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警察は「全員逮捕」、そして「ダンケルク作戦」

 状況が変わったのは17日日曜日の午後だ。警察はさらなる増員を進め、キャンパスからの逃げ道を塞いだ。そしてその日の夜には記者以外のキャンパスから出て来た人を全員逮捕すると宣言した。

警察の位置が分かる抗議者向けアプリ。「犬」は警察を示しており、画面中央が香港理工大学である

 警察は南東、南西、北東の3方向から催涙弾を絶え間なく撃ち、キャンパスの南側の道路付近では青色のインクを浴びせる放水車も使用した。日曜日の夜が近づくにつれ警察の攻撃はさらに強まり、抗議者が占拠していたキャンパスの南側に接している道路は警察側に奪われる。警察は18日月曜日の朝、その南側の道路からキャンパス内に一時侵入したという。キャンパスは警察にその後も取り囲まれ続けた。キャンパスからどうにか逃げ出した人々は中学生、救護担当者も含めて多く逮捕された。その中には警察が「逮捕しない」と宣言していた記者も、多く含まれていたという。

この橋にロープのはしごをかけて飛び降り、警察の包囲網を逃れた人がいるという

 大学の外にいる抗議者たちは、警察を理工大学から引き離すために様々な場所で抗議活動を展開した。例えば大学の周囲に車で集まりクラクションを鳴らし続けた。そして、抗議者が逃げて来たら、すぐにその車に乗せて逃がした。

 理工大学のすぐ北に位置し、理工大学の学生寮がある何文田でも抗議者と警察が対峙(たいじ)した。逆に理工大学の南側や西側にも抗議者が多く集まり、警察が動員できる人数の限界を利用して警察の包囲を解かせようとしている。これらの脱出作戦は一部の抗議者や支援者からは第2次世界大戦中の脱出作戦にちなんで「ダンケルク作戦」と呼ばれている。

 警察は大学から出てきた人だけではなく、包囲網の外側でも抗議者を逮捕している。共同通信やNHKによれば、日本人で東京農業大学の学生である観光客も香港ディズニーランドからの帰りにデモを見に行ったところを逮捕されている。

メディアに熱弁する宣教師だという人