中国人民元とは | レート、キャッシュレス決済についても解説

世界第1位の約13億人の人口が暮らす中国人の影響力は、世界的にもインバウンドの観点から見ても大きい存在です。

この記事では、中国の人民元やその歴史について触れ、訪日客数トップである中国のインバウンド状況や、今後訪日中国人を誘致する上でポイントとなる内容について解説します。


中華人民共和国の通貨、通称「人民幣」

中国の通貨単位は「元」ですが、現地では通称「人民幣」と表記され、中国の中央銀行である中国人民銀行で発行されています。

ここでは、人民元の基本的な情報や歴史について紹介し、最近の人民元安についても解説します。

基本情報

まずは人民元の基本情報を見ていきましょう。

  • 中国で使用されている通貨の基本単位は「元」(人民元/Renminyuan)です。
  • 1元=約15円(2019年10月時点)です。
  • 流通している紙幣は1元、10元、20元、100元で1元は硬貨もあります。
  • 外国為替では管理変動相場制が採用されています。 

地域貨幣に代わる管理通貨として創設された

人民元は、中国建国の少し前である1948年に、複数あった地域貨幣の代わりに管理通貨として発行されました。

当時の中国は社会主義を目指しており、外国取引は限定的で、外貨取引は政府の管理下にありました。

時代の流れとともに、自国の通貨を市場の需給に合わせてレートを決定する変動相場制度への移行を迫られ、現在は管理変動相場制が採用されています。

それでも中央銀行である中国人民銀行が中国元のレートを強く管理し、値動きが決定されるなど、レートの揺れ幅はいまだ限定的であるといえます。

ドル高・人民元安

2000年代より輸出主導で成長を遂げてきた中国ですが、ここ最近は経済成長が減速傾向にあり、先行きも不透明な状況です。

中国政府は、公共事業などに投資することで国内企業を強化し、高成長を遂げてきました。

しかし近年は、公共事業にも不採算案件が増え、かつての「世界の工場」としての地位も低下してきています。

香港での反政府デモや、中国内の民族問題など、中国共産党への不満は大きくなりつつあり、今後の中国共産党の取り組みがカギを握ることとなるでしょう。

一番多く日本にきている中国人

人民元について見てきましたが、ここからは日本との関係についてインバウンド市場に注目して見ていきます。

近年は訪日外国人旅客数が増加は著しく、中国はその中でも圧倒的な訪日旅客数を記録しています。

そんな訪日客数NO.1の中国人にはどんな特徴があるのか、また中国人に関するインバウンドデータ、そして最近話題の「神薬」について紹介します。

インバウンドデータ

日本政府観光局(JNTO)によると、2018年の訪日中国人数は838万34人で、前年比13.9%の伸び率となりました。

消費総額は1兆5,450億円で、内訳として宿泊費3,100億円、 飲食費2,619億円、 交通費1,094億円、娯楽費521億円、 買い物代8,110億円となっています。

どの部門でも中国人の消費額はすさまじく、特に買い物が占める金額が他国と比べて格段高いといえます。

その背景には中国人の国民性が関係しており、日本土産を購入し現地で配るという行為がメンツを保つために有効であるといった考え方が関係しています。

訪日中国人の特徴

中国人はリピーターよりも、初めて日本に来る人の割合の方が多く、家族や親戚など団体で来日する人たちが多いという特徴があります。

また来日目的は仕事よりも観光やレジャー体験であるという人が大半です。

日本のドラッグストアやコンビニエンスストア、空港の免税店、百貨店、デパートなどで中国人が買い物をしている光景を見ることも多いです。

中国で人気な日本製品といえば、爆買いという言葉が流行した2015年頃は家電などの高価で大型なものがメインでしたが、現在は化粧品や菓子類、医薬品などの比較的安価で小さいものが人気となっています。

