2019年11月21日 / 07:30 / 9時間前更新

コラム:ユーチューブ、親会社アルファベットから離脱のとき

[サンフランシスコ 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 動画投稿サイトのユーチューブは企業価値9000億ドルの親会社アルファベット(GOOGL.O)から独立するのがふさわしい。

 11月15日、動画投稿サイトのユーチューブは企業価値9000億ドルの親会社アルファベットから独立するのがふさわしい。写真はインドネシアのジャカルタで開かれたファンイベント。2016年10月23日撮影(2019年 ロイター/Beawiharta)

分離が説得力を持つ理由は3つある。バリュエーションを高める必要性、強まりつつある規制当局の調査にうまく対応できること、そして、アルファベット傘下事業の分離が実態として一部で既に進んでいることだ。

現時点でユーチューブはアルファベット傘下のグーグルの一部門。月間のアクティブユーザーは20億人に上る。グーグル傘下にはほかに、クラウドコンピューティングのグーグルクラウドや基本ソフト(OS)のアンドロイド、地図サービスのマップス、インターネット検索のサーチ、アプリストアのプレイがある。親会社アルファベットのグループの中には、スマートホームのネストや自動運転車のウェイモも含まれている。

こうした複雑な構成は評価上のコストを伴う。アルファベットは時価総額を2018年の年間売上高1370億ドルで割った「株価売上高倍率」が、ネットキャッシュを差し引くと、6倍弱となる。これはツイッター(TWTR.N)とほぼ同じ水準だ。

だた、ユーチューブは事業形態が動画配信サービスのネットフリックス(NFLX.O)に近い。ネットフリックスはこの倍率が9倍近くとなっている。これに沿って考えると、ユーチューブの年間売上高をRBCキャピタル・マーケッツの推計に従って約200億ドルとした場合、同社の企業価値はおよそ1800億ドルになる。

アルファベット傘下の有力事業は、ワシントンでの政治的な動きからも互いに足を引っ張り合う恐れがある。グーグルはインターネット検索などの分野で支配的な地位にあることで、反トラスト法(独占禁止法)違反を巡り厳しい調査にさらされている。

一方、ユーチューブが問題にされているのはコンテンツ。子どもが絡む、あるいは子ども向けの動画などだ。9月には子どものプライバシー保護法に違反した疑いで1億7000万ドルの罰金を科された。ヘイトスピーチ拡散の経路になっているとして謝罪も強いられている。

これらの問題とは別に(別であってほしいところだが)、アルファベットには運営に当たって大きくなり過ぎ、機能不全と見なされるリスクがある。ユーチューブを分離すれば、米司法省や米連邦取引委員会(FTC)、あるいは来年の米大統領選で民主党の候補指名を目指すウォーレン上院議員からの厳しい措置を未然に防げるかもしれない。司法省とFTCはいずれもグーグルに対する調査を進めているし、ウォーレン氏は巨大IT企業の分割が公約だ。

分離は単に望ましいだけでなく、実際に可能でもある。アルファベットはかつて、フェイスブック(FB.O)と違い、自分たちは自立した事業の集合体だとの見解を表明していた。フェイスブックは傘下の写真共有アプリのインスタグラムやメッセージングサービスのワッツアップをさらに一体化しようとしている。

ユーチューブには独自のCEOであるスーザン・ウォシッキー氏がいて、独自の拠点がカリフォルニア州サンブルーノにあり、ユーチューブだけで強力無比のブランドを構築している。こうしたすべてが、ユーチューブの「クリッピング」(切り取り)を始めるうえで十分な根拠になる。

●背景となるニュース

*米厚生省(HHS)はアルファベット傘下のグーグルと医療サービス会社アセンションによるクラウドコンピューティングの提携について、調査に入っている。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が11月12日に伝えた。

*グーグル傘下のユーチューブはサービスの条件を12月10日に改定すると発表した。分かりやすさと透明性を高める狙いという。この改定は、ユーチューブが子どものプライバシー保護法に違反した疑いを巡り1億7000万ドルの支払いで米連邦取引委員会(FTC)と和解していることに関連している。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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