香港理工大学付近で拘束されるデモ隊の男性(18日)=AP
【ワシントン=永沢毅】米議会上院は19日、香港での人権尊重や民主主義を支援する「香港人権・民主主義法案」を全会一致で可決した。香港の「一国二制度」が機能しているかどうか米政府に毎年の検証を義務付け、人権を犯した中国政府関係者らに制裁を科せるようにする内容。デモ隊への強硬姿勢を強める中国政府と香港政府をけん制する狙いがある。
成立には、10月に可決されていた下院での同様の法案と中身を調整したうえで、トランプ大統領の署名が必要になる。成立すれば中国政府が反発するのは確実だ。
トランプ氏は2020年大統領選に向けた成果として中国との貿易交渉で中国による農産品購入の拡大などを盛った「第1段階の合意」の早期決着をめざしている。法案に署名すれば、中国側が態度を硬化させて交渉が漂流するリスクもある。トランプ氏が署名にどう対応するかが、次の焦点となる。
中国外務省は成立した場合には報復措置の可能性を示唆している。ロイター通信がホワイトハウス高官の話として伝えたところによると、トランプ氏は法案に署名するか拒否権を行使するか、まだ最終決定していないという。
今回の法案を主導した対中強硬派のマルコ・ルビオ上院議員(共和党)は法案の可決後に「私たちはあなたたち香港市民とともにある」とツイッターで表明した。上院本会議では、香港に催涙ガスや催涙スプレー、スタンガンなどの武器輸出を禁じる法案も可決した。
これに関連し、ペンス副大統領は19日の米メディアとのインタビューで「もし香港で暴力が用いられたり、問題が適切かつ人道的に対処されなかったりすれば中国との貿易合意はとても難しくなる。その点はトランプ大統領も明確にしている」と語り、中国側を強くけん制した。
トランプ氏は「(中国が)天安門(事件)のように武力を使えば、取引が困難になる」と述べたことがあり、中国政府が武力介入した場合は米中貿易交渉の継続が難しくなるとの認識を示していた。