ワイドショー化したマスコミ
だから組織力や政策実行力では自民党にまったくかなわない野党が、国会で与党と対等に戦えるスキャンダル追及に特化するのは、選挙戦術としては合理的である。
それを促進しているのがマスコミの劣化だ。マスコミには政治部と社会部という日本独特の区別があり、記者の半分以上は(地方を含めて)社会部である。普通の政治ニュースは政治部が担当するが、事件になると社会部が担当する。
昔はその区別がはっきりしていて、政治番組はスタジオで各党が討論する退屈なものだったが、それでは視聴率が取れない。1日に何時間もワイドショーを放送するようになると、政治ニュースにも面白さが求められる。新聞も部数が減る中で、刺激的な社会部ネタが重視されるようになった。
日本のように1面に政治・経済の記事が載る新聞が何百万部も発行される国はほとんどない。多くの国でもっとも発行部数が多いのは、1面にスポーツ・芸能の記事が載る大衆紙である。日本の新聞も「世界標準」に近づいてきたといえよう。
他方でロッキード事件やリクルート事件のような大型の疑獄事件は、政治資金規正法が厳格になって、最近ほとんどなくなった。つまりスキャンダルの需要が増える一方で、その供給が減っているのだ。
その結果、マスコミが取り上げるスキャンダルがどんどん小型化している。森友学園も加計学園も、政治家は刑事事件にならなかった。最近、安倍内閣の閣僚が2人相次いで辞任した原因も、小さな選挙違反である。昔はこの程度で閣僚が辞めることは考えられなかった。













