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ヒヤリ・ハットのセンシングで
叶える「働き方改革」。
未来の工場はどう変わる?

“ヒヤリ・ハットのセンシングで叶える「働き方改革」。未来の工場はどう変わる? ヒヤリ・ハットのセンシングで叶える「働き方改革」。未来の工場はどう変わる?
Introduction
働き方改革が話題となっている昨今ですが、深夜もラインを止めることのできない工場などでは、作業員の労働時間管理や高い人的コストが問題となっており、そこには事故の危険性も含まれています。ディー・クルー・テクノロジーズ(以下、D-CLUE)が現在開発中の見守りセンシングシステム「作業員 見守りシステム」では、工場の天井・壁面に設置したセンサーと、作業員が携帯する端末により、即時に作業員の状況を把握することが可能に。結果、現場に張り付いての管理が不要となり、安全面の強化と人的コストのカットが期待されています。このシステムが生まれた背景、特長、そして今後の展望とは。D-CLUEシステムソリューション開発部部長の土田氏、システムソリューション開発部インテリジェントIoTモジュール開発課課長の齋藤氏にお話を伺いました。

メンバー

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土田 幸宏
(ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社:システムソリューション開発部 部長)
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齋藤 亮
(ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社:システムソリューション開発部インテリジェントIoTモジュール開発課 課長)

「第4次産業革命」で求められる、製造業のあり方と課題とは?

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−−現代はさまざまなテクノロジーの発達により「第4次産業革命」と言われていますが、製造業の現場においてどのような変化が起きているのでしょうか?

土田: 大きくは自動化、オートメーションの流れが起こっています。誰でもできるような単純作業は、機械による自動化が進められると思います。

齋藤: 人間が行うには危険を伴う作業も、同じように自動化されていくと思います。

−−AIも含め、人の仕事が奪われるという話もあります。

土田: いえ、機械による自動化が進むその一方で、人間にしかできない仕事は常にあると思います。特に新しいものを生み出したり改善したりといった仕事は自動化できないだろうと私は考えています。どんな時代も「人の仕事が機械に奪われる」と言われ続け、確かにそういった仕事もありましたが、そのプロセスのどこかには人が携わらないと成り立たない部分があり続けました。今後もそうした仕事は残るのではないでしょうか。

−−そうした変化の過程にある製造業において、現在どのような課題があるのでしょうか?

土田: まず確実に言えるのは、少子高齢化により労働力となる人が減っているということです。それと同時に、高い技術力を持った人間の技術が伝承されず、再現できなくなってきているんです。

−−働き手が減っているというのは、現場の方々としては深刻な問題なのではないでしょうか。

土田: 人手不足はあらゆる分野で起こっている問題だと思いますが、製造業では顕著です。

−−働き手が足りないと1人当たりの作業量が増え、長時間労働や安全性がおろそかになるなどの問題が予想されますが。

土田: 多くの企業や工場では、安全性の観点も含め、同一の場所に複数人で仕事をすることで相互に確認できるような職場環境を義務付けています。しかし、それを実現することができなくなり、1人で作業する時間、いわゆる「ワンオペ」が増えてしまっているということが現場の課題として浮かび上がってきています。そうなるとその場で事故が起きた時に誰かが気づくことができなくなってしまう危険性があるのです。

工場の作業員を守りたい。事故の早期発見だけでなく予防も可能にする見守りシステム

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齋藤: ワンオペでは何か事故などが起こった際に見つける術がなくなってしまいます。そうした問題を解決するのが「作業員 見守りシステム」なんです。

−−このシステムはどのようなきっかけで開発に至ったのでしょうか?

土田: あるお客さまから「どうしてもワンオペの作業が発生してしまっているので、安全性の観点から人の目の代わりとなるシステムを開発してほしい。」という依頼があったのがきっかけです。

−−なるほど。具体的にはどのようなシステムなのですか?

齋藤: 簡単に言えば、転倒したスタッフを発見するシステムです。仕組みとしては、作業員に持たせたデバイスと工場内に設置する装置を介し、人が倒れたことやつまずいたことを管理者に通知するようになっています。

−−転倒だけではなくつまずきも検知できるのですね。

齋藤: 転倒は事故が起きている状態なのですが、つまずきは事故に至らなかったいわゆる「ヒヤリ・ハット」なんです。それを検知してデータを集めることによって、人がよくつまずいている工場内の危険な場所を可視化できるようになっています。「ヒヤリ・ハット」は基本的に報告されないものなので、そうした情報を集めることで事故を未然に防ぐことにも繋がると思います。

土田: また気圧センサーを入れているので、高さが分かるようになっているのもポイントです。工場には吹き抜けがあることが多く、位置だけではどこにいるのか正確に把握できないのですが、これであれば例えば中2階(通常は階数に数えない建築物の主要な階層の中間にある床)などの場所も判断できるようになっています。また、私たちが売りにしているのはコンセントが不要という点です。

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−−電源はどこから供給しているのですか?。

土田: 他社さんの同様の製品では、工場に設置する受信装置部分がコンセントを必要とするものが多いのですが、私たちのシステムは低消費電力にしているので内蔵電池で動かすことができます。それによって導入の際に電気工事が不要となるのがメリットです。

齋藤: また、私たちのシステムは腰につけるタイプのため作業員の邪魔にならないことも特長として挙げられます。

土田: セキュリティ的な観点からカメラ付きの携帯電話を持ち込むことができない工場も増えているので、そういうところでも導入いただけるようになっています。

−−お客さんの反応はいかがですか?

齋藤: 実際に展示会では、現場で事故が起きてしまった方も相談にいらっしゃって「導入したい」とお話をいただきました。もしもケガで済まず亡くなってしまった場合、そもそも取り返しがつきませんし、金額に換金できない膨大な損失になってしまうので、私たちのこのシステムで少しでもそうした事故を軽減できればいいなと思っています。

土田: 作業者の方にとってみれば安心して働ける環境を作れますし、監督管理者からすると今まで知らなかった情報が検知できるので、予防という観点で見ても改善活動に繋げられるのではないかと考えています。

見守りシステムに発揮されているエレコムグループとしてのシナジー

−−見守りシステムにエレコムグループとしてのシナジーは発揮されていますか?

土田: 導入、設置、保守まで、すべてをエレコムグループ全体でサポートできるという体制がお客様に対して一番の売りになっています。工場でこういうシステムを導入される際、トラブル発生時のメンテナンスをかなり気にされるのですが、全体をエレコムグループで密に連携してカバーできるようになっているのは大きな特長と言えると思います。

−−ありがとうございます。最後に、今後工場や製造業の未来に向け、どのような展望を持っていらっしゃるのかお聞かせいただけますか?

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土田: これからは誰にでもできるような簡単なことは機械がやり、その壁を超えたような仕事を人がやっていく世界になると思います。そういう仕事ができる人材はますます貴重な存在になりますので、それを守っていく仕組みを提供したいと考えています。そしてもう1つ、D-CLUEとしては「技能の伝承」に課題感を持っており、そういった技能をお持ちの方が未来に技術を残していけるような仕組みを作って提供したいですね。

齋藤: 熟練者が感覚でやっていることを数値化することは、D-CLUEにとっての大きなミッションだと思っています。そうした仕組みをうまく導入すれば、より効率的に技術が伝承できるのではないかと考えています。そうなれば、少子高齢化によって消えてしまう可能性のある熟練者の技術が次の世代へと受け継がれていき、そこからさらに新しい技術や価値が生まるのではないでしょうか。その手助けをD-CLUEができたらと考えております。