<ざっくり言うと>
  • 講演会を「ガソリンを撒く」と脅迫されて中止させられた竹田恒泰。脅迫と全く関係なく竹田を批判していた人たち相手に訴訟を起こしてしまう。
  • 竹田は「名誉毀損ツイートのせいで脅迫が起きた」と妄想している模様。
  • 竹田は、東名高速や常磐道の煽り運転などで起きたのと同じく、自分がデマによる中傷の被害者だと思い込んでいるものと思われる。
  • 名誉毀損の成立には「意見ないし論評としての域を逸脱していること」が必要になる。
  • 竹田が勝訴できる要素が思い浮かばないが、もしも本当に裁判が行われた場合、愛国カルト問題を考えるうえで、非常に興味深いものとなることだろう。
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目次

竹田恒泰の講演会が脅迫で中止に。これだけなら竹田は被害者だったが…?


「桜を見る会」やプレミア12のせいで、すこし取り上げるのが遅くなってしまいましたが、11月13日に富山県朝日町の中学高校の授業で行われる予定だった竹田恒泰の講演会が、「ガソリンを撒く」という脅迫で中止になりました。


(より正確に言うと、抗議が殺到して11月7日に生徒の聴講が中止となり、10日に「中止にしないとガソリンを撒く」という脅迫電話によって、講演会そのものが中止となった(参照))



竹田恒泰の講演会を生徒強制参観の授業で行うという神経には驚愕させられますが、もちろん暴力的な手段を持って中止させてはいけません。これは表現の自由以前に犯罪です。脅迫主の電話番号の記録などが残っていれば、すぐに捕まることでしょう。


さて、この「ガソリンを撒く」という脅迫、ほぼ間違いなく、あいちトリエンナーレで行われた脅迫(今年8月2日)を模倣しているのでしょう。さらに言えば、この脅迫も、京都アニメーション放火事件(今年7月18日)を模したものでしょう。


しかし、竹田恒泰くんは、ひと味違いました。なんと竹田くん、自分を批判していた関係ない人のせいにして、訴訟まで宣言してしまいました。それも2人も!(どうやらさらなる提訴も考えているそうだ)



Case1: chocolat.氏


まず、こちらのchocolat.氏。竹田が数々の差別発言やデマ発言を行い、在特会を擁護しているなどの点を指摘したうえで、このように述べました。

>>「ヘイトスピーチや政治に関するデマ拡散を繰り返している人間の講演会を税金でオーガナイズするな」と言うのは言論の自由であり、行政に意見する権利は誰にでもあります。
>>「ガソリン⛽缶持っていく🔥」脅迫するのはダメ。


普通に読めば、chocolat.氏の発言は、「講演をやめさせようというのは弾圧だ」という指摘に対して、「抗議をすることは弾圧ではない。脅迫は駄目だ」という反論をしたというだけのことですよね。「ガソリン缶」という発言も、あいちトリエンナーレを具体例にとっているだけのことでしょう。


竹田恒泰は、全然違う受け取り方をしたようです。chocolat.氏のツイートの数日後、実際に「ガソリンを持っていく」と言う脅迫が起きたら、なんと「ガソリン缶脅迫」が起きたのを、このchocolat.氏のせいにしたのです!

>>貴殿が述べた通り、本当に「ガソリンを撒く」と脅迫する人が現れましたね。
>>ダメと言いながら、結果的には犯罪を誘発した可能性があります。
>>普通、講演会を中止させるのに「ガソリン」は思いつきませんから。
>>貴殿が煽動した結果と思う人も多いでしょう。



ええええ~~~~…。わけわからん。


「普通、講演会を中止させるのに『ガソリン』は思いつかない」って竹田は言っていますが、ついこの間、「ガソリンを持っていく」っていう脅迫であいちトリエンナーレの『表現の不自由展』が中止になったばかりだから、 数か月前の記憶がある人なら、誰でも思いつくよ!! 『博士の愛した数式』の博士みたいな人ならともかく。


竹田は、chocolat.氏のツイートのせいで損害が生じたため、損害賠償の訴訟を起こすと言い出しました。 「貴殿は私の訴訟に耐えられるかな?」って、これ、スラップ訴訟(提訴することによって被告を恫喝することを目的とした訴訟)だって自分で認めてるも同じですよね…。


さらに、竹田はこう続けます。

犯罪教唆→損害賠償→名誉毀損と、訴えがコロコロ変わっているあたりも、理由は何でもいいから裁判を起こして相手を疲弊させることが目的のスラップ訴訟だと思えてなりません。


「ド極右デマ野郎」「ビジネス右翼」「レイシスト」「デマ煽動家」と言われたのは名誉毀損と主張する竹田恒泰。果たしてこんな主張が通るのでしょうか? このことは、後ほど改めて考えましょう。



Case 2: 山崎雅弘氏


文筆家の山崎雅弘氏は、竹田の講演会について、以下のような非難を展開していました。
そうしたら、脅迫が起きた後、なんと竹田はこんなことを言いだしました。
>>朝日町に「ガソリンを撒く」という脅迫がありました。
>>貴殿が煽ったから、このようなことが起きたのではないですか?



