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【経済】

パワハラ防止指針案 「相談窓口」効果不透明

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 厚生労働省の審議会でパワハラ対策の指針最終案がまとまった。だが、ハラスメントを全面禁止する欧州各国や国際労働機関(ILO)の条約に比べ有効性は乏しい。パワハラやセクハラに日々苦しむ人が増える中、安倍政権の取り組みの甘さが浮き彫りになっている。

 今年六月にILO総会で採択された条約では、職場のハラスメントを全面的に法律で禁じるよう求めた。違反した企業や幹部は損害賠償や刑事罰の対象となるため、抑制効果が高い。一方、日本では経団連など経済界の反対を背景にハラスメント行為自体の禁止は見送られた。

 最近明らかになったトヨタ自動車でのパワハラ例は、相談窓口の設置だけでは効果が薄いことを示す。

 二〇一七年にトヨタの男性社員=当時(28)=が自殺したのは、上司が日頃から「バカ、アホ」などと暴言を吐くなどパワハラが原因だったとして労災認定された。自死した男性は、メンタル相談の窓口には相談をしていた。だが遺族側によれば、当時、加害者である上司の具体的な言動を会社として調査した形跡はないという。男性は休職し、復帰後も加害上司に近い場所で仕事をさせられていた。

 担当した立野嘉英弁護士は「相談窓口の設置だけでは不十分。窓口に寄せられる相談がパワハラのストップにつながるよう実効性のある体制の整備・運用が各企業の課題となる」と指摘。日本を代表する企業ですらきちんと対応できない状況に、新村響子弁護士は「やはりハラスメント禁止を急ぐべきだ」と語った。

 救済すべき範囲についても、国際基準ではフリーランスなど幅広い人が対象。パワハラだけでなく、性的少数者(LGBT)への侮辱などあらゆるハラスメントを禁止すべきだとしているのに対して、日本の救済対象は狭く、不十分な内容となっている。 (池尾伸一)

 

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