今回はSIer・SE若手のキャリア戦略(キャリアプランニング)について書いていきます。
以前、SIer・SEのキャリアアップ・転職先について書きましたが、今回はより基礎的・根本的な内容です。
具体的な転職先の検討はこちらをご参照ください。
blog.ryo-okui-assign.com
さて、この記事ではSIerについて書いていきますが、他の職種 ~例えば営業職や企画職など~ も基本的には同じですので、SE以外の方にも参考にしていただける内容かと思います。
キャリア戦略の重要性
SIerのキャリア戦略のマイルストーンは30歳半ば
まず、SIerと他の職種のキャリア戦略における違いを確認しましょう。結論から言うと、それは「時間軸」です。
一般的な職種は3年ほどでスキル・経験を認められますので、その3年目がひとつの大きな転換点、さらにその倍の6年目あたりで、キャリアの方向性はほぼ決まります。
その一方でSIerは、導入~テストまでを一通り経験し、ITに対する理解も深い人材として転職市場で認められるまでに、5年程度必要です。つまり、5年目がひとつの大きな転換点になります。そして、10年目あたり(30歳半ば)で、キャリアの方向性が固定化されるもっとも重要な転換点を迎えます。そして40歳前半では、5年後10年後にはどんな立場で何をやっているのかを明確にしていないといけません。
もちろんこれ以外にも違いはありますが、キャリア戦略を考えるうえではこれが一番の違いでしょう。
ここからは、30歳半ば(他の職種は30歳前後と読み替えてください)で迎える大きな意思決定に向け、どのように考え、どのようなキャリアを積んでいけば良いかについて説明していきます。
登るべき山の候補を特定して登り方を考え、アタリをつける
キャリア戦略といっても抽象的で考えづらいので、まずは30歳半ばにおけるキャリアのゴールを明確にすることが重要です。
これについて様々な考え方はあると思いますが、「30歳半ばで迎える意思決定への準備を完了すること」がゴールであると言えます。
言い換えると、「登るべき山の候補を特定して登り方を考え、アタリをつける。」です。もしくは、「大まかな方向性を描き、アタックする」と言ってもいいかもしれません。
否応なしに登山は始まる
この、「30歳半ばでの意思決定」についてまずは説明をします。キャリアにおいて、30歳半ば(32~36歳)は今後40年働く領域の確定が決まる時期です。
SIerの転職市場においてもこの時期を超えると未経験者を受け入れることは殆どありません。また、転職者も家族などの兼ね合いもあり、選択肢に制限がかかってくるのは避けられません。
つまり、タイムリミットが来れば、決める決めないに関わらず、登山が始まるのです。そしてその山から他の山に移ることは難しくなってきます。
終身雇用が崩れ去ったと言われている現代ですが、現状をみれば、SIerで働くSEにとって30歳半ばは一生働いていく分野を見定める、一大意思決定を迎える時期なのです。
キャリア戦略の立て方
価値観に合う領域の特定とキャリアとの紐づけが肝要
この重要な意思決定は、実は無意識のうちにされてしまうことが多くあります。多くの人は、日々の業務に埋もれている間に、気が付いたら進む先が確定してしまいます。
もちろん会社のため、お客さんのために目の前の仕事に打ち込むこと自体には非常に価値がありますし、そういう方を私も好きですし支援したいと思います。だからこそ、そんな方にこそ、せめて1年に1回、自分の登りたい山、おおきなキャリアの方向性について、自分のために時間を使って考えてほしいと思っています。
その時間で、価値観に合う領域の特定(自分がやりたいことは何なのか)、キャリアとの紐づけ(機会を掴めるのか)を考えてください。
以降では、キャリア形成に向けた第一歩の準備について、この2つの観点から説明していきます。
① 価値観に合う領域の特定
まずは、自分の価値観に合う領域の特定を行います。つまり、今後30年間やっていきたいと思う領域を特定します。
20代では、
「もっと専門的な技術を身に着けたい」
「様々な領域に触れながら、知的な面白さを感じたい」
といった曖昧な意向になるのは仕方ないですが、
30歳半ばを迎える時には、
「ITエキスパートとして通信領域の第一線に立ち続けたい」
「IT最上流を担うCIOアドバイザリーになりたい」
と仕事に紐づいた形でのキャリア意向に持っていくのが理想的です。
しかし、このテーマについて考えようとすると、選択肢の広さや経験不足で、結局まとまらないということに陥りやすいでうす。
