子供の頃や若い頃は夢や希望に満ち溢れています。
しかし一度大人になり、社会に従属してしまえばそれは脆く消え去ってしまうものです。
毎日ネクタイという首輪を自分で結び1日中ひたすら仕事に勤しむ...
夢も希望もあったものではありません。
自分で自分が哀れに思えてきてしまいます。
このフレーズでの「J.Boy」は夢も希望もあった頃の自分に語りかけているように思えます。
もういない
失ってしまった仲間
果てしなく続く生存競争 走り疲れ
家庭も仕事も投げ出し 逝った友人
出典: J.Boy/作詞:浜田省吾 作曲:浜田省吾
とても重く、現実的で悲しいフレーズです。
このような運命をたどる人は今も昔も変わらずいます。
幼少期は徒競走。
学生時代は勉強による競争、さらに受験戦争。
そして大人になり、社会に出てみれば仕事の中で「生存競争」。
ずっと走り続ける中で「もう駄目だ」と疲れ切ってしまったのでしょう。
大切な友人がそんな風になってしまうのはとても見ていられません。
自分には言わずとも、なんとなく疲れているのがわかっていたのでしょうか。
手を差し伸べるにも自分には自分の競争があり、余裕はありません。
何もしてやれなかった自分。
そんな心の情景が浮かぶフレーズです。
なんとか自分を誤魔化す日々
そして おれは心の空白 埋めようと
山のような仕事 抱えこんで凌いでる
出典: J.Boy/作詞:浜田省吾 作曲:浜田省吾
追い詰められ、疲れ切り、自ら命を絶った友人。
社会における「戦友」を失った自分。
「俺は〜」とあるように、胸にぽっかりと穴が空いてしまいました。
そうして2行目のフレーズを見る限り、半ば自暴自棄になっているのでしょう。
「凌いでる」というフレーズが、より一層悲壮感を掻き立てます。
自分自身もギリギリなのでしょう。
ただひたすら何も考えずに、毎日会社と家を往復している姿が想像できます。
このままでは自分自身も社会に飲まれ、疲れ切ってしまうのではないでしょうか。
歌詞をなぞるだけで絶望感がよぎります。
バブル景気の影
J.Boy 頼りなく豊かなこの国に
J.Boy 何を賭け何を夢見よう
J.Boy…I'm a J.Boy.
J.Boy…
J.Boy…
出典: J.Boy/作詞:浜田省吾 作曲:浜田省吾
この曲がリリースされた1986年はまさにバブル景気の始まりの年でした。
日本社会は爽やかで明るいムード、大人も仕事やお金に恵まれていたのです。
しかし光があるところに影があります。
前述したような膨張を続ける社会と絶望に飲まれていく人もいました。
浜田省吾はそんな社会の中に隠れている「影」を見抜いていたのでしょう。
歌詞1行目「頼りなく〜」とあるように意味深に当時の社会を風刺しています。
そんな社会に対し「何を〜」と歌っているのです。
そしてここで入る「I'm〜」のフレーズ。
自分が「J.Boy」であると歌っています。
自分が自分に絶望の中での生き方を尋ねる。
とても感慨深いフレーズです。
やりきれずに
思わず夜に飛び出す
午前4時 眠れずに 彼女をベッドに残し
バイクにkey差し込み 闇の中 滑り込む
出典: J.Boy/作詞:浜田省吾 作曲:浜田省吾
絶望の中、考え込み答えが出ないまま眠れずにいる自分。
それを振り切りたいのか、「バイクに〜」とあるように思わず外に飛び出します。
「午前4時」で「闇の中」ということは季節的には秋か冬。
冷え込む中、思わず飛び出す。
そんなことおかまいなしにバイクで走りたかったのでしょうか。
行き詰まった時に思わず外に出て何かする。
それは人として当然の行為なのでしょう。