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社会インフラを技術で支える。
ハギワラソリューションズに学ぶ
“信頼”の重要性

“社会インフラを技術で支える。ハギワラソリューションズに学ぶ“信頼”の重要性 社会インフラを技術で支える。ハギワラソリューションズに学ぶ“信頼”の重要性
Introduction
あらゆる機械にコンピュータが導入されているのが当たり前の現在、スピードや耐久性の面から産業用フラッシュストレージの重要性は高まるばかりです。同分野において20年以上にわたる実績をもち、ノウハウを培ってきたのが日本国内における先駆け的フラッシュストレージメーカー、ハギワラソリューションズです。その成り立ちとフラッシュストレージに賭ける思い、社会インフラを支える責任とそれを可能とする技術力、そしてそれらが描く未来像を伺いました。
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メンバー

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鈴木 浩之
(ハギワラソリューションズ株式会社:常務取締役)
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渡橋 晃揮
(ハギワラソリューションズ株式会社:開発部 次長)
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竹内 和久
(ハギワラソリューションズ株式会社:営業部 営業推進グループ)

フラッシュストレージと共に歩んだ20余年

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−−まずはハギワラソリューションズの成り立ちと歩みについて教えていただけますか?

鈴木: 平成元年にハギワラソリューションズの前身となるハギワラシスコムができ、平成3年からDOS/Vパソコン(当時日本アイ・ビー・エムが発表したパーソナルコンピュータ用のオペレーティングシステムの通称)用の増設メモリを扱うビジネスを始めました。当時は国内にパソコンメーカーがたくさんあり、それらのメーカーにOEM供給をしていました。

−−当初は増設メモリを手がけていたのですね。

鈴木: そして平成7年に東芝がNANDフラッシュ(フラッシュメモリの一種)を使ったメモリの販売を始めたタイミングで、弊社もNANDフラッシュを使ったソリューションに可能性を感じ、開発をスタートさせました。

−−なるほど。Windows95が出た平成7年にNANDフラッシュに舵を切ったのは当時としてはかなり早いタイミングだったかと思います。

鈴木: そうですね。世界で初めてNANDフラッシュを使ったメモリカードのリーダライタ(非接触でICカード・ICタグと通信を行うための端末)を作ったのは弊社だと思います。

−−NANDフラッシュに舵を切ることによって、どのような影響があったのでしょうか。

鈴木: いろんなアプリケーションに展開できると踏んでいたのですが、その通りにスマートメディア、CF、SD、USBメモリといった多様な製品に広がっていきました。平成12年くらいにはデジカメが大ブームになり、当時主流の記憶媒体だったCF(コンパクト・フラッシュ)を東芝と共同開発して販売していました。

−−NANDを主戦場としながらその時々のフォーマットに対応してきたのが、ハギワラソリューションズの歩みである、と。

鈴木: はい。そして平成18年頃に自社でSSD(半導体素子メモリを使った記憶媒体)用のコントローラを開発し、コントローラもすべて自社で作ることができるようになって、今に至っています。

駅の券売機からコンビニのレジにまで使用されるハギワラソリューションズのSSD

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−−現在、ハギワラソリューションズはBtoBビジネスに注力しているわけですが、当初は一般消費者向けがメインだったのですね。

鈴木: そうです。当初はコンシューマー向け製品を量販店に販売していて、BtoBに関わり始めたのは会社の歴史としては後半からとなります。


渡橋: 先ほど平成18年頃に自社コントローラを開発し始めたと申し上げましたが、その頃からBtoBビジネスを本格的に立ち上げました。

−−BtoBに舵を切った理由とはどういったものだったのでしょうか。

鈴木: 世の中のコンピュータの記憶媒体が、HDDからNANDフラッシュを使ったSSDに置き換わるだろうという展望があったからです。そうなると産業用SSDの需要が伸びるのは当然のことで、これからその需要はもっと伸びてくると考えています。

−−産業用SSDはどのような場面で使われているのでしょうか?

渡橋: 普段みなさんが使われている駅の券売機や、最近ではコンビニにあるPOSレジもHDDからSSDに切り替わり、動作が速くなりました。

−−駅の券売機やレジの中にもSSDが入っていると考えると、ハギワラソリューションズが途端に身近に感じられます。

渡橋: 電車のサイネージにも使用されています。モニターそれぞれにSSDが内蔵されているので、一つ一つの車両に200台くらいハギワラソリューションズのSSDが使われています。また、電車以外の車などその他車両でも走行ログを取ることに使われています。

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−−SSDはHDDよりも寿命が短いという話もありますが、その点は問題とならないのでしょうか?