「神薬」とは

爆買い」ブームが去った後も、依然として医薬品の人気は高いです。

数多くある医薬品の中でも、神薬と呼ばれる中国人に人気の複数の医薬品があります。

この神薬ですが、注目されるきっかけとなったのが2014年に中国の大手ポータルサイトに掲載された「日本に行ったら買わねばならない12の医薬品」という記事でした。

熱さまシートや龍角散など、日本でも知名度の高いものばかりが12種類「神薬」として紹介されています。

12種類のうち5種類は小林製薬の製品で、わかりやすいイラストの付いたパッケージが中国人にヒットした理由のひとつだと推測できます。

今後も神薬は、注目したい消費動向のひとつといえます。

訪日中国人にはここがポイント!

インバンド誘致について考えるとき、圧倒的訪日客数を誇る中国人への対策は必須といえます。

中国は何事にも政府の介入がなされ、インターネットでもアクセス制限のあるものや、現金の持ち出し、持ち込みについても他国に比べ少額となっています。

そこでこの記事では中国の情報規制や、キャッシュレス決済について、また最近の聖地巡礼による訪日について紹介します。

オンラインコンテンツについて検閲とアクセスの制限がある

訪日客数の多い中国人を誘致するには、旅マエの情報提供が欠かせません。

旅マエとは、訪日前に観光スポットや宿情報を検索する外国人向けのマーケティングのことを言います。

しかし日本のコンテンツを中国版にするだけでは、ネットの閲覧規制の厳しい中国で現地の人に見てもらうことはできません。

例えばGoogleは2010年に中国から撤退しており、現在のシェアは0%となっています。

しかし、たとえ中国国産のサイトやSNSであっても、グレートファイアウォールと呼ばれるネット検閲システムにより中国当局に監視されています。

中国向けのサイトを立ち上げる際は、上記について考慮する必要があります。

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キャッシュレス決済

増税を契機に、日本でもキャッシュレス決済の利用促進を促すムードが漂っていますが、インバウンド政策としてもキャッシュレス決済は効果的です。

実際、中国人は現金よりもAlipayWeChatPayなどのQR決済が定着しています。

その背景には、現金の持ち出しに厳しい中国の体制や電子決済での為替レートに割引がある点が関係しています。 

実際に日本の観光地では、現金不要のキャッシュレス決済をインバウンドの受け入れ強化のために導入するところが増えてきています。

中国人にとってキャッシュレス決済のできる観光スポットには、それだけ需要があり、今後 訪日中国人の消費意欲を増加させる効果があるといえます。

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聖地巡礼

中国人が訪れたい日本のスポットとして注目したいのが、アニメなどで登場する聖地です。

ロケ地を巡る「聖地巡礼」が、インバウンド誘致のさらなる起爆剤になることが期待できます。

例えば、映画「君の名は」で有名になった飛騨市では、観光客数が前年対比で28倍に増加しました。また「千と千尋の神隠し」の中の世界に入り込んだような雰囲気を味わえる、台湾の九份も日本人観光客が訪れたい観光スポットとなっています。

中国では2019年になり初めて「千と千尋の神隠し」が上映され、公開後1週間で3億枚のチケットが売り上げられるなどの絶大な人気があったため、映画のモデルとなった愛媛県の道後温泉などに中国人訪日旅客が今後押し寄せる可能性があります。

日本アニメや映画の舞台となる場所、また現地の有名人などが撮影スポットとして利用した場所などに、中国人が聖地巡礼として訪れることが予測されます。

中国人の通貨事情に注意を

訪日外国人旅客の中でも中国人は、その旅客数のみならず、訪日時の買い物にも多大な金額を使う傾向にあります。

彼らの自国通貨である中国元のレート変動には、現在も中国政府による監視がなされており、自国での消費を促すために現金の持ち出しの制限も厳しい状況です。

そのためキャッシュレス決済の需要が高く、日本での普及がインバウンドにもたらす影響も大きいと予測されます。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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