定年までに会社は消える。就活の時点で「次の次に行く会社」を考えよ(トイアンナ)

会社の平均寿命は約24年。1社目でしか通用しない人材として育ち、路頭に迷ってしまわないための生存戦略は、「就活」の時点から始まっている。

定年までに会社は消える。就活の時点で「次の次に行く会社」を考えよ(トイアンナ)のイメージ

目次

  1. 1大手企業で出世コースに乗るも、部署異動で実家暮らしに戻った男性
  2. 25年前の安定企業は、今の危ない会社
  3. 3安定を求めて動く学生の三極化
  4. 4頑張る就活生の一人勝ちが予想される
  5. 5今後、不景気が来ても勝てる人材を目指して

もし、あなたの寿命が24歳で尽きるとしたら、いかに生きるだろうか。約24年、これは会社の平均寿命である。

 

4年制大学を卒業してから、新卒入社。定年が65歳だとすれば、あなたは43年働く計算になる。先ほどの平均寿命を考えると、一生のうちに2社以上を経験する可能性が高い。2社以上経験できればいい。

 

問題は、1社目でしか通用しない人材として育ってしまい、路頭に迷うことだ。

大手企業で出世コースに乗るも、部署異動で実家暮らしに戻った男性

出世コースリタイア

ある日系大手企業に、かつて勤めていた人がいる。彼は出世を重ね、妻と子にも恵まれた。妻はこれからの出世コースを踏まえ、子どもを私立へ通わせた。

 

彼自身も、25年ローンでマンションを買った。25年ローンでも、周囲に比べたら返済期間は短いほうだ。30歳でマンションを購入したから、55歳には返済が終わる。親が頭金を出してくれたおかげで、返済額を減らした「堅実な家庭」のはずだった。

 

ところが、35歳のときに彼は大病を患ってしまった。一命はとりとめたものの障害が残り、前線では働けなくなった。そこで企業は彼をバックオフィスの、それも残業がない部署へ異動させた。

 

残業代でカバーできていた年収は一気に減り、ローンの返済もおぼつかなくなった。子どもの進学を優先するために、マンションを売却。地価が上昇している時期と重なり、なんとか売り抜けられた。今は都内の実家に身を寄せ、障害の残る体を酷使しつつも働いている。

大企業に働く人はわずか3割弱

彼は幸運なほうだ。大手企業だから、前線で働けなくなっても異動できた。地価が上がっている時期とマンション売却が重なり、ローンを完済できた。実家暮らしは妻にとってつらいだろうが、勤務先と同じ地域にあったおかげで新たに賃貸をせずに済んでいる。

 

しかし、日本で大手企業に勤める人はわずか3割弱[*1] 。ほとんどの会社は中小企業で、障害を負ったり、ハンデを背負ったりした人を養う余裕がない。地価が下がっていれば、マンションを売却してなお借金が残ることもある。35年ローンもざらにある中で、親の頭金で難を逃れられた。こういった幸運に恵まれる人はまれで、返済に追われながら「自己破産、生活保護」といった選択を視野に入れる人も出てくる。

人口が減っても多いままの自己破産・生活保護

自己破産の申し立て件数は、2018年で73,084[*2] 件。実はこの数年、増加傾向だ。自己破産というと、あたかもお金にルーズな人が、勝手に落ちぶれたイメージを持つかもしれない。しかし、その中には普通のサラリーマンや主婦が家計に追われ、やむにやまれず破産する事例も多数ある。そして、それは明日のあなたかもしれない。

 

生活保護の受給者数も、2011年から200万人を超え続けている[*3] 日本の人口は減り続けているのに、生活保護の受給者は今も微減にとどまっている。200万人といえば、愛知県名古屋市や北海道札幌市の人口と同規模の水準だ。

5年前の安定企業は、今の危ない会社

大企業の5年後

そして、今年安定している会社が、わずか5年後に「倒産か、買収されるか」といった話題に上ることもある。東芝はその例だ。私は2012年に大学を卒業した。当時はリーマン・ショックで不景気に襲われ、学生はとにかく安定したいからと日系メーカーやインフラ業界へ殺到した。

 

そこで大人気だったのが「東芝」である。2012卒の学生就活ランキングを見ると、東芝は理系人気4位に[*4] ランクイン。文系男子も61位に選んでいる。ところがその後わずか5年で、東芝は倒産候補の企業として有名[*5] になってしまった。

 

今、安定しているように見える企業が5年後に存続しているかは分からない。22歳で大人気の企業へ就職したとしても、27歳のころには「えっ、そこに勤めてるの……? 大変そうだね」と、周りから言われてしまうかもしれないのである。

安定を求めて動く学生の三極化

就活生の三極化

現状を鑑みるに、今年の就活生はここまでの状況をよく理解しているようだ。すでに「1社で勤めても安泰はない」と理解した2021卒学生の行動パターンは、三極化している。

1:安定した会社より「安定したスキル」を求めコンサルを目指す学生

安定して40年働ける会社はないかもしれないが、安定して40年働くスキルはあるはずだ。そう考えて、基礎能力を伸ばせるコンサルティングファームを選ぶ学生[*6] たちが増えた。