いくら何でも言いがかりが酷い……。


詳細は長くなるので省きますが、「差別主義者」「人権侵害常習犯」「自国優越思想」などと批判された竹田は、山崎氏への名誉毀損訴訟を宣言します。
「差別主義者」「人権侵害常習犯」「自国優越思想」と批判することで名誉毀損が成立するのか、そもそも裁判所はこんなの却下するんじゃないかなど、興味深いことになりそうです。



デマ被害者のつもりの竹田恒泰


今回の訴訟について、DAPPIなんざ引用するのは本当に嫌なのですが、竹田はこのように述べているそうです。
わ、わけわかんねえ……!


脅迫が起きたのは事実で、それは明確に犯罪なんですが、「名誉棄損ツイートのせいで脅迫が起きた」って、こいつ、本気でそう思ってるのか……。


なんでこんなわけのわからん発想になっているのか全然わからなかったのですが、「みんなが『竹田は差別主義者だ』という真偽不明の誹謗中傷を繰り返した結果、殺害予告をする人まで現れた」と言っていることから察するに、どうやら竹田は自分をデマの被害者だと思い込んでいるようです。

例えば、東名高速の煽り運転事故や常磐道煽り運転事件で、デマに扇動された人たちが、全く無関係な人たちを脅迫したり嫌がらせをしたりしたことがありました。どうも、竹田恒泰は、自分をこのようなデマ事件の被害者と同じように考えているようです。





しかし、もちろんの事ながら、竹田恒泰はこのようなデマ被害者とは全く異なります。竹田は、「竹田は差別主義者だ」という発言を「真偽不明の誹謗中傷」と言っていますが、東名高速や常磐道のデマとは異なり、これは竹田に対する評価であり、真偽不明とかそんな話じゃありませんね。


なお、竹田は「(差別主義の)常習者というからには最低10件は示して頂きたい」「私の差別発言が10件あったなら私は非を認め謝罪します」と言っているのですが、BUZZAPがたくさん例を挙げてくれておりますので紹介しておきます。





「意見・論評の域を逸脱している」かが争点


東名高速や常磐道の事件のような明白なデマなら名誉毀損もやすやす成立するでしょうが、今回の場合、「みんなが『竹田は差別主義者だ』という真偽不明の誹謗中傷を繰り返した結果、殺害予告をする人まで現れた」なんて竹田の主張が認められることは考えられません。これが成立するなら、前々から慰安婦像を批判していた竹田恒泰も、あいちトリエンナーレの脅迫事件に責任があることになってしまいますね。

そうなると、単純に「レイシスト」「極右」「デマ野郎」「差別主義者」「人権侵害常習犯」「自国優越思想」などの言葉が名誉毀損に当たるかどうかが争点になりそうです。


竹田恒泰は、名誉毀損の民事訴訟を展開するそうですが、民事の場合、名誉毀損が成立するには、「人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱していること」という要件が必要になります。逆に言えば、「意見ないし、論評としての域を逸脱」していなければ、名誉毀損は成立しません。





さて、どうなると、「意見ないし論評の域を逸脱」したことになるのでしょうか? 以前、稲田朋美の夫が『週刊新潮』に「世間を知らない弁護士バカ以外の何物でもない」と書かれて名誉棄損裁判を起こしたのですが、「表現は不適切というべきだが、論評の域を逸脱しない」と判断されて敗訴しています。



なので、裁判になったとしても、竹田の過去の発言から、「ド極右デマ野郎」「ビジネス右翼」「レイシスト」「デマ扇動家」などと判断するに足る根拠を示すことができれば、「論評の域を出ない」と認められるのではないかと思います。そして、そのような根拠を示すことは、非常に容易なことでしょう。



こんなことに付き合わされるchocolat.氏や山崎氏には気の毒でありますが、反ネトウヨ運動にとって、非常に注目すべきものになりそうです。

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