学会がそれまで信じてきた日蓮正宗の総本山「大石寺」(静岡・富士宮市)の本尊を信仰の対象にするのをやめ、新たな本尊を総本部の「広宣流布大誓堂」(東京・信濃町)に安置したのだ。

 前出の本部中堅幹部はこの狙いについて、「さまざまな文化的背景が混在する海外で、創価学会を普及させるには普遍性が不可欠。がんじがらめの古い考えから脱却するため、教義の近代化を図った」と解説する。

 また、学会本部も「当会の宗教的独自性をより明確にし、世界広布新時代にふさわしいものとするため」との見解を示した。

 教義変更から浮かんでくるのは、「創価学会の世界宗教化」という何とも野心的な「歴史的転換」である。

 突然の本尊の変更に、古参の学会員らから反発が出るなど物議を醸したが、執行部は世界宗教化のためなら、一定数の学会離脱はやむなしと割り切っている節がある。

SGIとの共存で
信濃町が世界聖地になる日は来るのか

 ただ、日本の創価学会が権力を握ったままでの世界布教には不安もある。

 というのも、SGIには国ごとの色があり、例えば、「ドイツは炭鉱労働者、フランスは主婦、英国は雑多な層、東欧は政治的に虐げられた層」(SGI関係者)といった具合に中心層が異なり、それぞれ独自の発展を遂げてきた。

 また、海外で最多の学会員がいる韓国はリーダーシップを取りたがる幹部が多く、手綱を取るのは一筋縄ではいかないだろう。

「信濃町」への権力の一極集中に違和感を覚えるSGI関係者も少なくない中で、強引な改革を強行した場合、新宗教によく見られる「分裂」という不幸な結末を迎えることにもなりかねない。

 企業が海外展開で成功する秘訣の一つに、「現地への権限移譲」がある。もちろん企業と宗教団体ではガバナンスの構造が大きく異なり、一概には言えないが、過度な締め付けをするようでは、学会本部が掲げる「世界広宣流布」(世界に教義を広げること)の実現はおぼつかない。むしろ内部崩壊を加速させるだけだろう。