 

一部コンサルティングファームには学歴フィルター(学歴による足切り)もあるため、全学生を対象とした調査では出てこない[*7] 。だが、トップ就活生はこの数年、コンサルティングファームへ熱狂している。

2:パラレルキャリア(複業)に関心を持つ学生

1つの勤め先では安定できない、では複数の勤め先を持とう。そうやってパラレルキャリア(複業)に関心を持つ学生が出てきた[*8] 

 

これは、2017年ごろまでほとんど見られなかった傾向だ。パラレルキャリアを模索する就活生は、副業可の企業を中心に就職活動を行う。そのため、就労形態が柔軟なベンチャー企業を志向する方も多い。また、学生時代から独立できるスキルを積もうと努力する方も増えた。

 

授業と関係なくプログラミングやマーケティング等の技術を積もうと努力するため、入社時には何らかのスキル持ちとなっている。最終的にパラレルキャリアを歩むかどうかはさておき、独立してもやっていける人材になりやすい。

3:超受け身型の学生

最後に、大多数を占めるのが「超受け身」の学生だ。生活保護の受給者数が200万人をこえようが、増税で実質所得が減る一方だろうが、学生の目の前に見えるのは売り手市場である。不景気には50社エントリーも当たり前だった就活が、今や20社前後のエントリーでも内定できる。人材不足にあえぎ、学歴差別を撤廃する企業も出てきた。

 

「適当に就活しても内定できるのに、わざわざ努力するって、どんだけ意識高いの?」というのも、学生のホンネだろう。大きな特徴は「自分から情報を探さない」こと。2020卒までの学生は、SNSなどで匿名の「就活専用アカウント」を作り、就活情報を探すのが特徴だった。それでも売り手市場なことがあり、OBG(卒業生)訪問をする学生は減っているなど、受け身な姿勢は採用担当者から嘆かれてきた。

 

しかし2021卒の学生にヒアリングをすると、今年はSNSでも情報収集をしない学生が増えている。そんなことをしなくても、企業から就活イベントの案内が届くからだ。「4年生/院2年の3月ごろに、就活サイトへ登録すれば何とかなるっしょ」と考えている、超・受け身の学生が増えている。

頑張る就活生の一人勝ちが予想される

頑張る就活生の一人勝ち

これらのトレンドを踏まえると、2021卒は「早期に頑張る学生の一人勝ち」就活となるだろう。大多数がダレている状態なら、少し頑張るだけでもずば抜けて見える。ある大手企業の、採用担当者は語る。

――不景気のときは、みんな突出したエピソードを積んできます。体育会で理不尽さに耐えたり、海外で就労経験を積んだり、厳しいインターンを勝ち抜いた実績を持つ学生が多くいました。しかし、今はそこまでしなくても内定できる。
 

――だからこそ「何かがある」学生は強いですね。学歴での足切りが減ってきていると思いますし、突出した経験で勝負するにはいい時期だと感じてます。


特に、経団連の就活協定がなくなった今、早期就活は圧倒的有利となる。ライバル就活生と差をつけるためにも、チームワークで成果を出した経験を2~3個持っておくとよい。

今後、不景気が来ても勝てる人材を目指して

不景気で勝てる人材

冒頭の話題に戻ろう。就活という短期決戦では、今年努力をしなくてもいいかもしれない。だが、今後不景気がきたとき、ぬるま湯で育った会社員は路頭に迷うリスクがある

 

筆者にはまだ、「突出したスキルで生き抜く」ことと「パラレルキャリアでリスクを分散する」方法のいずれが正解かは分からない。

 

だが、楽に内定できる会社を選ぶだけならば、そこが傾いたとき、一緒に沈没するだろう。これは決して「エリート大学生」の話だけではない。大企業は中小企業に仕事を発注し、業界の売上をけん引している。大企業が倒れるとき、中小企業も危機を迎えるのだ。

 

就活は、会社員になる前の予行演習だ。就活には非効率的な応募用紙や、意味のわからない面接、筆記試験もある。途中でバカバカしいと感じるかもしれない。

 

だが、業種や職種を限定せず会社を選べるのは、これが人生で最後と思っていい。転職で業種や職種を変えると、大幅な年収ダウンとなりうる。だから、ほとんどの人は最初に就いた業界や職種の範囲内で転職するからだ。

 

いまこそ、新卒就職した後の「2社目」も見据えた就活をしよう。あなたは30年後、どこで勤めているだろうか。あるいは、勤め続けていられるだろうか。それを決めるのは、これから数か月の努力しだいだ。

この記事を書いた人

この記事を書いた人:トイアンナ

トイアンナ
外資系企業に数年務め、のちにライターとして独立。最高月間50万PVを記録したブログ『トイアンナのぐだぐだ』や、その他10以上の媒体で連載中。6月に新著『恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか?』を発売。女性のキャリアや生き方やを主なテーマとして執筆活動を展開している。

トイアンナ (@10anj10) | Twitter
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