鈴木: 確かにSSDはHDDと比べ寿命の面で不安に思われることが多いですね。でも寿命は大体予測ができるので、逆に安全でもあります。ハギワラソリューションズでは寿命があとどれくらいかを計算するためのツールをご提供することで、そうした不安を解消できるようにしています。また、SSDの寿命を伸ばすための技術もどんどん進歩しているので、今では安定して産業機器にも使われるようになりました。ここにハギワラの技術やノウハウが活かされています。

−−そうした寿命予測ツールを作れるのも、やはり自社で製品の全てを開発しているから実現できたのでしょうか?

渡橋: そうですね。私たちは製品を販売するだけでなく、お客さまの課題に対してすべての面でサポートできることを目標にしています。そのためには自社の製品を理解し尽くしていることが重要です。

自社製品で社会インフラを支える、ということ

−−製品だけでなくサポートも重視されているのでしょうか。

渡橋: BtoBをメインの事業としてから、新たにサポート部隊を作り、お客さまにより近いところでサポートするようになりました。

鈴木: 一時期は「ハギワラは価格が高い」と価格が安い台湾の製品に乗り換えられてしまったこともありました。しかし、日本は問題が起こった際は壊れた理由やその対策を求める文化があるのに対し、台湾メーカーは交換はするけど解析はしないメーカーが多いと思います。一方、弊社はしっかりと問題発生時には解析等のアフターサポートを行なってきており、その結果「やっぱりハギワラさんがいい」と多くのお客さまが戻ってきてくれました。

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−−コスト面では安価な他国に勝てないこともあるが、やはり「いいものはいい」と。

竹内: 産業用の製品は動作が止まってはいけません。そのため、導入する前に技術的なお問い合わせをくださるお客さまが非常に多いです。弊社の場合はそこをきちんと説明できるので、安心して導入いただいています。

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−−駅の券売機など、社会インフラにハギワラソリューションズの製品が使われているのも納得です。

渡橋: 今の社会インフラってほとんどがコンピュータ制御で、そうでないものがないくらいです。そこには必ずメモリやストレージが必要となります。

竹内: 銀行のATMもスピードを重視していて、コンマ何秒の処理速度の違いにこだわっています。

−−スピードと信頼を兼ね備えた質実剛健な製品と、丁寧なサポート。この2つが社会インフラを支えるのには必要であり、ハギワラソリューションズは両者を提供できるメーカーだということがよくわかりました。それにしても誰もが利用している身近なサービスを自分たちが支えているということで、みなさんはご家族にお仕事を説明すると驚かれるのでは?

鈴木: それが一般の人には説明が難しくて、全然理解されていないと思います(笑)

エレコムグループに入り、よりBtoBに集中。そして海外展開へ

−−ハギワラソリューションズは平成29年からエレコムグループとなりました。どのような変化があったかお聞かせ願えますか?

鈴木: 一番大きな変化はBtoB専門に舵を切ったことです。当時はまだBtoCとBtoBを両方やっていたのですが、BtoCはエレコムの得意分野ということで切り離しました。それによってBtoBの組み込み事業に特化し、より集中できるようになりました。

−−グループ企業とのグループシナジーはありましたでしょうか?

渡橋: エレコムが持っていた販売網とのシナジーは大きいですね。

鈴木: 他にも平成30年1月に日本データシステムというPCのマザーボードを開発しているグループ会社とハギワラソリューションズがマージされたことで、メモリとマザーボードの両方をセットで提案できるようになり、より多くの付加価値をお客さまに提供できるようになりました。

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−−最後に今後の展望についてお伺いできますか?

渡橋: IoTの発達によって今後NANDフラッシュの搭載機器は増えていくことが予想されます。それと同時に、これからは小型化やデザイン性を重視した製品がますます増え、すべての部品の薄型化が進んでいくのではないかと考えています。

竹内: 物理的な小型化の他にはストレージの大容量化の流れがあると思います。弊社としてはそこにセキュリティの強化や耐久性を付加価値として追加していきたいと考えています。

渡橋: 基本的な構造はコントローラとメモリの組み合わせで変わりませんからね。やることはサポートと信頼性の強化です。

竹内: 今後NANDフラッシュの搭載機器が増えるにつれ、メンテナンスや遠隔からの制御に対するセキュリティ強化も課題になってくるはずです。

鈴木: そしてハギワラソリューションズとしては、今後は海外展開が一つの柱となってくると考えています。現在は日本市場が95%以上なのですが、4~5年ほど前から海外の展示会に出展し、案件が決まり、認知され始めています。特にヨーロッパは工作機械メーカーや車メーカーが多数あり、信頼性を重視するお客さまが多く、日本企業と考え方が近い印象があります。これまで培ってきた技術力と信頼性を付加価値として戦っていきたいと考えています。