昨年にはイタリアSGIが、イタリア政府と宗教協約(インテーサ)を結び、現地においてさまざまな特権が認められるようになった。「インドでも昨年だけで青年層が劇的に伸びている」(学会幹部)。学会本部によれば、海外の会員数は約175万人に達する。

 国内の低迷と海外の躍進──。今の学会のジレンマは、2000年以降に頭打ちの国内に見切りをつけ、海外進出を加速させてきた日本企業のそれと重なる。

 こうした日本企業には、進出先の国々で幾つもの壁が立ちはだかった。その一つが意識の差などからくる本部と現地との摩擦だ。

 現地に派遣された駐在員が現場の意見を無視して、本部の意向ばかりを忖度した結果、海外事業が失敗した企業の事例は枚挙にいとまがない。

 すでに同じことが創価学会インタナショナル(SGI)でも起こっているのかもしれない。

 SGIの事情に詳しい学会関係者は、「欧州のトップに学会本部から派遣された人が就き、和気あいあいとしていた組織を、日本的組織にしようとしている」との見方を示した。

 海外には、日本の学会本部のこうした方針に同調しないSGI幹部もいて、「もし名誉会長がいなくなってしまったら、海外のSGIが暴走して、歯止めが利かなくなるリスクがある。その前に手を打たなければ……」。本部中堅幹部は危機感を募らせている。

突然の教義変更
その真の狙いは学会の「世界宗教化」

 そんな中で、執行部主流派がひそかに進めていたのが、「日蓮世界宗」の立ち上げと、その会則に相当する「会憲」の制定だとされる。

 日蓮世界宗のトップに就くのはもちろん日本の創価学会会長。さらに、会憲によって独立色の強い各国のSGIへの指導力を強める算段だったもようだ。

 それを裏付けるように、学会が「日蓮世界宗」および「日蓮世界宗創価学会」という商標を登録していたことが明らかとなった。

 内部からの反対などもあって結局、日蓮世界宗の旗揚げはまだ実現していないが、ここ数年、その地ならしが着々と進められてきた。

 一昨年には、教義の変更にも踏み切っている。