい何だったの。なんのために魔族と戦っていたの」


 魔族の侵略から人間を守る。その一念で地獄のような戦場を駆け抜けていたのだ。泣きたくもなるだろう。

 周辺国から援助を巻き上げるために、ジオラル王国が仕掛けた侵略戦争が真相なのだから。

 さらにいえば、真の目的は魔族の王である魔王の心臓を奪い、禁呪で世界征服をすることだ。

 ジオラル王国は人類の敵と言って問題ないだろう。


「恥じることはありません。人間から仕掛けたにしても、魔族が襲って来ているのは事実です。戦わなければ罪のない人が殺されてしまいます。だから、クレハ・クライレット。あなたの戦いを否定しません。ただ……、私とケアルは別の道を探したいと思います」


 フレアが、聖母のような笑みを浮かべる。

 あれは利く。なにせ、理屈を抜きにして人に信じさせる魔力があの笑顔にはある。


「別の道。それはどういったものかしら?」

「戦争を止めたいと思います。どちらかが倒れるまでの戦いではなく、話し合いで。だから、私たちは王国による悲劇を防ぎながら、魔族と話し合う機会をうかがっています」


 クレハが、まぶしいものを見る目でフレアを見ていた。

 これで話は終わりだ。

 さて、おぜん立ては十分だ。あとは、俺の仕事だ。


「フレア、クレハと二人で話をしたい。席を外してもらえるか」

「ええ、ケアル。隣の部屋で待っていますね」


 フレアが席を立つ。

 すると、気まずい沈黙があたりを包む。


「……ごめんなさい。今の話を聞いてすべてが腑に落ちたわ。実際、今まで怪しいと思っていたこともあったの。私は恩人を罪人と決めつけて、斬りつけた。世界を正そうとしているあなたたちを傷つけたわ」


 クレハの目はうつろだった。

 自らの存在意義を失い。凛とした気配が消えている。


「謝らなくていい。俺が罪人というのは間違っていない。脱獄犯で王国兵を傷つけたことは変わらないんだ。それに、王女フレアを殺そうとしたとある兵士を脱走に利用して彼を破滅させた。……地獄に落ちるだろうな。だが、地獄に落ちるまえにフレアの夢を叶えてやりたいとは思うよ」


 クレハは、とある兵士を利用したということろで感情の動きがあった。

 たぶん、その兵士を知っている。それは、【癒】の勇者ケアルの顔となった近衛騎士隊長。

 奴がこっちに来ているのか。

 厄介なことになるかもしれない。


「あなたは立派ね。……私は、私にできることをする。クライレット家の力で出来ることをしたいと思うの」

「信じてくれてありがとう。クレハと敵対はしたくなかったんだ」

「私は、もう一度正義が何かを考えたいと思うわ。何のために剣を振るべきか。それを決めたい。……それと、私の腕を治してもらったときに言った言葉。あれはまだ有効よ。約束通り、私は私の全力であなたの力になるわ」


 相変わらずのちょろさだ。そうやって簡単に人を信じるから、いいように利用されていることには気づいていないようだ。

 俺は彼女の腕の拘束を解く。


「そうだ、夕食を食べていかないか。フレアも久しぶりに、フレイアじゃなくてフレアとして、知った顔と話したいだろうし」


 ついでに、こいつから情報を引き出したい。

 本当に、クライレットの剣を使った男を倒しに来ただけなのかを。他に任務があるかもしれない。


「お言葉に甘えるわ。それと、ケアル。私に償いをさせてほしいの」


 クレハは潤んだ瞳で俺を見つめてくる。

 そういえば、まだ媚薬が利いているんだった。フレアがいなくなったことと、緊張の糸が解けたことで、抑え込んでいた性欲が顔を出したらしい。

 腕を掴むと、彼女の体がびくりと震える。


 クライレットは、力に価値観を置く家系だ。強い血を外から取り入れることで繁栄してきた。

 曲りなりにも俺は彼女を倒した男だ。さらに恩人で、この国を本当の意味で救おうとしている。

 何より、今までの人生を支えてきた王国の剣としての誇りが揺らいで、彼女の心にぽっかりと穴が開いた。

 その穴を埋める何かを求め、正義のために動いている俺は都合がいい。無意識のうちに彼女はそこまで考えて俺を求めた。

 媚薬に犯された頭で、そういう感情を持つのも無理はないだろう。


「クレハみたいな魅力的な女の子に、そういうことを言われると我慢ができそうにないな。本当にいいのか」

「ええ、あなたにならいいわ」


 なら、望み通りにしてやる。

 口づけをかわす。

 服の中に手を入れる。彼女の体はひどく熱く、肌が手に吸い付いてくる。


 ああ、クレハが魅力的に見えてきた。

 馬鹿な子ほど、かわいいというやつだ。

 たっぷりと可愛がってやり、俺に依存させてやろうか。


 俺は少量の薬をこっそりとこぼして空気に溶かしつつ、彼女に気付かれないように軽度の催眠魔術を使う。


 洗脳するつもりはないが、俺のことしか考えられないように心と体を支配してやる。

 俺はクレハを押し倒す。

 クレハの目には期待があった。


 彼女は幼い時から地獄のような修練を積み重ねてきた。痛みや苦しみに耐性をもっている。

 だが、快楽を知らない。そっち方面は一般人よりむしろ弱い。そんなクレハが、今から薬と魔術と、俺の技術をすべて注ぎ込んだ快楽を知ることになる。耐えられるわけがない。


 さて、彼女を使っていろいろと情報を引き出させてもらおう。

 クレハは、これから俺と新たに信じる正義のために王国を裏切り続けるのだ。


 少し手を動かすたびに腕の中で嬌声をあげる彼女を見ながら、性欲と精神的な興奮。その両方が昂ってくるのを感じる。

 今日の夜は盛り上がりそうだ。

 一生忘れられないように、俺と快楽をクレハの体に刻みつけてやろう。

 

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