文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

リングドクター・富家孝の「死を想え」

コラム

「医師を呼んで!」と訴えた患者 放置され死亡…京大が犯した3つの「開いた口がふさがらない」重大ミス

記者会見で頭を下げる宮本享病院長(中央)ら(19日、京都市左京区の京都大病院で)

 11月19日、京都大学医学部付属病院が発表し、メディアで大きく報道された多重ミスによる患者死亡が大きな波紋を呼んでいます。外部委員も入れて調査した結果、これは発表せざるをえないとなって発表されたものと思いますが、あまりの 杜撰(ずさん) さに開いた口が塞がりません。

 私は、京大病院が発表した書面を何度も読み返しましたが、これでは、亡くなった患者さんは本当に浮かばれません。

「医師を呼んで」の声むなしく、放置

 医療は人間が行うので、医療現場にミスはつきものです。ミスはあってはいけませんが、問題はミスをしたら、それにいち早く気づき、適正な措置が取れるかどうかです。こちらも重大なのですが、今回は全くそれが見られませんでした。しかも、患者さんは「医師を呼んでほしい」と何度も訴えたというのに放っておかれたのです。

誤った点滴が第1のミス

 亡くなられた患者さんは、心不全と腎臓機能の低下で入院中の男性です。造影剤を使ったCT(コンピューター断層撮影)検査の際の点滴で、本来使うべき炭酸水素ナトリウムの6.7倍の濃度の薬剤を投与されたのです。この患者さんは、直後から痛みやしびれなどを訴えたのに、投与はそのまま続けられました。

 これが最初のミスです。このような医療過誤は何度も起きています。ですので、ここで検査医と看護師は気づくべきでした。しかし、チェックはされず、検査後は造影剤によるアレルギーと考えて、投与が続けられたのです。

異常があったのに投与を継続

 しかも投与は3時間も続きました。本来なら1時間で終えるべきところなのに、担当医師は全量投与を指示しています。これが、第2のミスです。驚くべきことに、この病棟では炭酸水素ナトリウムを使用した経験がなかったというのです。

 こうして、患者さんは病棟のトイレで倒れ、心停止となりました。そのため、慌てて駆けつけた医師らによって心臓マッサージが行われましたが、このとき、口から大量出血しました。これは、患者さんが、血液が固まるのを抑える抗凝固薬を服用していたからです。このことを医師たちは知らず、集中治療室に移し、開胸手術まで行っています。 これが、第3の致命的ミスです。

 これほどミスが重なり、また、患者さんの訴えを無視した例を私は知りません。

1 / 2

fuke-takashi-prof200_v2

富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。

リングドクター・富家孝の「死を想え」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事

ピックアップ記事