サラリーマン、プリキュアを語る:娘に「実はわたし、プリキュアなの」と言われたとき 親はどう振る舞うべきか? (2/2)
「実は、わたしプリキュアなの」
1:積極的傾聴
(ここでは告白してきたのが「娘」だとします)
「実はわたし、プリキュアなの」という娘の告白に対し、まずするべきことは「受容」と「共感」です。
「そんな訳あるか。それよりも勉強しなさい」
「プリキュア? よく分からないけど、とにかく頑張りなよ」
などと言ってはいけません。まずは、娘の立場になって娘に共感することから始まります。
「そうか。君はプリキュアだったのだね」
このときに重要なのは、自分の意見は絶対に挟まないことです。「プリキュア? いい年して何を言っている」と言ってはいけませんし、逆に「プリキュア! すごい! 俺の娘はプリキュアだ! 変身して!」もダメです。それは主観です。ただただ、娘に共感することが重要です。
娘はプリキュアなのか? だとすればプリキュア活動の何に悩み、何を考え、何をしたいのか? そもそもプリキュアとは何なのか? ひたすらに共感し、受け入れることです。
「そうか。君はプリキュアだったのだね」
娘がプリキュアだと知ったときのファーストステップは受容と共感。受け入れることなのです。娘としっかりと向き合いましょう。
2:繰り返し
次のステップは「繰り返し」です。
娘の言っていることをこちらから繰り返し言語化していきます。相手の話をよく聞き、こちらで再解釈して「言葉」で伝えます。
「プリキュア活動をしていると、楽しいのだね」
「プリキュアになると、不思議な力で強くなって、うれしいのだね」
「プリキュアになって、フワを守りたいのだね」
相手の言っていることをこちらから要約し言語化することにより、娘が「自分の言っていることをきちんと聞いてもらえている」と感じるようになります。
3:明確化
3つ目は「明確化」。娘があなたに「プリキュアであること」を告白してくる、ということはつまり何かに悩んでいるということです。プリキュアをやめたいのか、プリキュアを続ける上で障害があるのかなど、繰り返しの質問をしながら、その問題点、障害を明確化していきます。
「つまり、プリキュアと学業が両立できなくて、つらいのだね?」
「つまり、プリキュア活動を親に隠さないといけなかったのが、苦しかったのだね?」
「つまり、プリキュア活動と家の格式のためのお稽古と生徒会長の仕事と勉強が重なり、毎日が綱わたり生活で、つらかったのですね?」
相手の問題点を要約し、聞き返すことで問題点を明確化していきます。このときも決して自分の価値観を入れてはいけません。
「プリキュアと学業を両立するなんで無理に決まっている」。と思っていても言ってはいけません。
相手の気持ちを「つまり、〇〇〇だね?」と要約して質問し、確認していくのです。娘に「そうなの。それはね、〇〇〇だからなの」と対話が続くようにしていきます。
また、相手の感情表現(つらい、苦しい、イヤになるなど)はこちらから言ってあげた方が効果的のようです。
分からないことがあれば、「具体的な質問」で相手に寄り添いながら明確化していきます。上辺だけで分かったふりをするのではなく、自分も問題が納得できるようにしていきましょう。
この、「共感→積極的傾聴→繰り返し、明確化」。つまりは、「うんうん、それで? なるほど、つまり***なんだね」を重ねていき、モヤモヤとしていた悩みの本質を明確な形にしていきましょう。
4:支持
問題点が整理できたところで、「客観的に納得できること」を見つけ、支持します。
「プリキュアだということを告白してくれてありがとう」
「プリキュア活動と勉強を両立させたいと考えること、すごく良いことだ」
「プリキュアになってフワを守ること、すごく立派だよね」
ここでも批判はせずに、肯定し相手を認めます。ついつい自分の意見や主観を入れたくなってしまいますが、ここでもグっと我慢です。
5:質問
次に「質問」です。ここでも重要なのは「こちらからのアドバイスを教える」ではなく、「相手に考えさせ、気付かせること」です。「教えてやろう」「導いてやろう」ではうまくいきません。
「それで、君はどうしたいのだい?」
「プリキュア活動と勉学を両立するには、どうすればよいと思う?」
「女子中学生が、宇宙の平和を守るにはどうすれば良いと思う?」
自分で問題解決しようとしてはいけません。アドバイスもいけません。娘に考えさせ、気付かせるのです。言いたいことはたくさんあるかもしれません。ですが、ここはグっとこらえて、娘に考えてもらうのです。
「問題を解決するために、どうしたいの?」を聞き出し、気付いてもらうのです。
質問によっては、相手は沈黙してしまうかもしれません。その場合、沈黙は基本的に保持(ずっと待っている)が良いようです。答えられないからといって、答えを促してはいけません。
「はやく答えなさい」
「こういうことですか? “はい”か“いいえ”で答えて」
はダメです。
どうしても答えにくい質問の場合には、質問を変えて答えさせるのが良いようです。とにかく、こちらから解決方法を提示するのではなく、娘に問題を気付かせることが重要です。
6:情報提供
相手から解決方法が提示されたら、親がサポートする意思のあることを伝えます。
「それは良いアイデアだ! それを実現するためにこんな方法もあるよ」
「そのアイデアを実現するために、お父さんにやってもらいたいことはあるかい?」
ただし、あなたは子の親なので、例えば「心身に危険を伴うこと」「法を犯すこと」などが解決方法に絡んでくる場合には、事前に防ぐのも親の役割です。「ここをこう行きなさい」と一本の道を教えるのではなく、広く長い道幅の道に崖から落ちないようにガードレールを設置する感覚ですね。
この「4:支持」「5:質問」「6:情報提供」は状況に応じて順番を変えても良いものと思われます。このルーチンも繰り返し行い、問題をクリアにしていきます。
これであなたの娘は、プリキュア活動の真の問題点に気付き、自ら考えた方法で問題解決の道を探っていけることと思われます。
7:エンディング
さて、これまでの流れで、あなたの娘がプリキュアであることについての問題点はクリアとなりました。問題は解決しないまでも、進んでいく方向性は定まったものと思われます。
この先は明確なビジョンの下、お互い共通の価値観で生活できるものと思われます。
もちろん娘がプリキュアであることは想像以上の困難があると思います。そのたびに「受容と共感」を思い出し、娘さん、息子さんをサポートしてあげてください。どんな困難にあったとしても、プリキュアは絶対に諦めないのです。プリキュアの親であるあなたも、決して諦めない気持ちを忘れないでください。
また、プリキュアの親になると、たまに敵に拉致されたり、怪物と戦うことになる可能性も否定できませんが、そこはなんとか、頑張って!
来るべき日のために
……というのが、内閣府、厚生労働省が示す1つの問題解決のプロセスのようです。子どもがプリキュアだったときの対処法まで分かるとは、国の機関も侮れませんね。
「積極的傾聴法」に関しては、厚生労働省のWebサイト「こころの耳」の他、J-STAGEにて学術論文も発表されていますし、文献も豊富にあります。ぜひ参考にしてください。
これで、いつあなたの娘、息子が「実は、わたしプリキュアなんだ」と言ってきても大丈夫ですね。
もし、あなたの娘や息子が、プリキュアであることに悩んでいるときは、ぜひこの「積極的傾聴法」を活用し、娘、息子さんの立派なプリキュアライフをサポートしてあげてください。
僕は、これを書いたのでもう準備は完璧です。いつ自分の娘が「実はわたし、プリキュアなの」と言ってきても大丈夫です! さあ、娘よ、早く!
「スター☆トゥインクルプリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
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