全6480文字

 このほか、首相や官房長官の説明を時系列に沿って検討してみると、矛盾点はいくらでも出てくる。

 たとえば、安倍首相は、当初、ぶら下がり会見の中において、5000円という会費が、参加者の大多数がホテルの宿泊者という事情などを総合的に勘案し、ホテル側が設定した価格だと主張していた。

 しかしながら、その後の調べで、参加者の中にニューオータニとは別のホテルに宿泊した人々がたくさんいることが発覚すると、それについては、「ホテル側の手違い」という言い方で説明している。

 正直な話、ここしばらくの首相とその周辺の人々の弁解は、あまりにもバカバカしくて聞いていられない。

 私が心底から驚愕しているのは、ひとつひとつの発言の真偽とは別に、今回の一連の出来事に関する首相の発言が、一から十までウソだらけである点なのだが、さらに深刻なのは、首相という立場にある人間が、あからさまなウソをつき続けている事態に、人々が驚かなくなってしまっている点だ。

 ほんの小さなウソであっても、公の場でウソをついた人間は絶対に信用しないというのが、ほんの少し前までの、この国の国民的な常識だった。

 それが、震災からこっち、すっかり骨抜きになっている。

 われわれは、小さなウソを容認しはじめている。のみならず、バレない効果的なウソについては、どうやらそれらを歓迎しはじめてさえいる。

 私たちは、あきらかにどうかしている。

 ひとつひとつのウソによる個々の被害や、個別のウソの悪質さが問題なのではない。

 真におそろしいのは、人前でウソをつき得る人間をリーダーとして頂くことの危険性なのだ。

 一度ウソをついた人間は、何度でもウソをつく。このことを忘れてはならない。

 5000円は、人それぞれの経済状態にもよるが、多くの国民にとって、些細な金額だ。

 仮に、いまここで自分の財布の中から5000円が消えたのだとして、私は、3日もすれば立ち直れるだろう。いや、1週間ぐらいはかかるかもしれないが、それでも、5000円で人生が台無しになるわけではない。

 ただ、5000円の出入りについてウソを言った人間は、5兆円の収支についてもウソを言うはずだ。

 そういう人間が国庫を握るようなことになったら、国民は100兆円のごまかしや私物化に直面することになる。

 すでに直面しているのかもしれない。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

小田嶋隆×岡康道×清野由美のゆるっと鼎談
「人生の諸問題」、ついに弊社から初の書籍化です!

 「最近も、『よっ、若手』って言われたんだけど、俺、もう60なんだよね……」
 「人間ってさ、50歳を超えたらもう、『半分うつ』だと思った方がいいんだよ」

 「令和」の時代に、「昭和」生まれのおじさんたちがなんとなく抱える「置き去り」感。キャリアを重ね、成功も失敗もしてきた自分の大切な人生が、「実はたいしたことがなかった」と思えたり、「将来になにか支えが欲しい」と、痛切に思う。

 でも、焦ってはいけません。
 不安の正体は何なのか、それを知ることが先決です。
 それには、気心の知れた友人と対話することが一番。

 「ア・ピース・オブ・警句」連載中の人気コラムニスト、小田嶋隆。電通を飛び出して広告クリエイティブ企画会社「TUGBOAT(タグボート)」を作ったクリエイティブディレクター、岡康道。二人は高校の同級生です。

 同じ時代を過ごし、人生にとって最も苦しい「五十路」を越えてきた人生の達人二人と、切れ者女子ジャーナリスト、清野由美による愛のツッコミ。三人の会話は、懐かしのテレビ番組や音楽、学生時代のおバカな思い出などを切り口に、いつの間にか人生の諸問題の深淵に迫ります。絵本『築地市場』で第63回産経児童出版文化賞大賞を受賞した、モリナガ・ヨウ氏のイラストも楽しい。

 眠れない夜に。
 めんどうな本を読みたくない時に。
 なんとなく人寂しさを感じた時に。

 この本をどこからでも開いてください。自分も4人目の参加者としてクスクス笑ううちに「五十代をしなやかに乗り越えて、六十代を迎える」コツが、問わず語りに見えてきます。

 あなたと越えたい、五十路越え。
 五十路真っ最中の担当編集Yが自信を持ってお送りいたします。