「心臓と絡繰」にまつわる一部ニュースメディアの報道につきまして。
花譜プロデューサー「PIEDPIPER」インタビュー バーチャルに託す音楽産業への愛憎
彗星の如く現れたVSinger 花譜は「VTuber」なのだろうか?
圧倒的なブランディングと花譜というドキュメンタリーを提示する、プロデューサー「PIEDPIPER」の正体に迫る。
VTuberという領域において、そのタレントやアーティストをプロデュース/サポートする運営の存在は後景へと追いやられる。
フィクションの一形態でもある「バーチャル」を標榜するプロジェクトにあたって、「運営」という極めてリアルな──お金や数字、大人の存在を想起させてしまう組織や個人の存在は、虚構を信じようとする視聴者にとっては、邪魔なものとして映ってしまうからだ。
規模の拡大などにあたって、どうしても運営が表出する場面はあるが、多くのVTuber事務所はできることならその身を隠しながら、影ながらサポートを行っているのが実情だろう。「個人の自由意志で1人で撮影・編集した動画をアップする」というのは生身のYouTuberたちがつくりあげてきた文化だが、勃興期のVTuberたちの多くもその形態をなぞろうとした名残りともいえる。
だが、花譜さんのプロデューサー・PIEDPIPERさんは、その本人の実態こそまだまだ多くの謎に包まれているが、極めて的確で、明晰な言葉で「花譜」という存在に託されたコンセプトを、運営としての意志を述べることでファンから強く支持されている。
何か問題が起きる度に、ファンvs運営という構図に陥りがちなVTuberシーンにおいて、なぜPIEDPIPERさんは花譜さんのファン「観測者」たちの信頼を得ることができたのだろうか。先日発表された「KAMITSUBAKI STUDIO」の全貌と共に、PIEDPIPERという稀代のプロデューサーの思想を紐解いていく。
「PIEDPIPER」と「花譜」の関係
──花譜さんの活動で時折運営から発表される「声明」はすべて、PIEDPIPERさんが書かれているものなのでしょうか?
PIEDPIPER そうです。
──どの文章も明晰かつ、花譜さんやプロジェクトへの愛が伝わる名文だと思っています。PIEDPIPERさんと花譜さんとの具体的な出会いを教えて下さい。ネット上での発掘でしょうか?
PIEDPIPER ある音楽アプリを通じ、偶然発見してしまいました。彼女は歌い手とかですらない、完全なる素人でした。惹かれたところは独自性のある声質ですね。その当時の花譜は正直歌があんまり上手くはなかったんですが、強烈に惹かれるものがありました。上手さよりも「良さ」という感じでしょうか。
──2019年1月30日のTwitterに投稿された文書の中で「複数の諸事情の中で、結果的にバーチャルシンガーという 選択肢に希望を持った」と花譜さんについて言及されています。具体的に、複数の諸事情とは何なのか。なぜ花譜さんはバーチャルシンガーとなったのかを教えていただきたいです。
PIEDPIPER そもそもの相互理解、年齢、学業の問題、住んでいる場所、その他色々──課題は山積みでした。「諸事情」の詳細に関してはこれ以上お答えすることはできませんが、投稿文の中にいま答えられることはほぼ書いています。現状、できないことの課題解決をバーチャルを使って距離を縮めたということです。
──「花譜」という名前はどのような由来で名付けられたのでしょうか?
PIEDPIPER 名前に関しては理由があるのですが、本人のパーソナルな部分に深く関わるので詳しくお答えすることができません。ただ、本人と一緒に決めました。
──先日の放送で新たなバーチャルシンガーたちが発表されました。「理芽」さんはどのような経緯から誕生したのでしょうか? 花譜さんとの共通点はありますか? 一部では、花譜と同じ魂を持った別人格なのでは? というコメントも見られました。
PIEDPIPER 理芽は花譜とは本当に全くの別人です。ただ、「歌の魂」というか声の性質という意味では共通するなにかがあるのかな、と思っています。理芽との出会いとしても、花譜とほぼ同じような感じでした。
埋もれてしまっていた才能を活かしたいと考えて、時間をかけてデビューさせました。今思うと理芽は花譜よりも才能を引き出す作業が難しかったですね。理芽は花譜ともまた一味違う才能の持ち主なので、今後の活動にご期待いただければと思います。
VTuberシーンのアジール「KAMITSUBAKI STUDIO」とは何か
──「KAMITSUBAKI STUDIO」は、VTuberシーンのメインストリームと照らし合わせるとかなり特殊な存在に思えます。PIEDPIPERさんは、VTuberシーンをどのように捉えていますか。そして「KAMITSUBAKI STUDIO」はその中でどのような展開を志しているのでしょうか。
PIEDPIPER VTuberシーンが今後どうなっていくのか──正直私もわかりませんが、流行りや思いつきではじめてしまった人たちの多くは淘汰されていくのでは? と思います。VTuberの活動人数自体が、かなり減ってしまうのではないでしょうか。
「KAMITSUBAKI」としては積極的に新しい、面白いことを仕掛けていくことで、VTuberシーンに対してもなんらかの希望をつくれたらいいなと思っています。僕らのやり方を真似してもらっても、それが業界に寄与できるならば全然良いことだと思っています。
ただ僕らはVTuberシーンの中にいる意識も実はあんまり持てていなくて。実際に業界の横の繋がりもあまりありません。あんまり業界の方々が集まる場にも呼ばれませんし(笑)。もちろん、VTuberは好きなんですけどね。どうしても浮いてしまうというか……会ってみたい人とかもいるんですが。僕らの活動の一部分がVTuberシーンと重なってるという感覚の方が近いかもしれません。
──そもそも、PIEDPIPERさんはバーチャルではなく実在する存在なのでしょうか?
PIEDPIPERが「KAMITSUBAKI」に至るまで
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