ですから、今回はきちんと検討を進めるための検討のコツを紹介していきます。
「ピンポイントに絞りすぎない」こと
一つ目は「ピンポイントに絞りすぎない」こと、つまり、大きな方向性に留める、ということを意識することです。
考えているのに明確な結論が出ないという場合、多くは情報や経験が足りていないことが原因です。この状況で、ピンポイントに特定しようとすると、大きく誤った結論に着地したり、結局考えが進まなかったりする場合が多いです。
この罠に陥らないように、「究極的にはやってみないとわからない」という大前提に立ち、ある程度の曖昧さは許容し、大きな方向性で考えるようにしてください。
「ちょっと曖昧だが、ここまでは正しそうだ」というアタリをつけ、より正確な自分の意向を知るべく、一度飛び込んでみる(アタックしてみる)という考え方が必要となります。30歳半ばまでに、絞り込んでいくという姿勢で検討することによって、着実に考えを進めることができます。
例えば、エージェントである私が、非金融のSEの方から
「コンサルファームの金融チームで新規事業立案がやりたい」
と言われたら、不安で仕方ありません。
もちろん、自分の意見を持つことは良いことですが、経験がない中でのピンポイントさは、妄想に近くなってしまいます。
「広さを許容する」こと
二つ目は「広さを許容する」ことです。こちらは1つ目で上げた途中経過として曖昧さとは異なり、「最終的な着地点が広いものでもOKとする」ということです。つまり、専門性がなければだめ、というわけではないということを意識してほしいということです。
具体例でいえば、一口にITコンサルといっても、
「IT会計パッケージの導入に強くなっていきたい」という人もいれば
「デジタルを使って幅広くビジネス推進に携わりたい」という人もいます。
やりたいことを考えていくと、どうしても、最初は幅広く、それを狭めていって専門性を持つと考えられがちです。
とくにITに関わっている方ですと、その傾向が強いように思います。
しかし実際には、興味の広い人は広いままであり、狭い人は絞られていく、ということを理解しなければいけません。
例えば、読書が好きな人でも、大人になっていくにつれ、実用書しか読まなくなる人もいれば、小説も含めて本なら何でも読む人がいるように、その人によって広さは様々です。中にはハリー・ポッターだけを熱狂的に好きになるという人もいます。
ですので、自分のやりたい領域は、広くても狭くても問題は何もなく、絞りすぎることなく考えてください。
「複数の選択肢もアリと認識する」こと
三つ目は、「「複数の選択肢もアリと認識する」ことです。
方向が一つに定まらない際は、進みたい方向に複数の選択肢を持ってもよいでしょう。
例えば「CIO」か「AI等の先端テクノロジー」の方向かで迷うため決められないという場合です。この場合においては、現在のキャリアだと技術領域でしか業務を経験したことがなければ、次のキャリアとしてビジネス観点を身に着けられるものを選ぶのも良いでしょう。
このように、両方の方向性を満たすアプローチショットとなる環境に身を置くといった形で進めることも出来ます。
但し、遠すぎる選択肢は同時には持てないので注意が必要です。
②キャリアとの紐づけ(準備)
自分のやりたい領域の特定は難しい一方で、いざ特定できた場合には、そこに移れるようにしておく必要があります。
例えば、30歳でなんとなくITコンサルか上流SIerが向いていると考えている人がいるとします。この方は、次の転職ではコンサルファームに行かなければいけません。
もし上流SIerに行った場合、35歳でITコンサルがやりたいとなった場合でも、働き方や能力、経歴などの様々な点から転職することはなかなかに難しくなります。一方、ITコンサルから上流SIerに移ることは、能力さえあれば決してハードルは高くありません。
このように、自分のやりたいことを明確にする一方で、柔軟に移れるようにしておく必要があります。
具体的には、上述した「価値観の特定」に加えて、30歳半ばまでに「どのようなスキル」を備え、「どのような経験」が必要なのか、考え、身に着け、積んでいくことが必要なのです。
この点については、どうしても転職市場の知識が必要となるので、信頼できるエージェントと相談し、キャリアの拡がりについて考えていただきたいと思います。
もちろん最後の意思決定は、転職者の方にしかできないのですが、情報源や一緒に考えるパートナーとして、エージェントを一つ選択肢として考えていただければ幸いです。