※日経トレンディ 2019年12月号の記事を再構成
日経トレンディが選んだ「2020年ヒット予測ランキング」6位は「まふまふ」。まふまふはネットが主戦場の“ひきこもり”。ただし、人気は「ドーム級」。強い共感を生む歌詞で若者の支持を集める「知られざる超人気アーティスト」の革命を3月、大衆が目の当たりにする。
【6位】“ひきこもり”の旗手 まふまふ
知られざる超人気アーティストの存在を、大衆が目の当たりにする
一人の“ひきこもり”が2020年、東京ドームで革命を起こす。その名はまふまふ。ネットを中心に活動してきた、音楽アーティストだ。
彼の出発点となったのは、ニコニコ動画などにある「歌ってみた」という動画投稿の文化。初音ミクなどのボーカロイドが歌うことを前提に作られ、人が歌うには難しい音域やテンポの「ボカロ曲」を歌いこなす技巧などを披露する場だ。のどに覚えのある若者たちがここに集まり、まふまふも2010年から音楽活動を開始。「歌ってみた」では名の知れた存在だった。
12年からは、通常はエンジニアに任せるマスタリングなども自身で手掛け、オリジナル曲の制作も開始。19年10月16日にリリースした最新アルバム『神楽色アーティファクト』は初週10.7万枚を売り上げる人気ぶりだ。
これだけのセールスが可能なアーティストながら、あくまで彼は、ネットを主戦場とする“ひきこもり”を原点とする。「ネットに集まる仲間と同じ目線に立った歌詞が、強い共感を生んでいる」と話すのは、ロッキング・オン・ジャパン編集プロデューサーで、「CUT」10月号で初めてまふまふにロングインタビューを行った小栁大輔氏。「暗い側面も含めて、世間に言いたいことは言う。でも、何かを教えたり、啓蒙したりすることは絶対にしない。生きにくい思いを抱えた若者にとって、自分たちの気持ちを代弁してくれる存在として、熱狂的に支持されている」(小栁氏)。
YouTubeの公式チャンネルでは、曲のミュージックビデオに加え、SNSで視聴者から届いたリクエストに応えた動画なども公開。視聴者との意思の疎通が図れる距離感はネットならではだ。
そして20年、かねてから彼が目標に掲げていた東京ドーム公演が開催される。実は、既にスケールは「ドーム級」。19年6月にはメットライフドームで単独ライブ「ひきこもりでもLIVEがしたい!~すーぱーまふまふわーるど2019@メットライフドーム~」を開催し、3万5000人を集めた。
9月には前述の「CUT」で初めて雑誌の表紙を飾り、同誌は完売・増刷。10月にはNHKの特番にマスクを付けて出演。活動の幅を広げ、既に革命へのカウントダウンは始まっている。
ただし、小栁氏は「彼はメジャーになるために活動しているわけではない。歌い手と視聴者で築いてきた『歌ってみた』文化を守ることが使命だと考えている」と言う。実際、前述のメットライフドーム公演は2日間あったが、うち1日は同じく「歌ってみた」で活動してきたそらるや天月–あまつき–などと共演するフェスを主催。2日間での動員数は7万人に上った。
人気の歌い手がそろって同じ舞台に登場。「ネットで根付く文化を守る」という一体感あふれる精神は、東京ドーム公演でも発揮されることだろう。
大事に育ててきたネット独特の文化が、まふまふのライブを通して、ついにそのベールを脱ぐ。20年3月25日、我々は歌い手が起こす革命を目の当たりにする。
単独ドーム公演で3万5000人を動員
19年6月22日、埼玉県のメットライフドームで、「ひきこもりでもLIVEがしたい!~すーぱーまふまふわーるど2019@メットライフドーム~」を開催。翌日にはまふまふに加え、「歌ってみた」で活躍する天月-あまつき-や浦島坂田船らが出演したフェスを主催し、単独公演と合わせ2日間で7万人を動員した。
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