まるで戦場「香港の大学」でその時何が起きたか

それでも日本人研究者の彼が香港に残る理由

長引く香港でのデモ活動。香港内の大学も、次々とデモ隊の拠点となっている。写真は2019年11月13日デモで火の手が上がった香港中文大学に隣接するMTR駅の様子(写真:Anthony Kwan/Getty Images)

2019年6月の逃亡犯条例に端を発したデモは、普通選挙の実現を求める民主化運動に発展。落としどころがまったく見えないうえに、10月4日に緊急状況規則条例(緊急条例)で制定された「覆面禁止法」(18日に香港高等法院で違憲判決)も過激化に輪をかけた。

さらに11月4日午前、デモに参加していたとみられる香港科技大学のアレックス・チョウ氏が立体駐車場の3階部分から2階へ転落し、意識不明の重体に陥る。チョウ氏は、そのまま8日に病院で息を引き取った。「香港警察が発射した催涙弾を避けようとして転落した」「警察が救急車の進路を妨害したせいで、救助が20分遅れた」などの情報が飛び交い、11日からは抗議活動がいっそう過激化。

帰国を決める留学生

これまでは、抗議活動のほとんどが夜間や祝日、休日に開催されていたが、11日の月曜早朝から香港全土で交通妨害が呼びかけられ、通勤客を直撃した。

さらに同日早朝には、日本人も多く住居を構える西湾河(サイワンホー)で、警察が丸腰のデモ隊とみられる若者に発砲。被弾した際の動画が香港メディアのFacebookページやTwitterで回覧され、デモ隊の怒りに火を注ぐ。香港全土が大混乱に陥った。

香港内の大学も、次々とデモ隊の拠点になっている。11月13日には香港中文大学で警察とデモ隊が激しく衝突し、18日には香港屈指の繁華街、尖沙咀(チムサアチョイ)にある香港理工大学に警官隊が突入し、戦場と化した。中でも香港中文大学は大学内に寮があるため、学生達にとって生活の場そのもの。中文大に通う日本人留学生約50人のうち、大多数が帰国を決めた。

しかし、そんな中で香港に残り、研究を続けようとする若者がいる。同大学院博士課程で移民研究を行い、人類学の講義も受け持つ石井大智(いしい だいち)さん(23)だ。なぜ香港に残るのか。移民研究者として今の香港をどう見ているのか。香港在住の筆者が11月15日、今学期中の休校を決めた大学から避難している最中の石井さんに聞いた。

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  • コロマルd2fc21892dac
    そろそろ、デモ隊も香港政府も落とし所を探さないといけない。
    デモも暴徒化し始めてるし、政府も弾圧が過激になってきてる。このまま進めば、いずれ天安門の二の舞になる可能性が高く、数千・数万規模の死傷者が出る可能性もある。最悪戦争の引き金にもなりかねない。
    普通選挙の実現は多分中国側が認めないから、香港政府のトップ入れ替え位が落とし所ではないだろうか。
    up4
    down2
    2019/11/21 13:25
  • 山田a23adde8b925
    懐かしの東大闘争みたいですよね。日本も昔は火炎瓶投げまくりだったんですよ!
    up1
    down4
    2019/11/21 12:36
  • かず8534b1b475c6
    行き過ぎ、やり過ぎだ。「身柄引き渡しに反対」であったデモ隊が、段々と要求がエスカレートして、とうとう何が目的が分からなくなり、単なる中国政府への怒りをぶつける活動になってしまった。活動の主体は学生だが、そもそも学生の本分を弁えて欲しい。参政権はあるものの、社会で活躍もせず税金も納めていない「ごまめ」の存在でありながら、主張だけは一人前というのも、香港一般市民からすれば違和感を覚える人も少なくないだろう。結果、香港はめちゃくちゃになり廃虚と化している。観光都市、ビジネスの都市の機能が破壊され、復旧までは相当の時間を要するだろう。共産主義であれ民主主義であれ、これは許されるべき行為ではない。学生達はこの弁済をすべきだろう。
    up8
    down57
    2019/11/21 07:31
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