トヨタ自動車の男性社員=当時(28)=が2017年に自殺したのは、上司のパワーハラスメントを受け適応障害を発症したのが原因として、豊田労働基準監督署(愛知県豊田市)が労災認定していたことが19日、遺族側の代理人弁護士への取材で分かった。
代理人弁護士によると、男性は東京大大学院修士課程を修了後、15年4月に入社し、16年3月から本社(同市)で車両設計を担当。上司から日常的に「ばか」「あほ」などと叱責され、「死んだ方がいい」などの暴言も受けていた。
男性は病院で適応障害と診断され、同7月に休職。10月、上司とは別のグループに復職したが、席は斜め向かいだった。男性は17年10月に社員寮の自室で自殺したとしている。上司は社内の調査に対し、暴言があったことをおおむね認めたという。
今年3月、遺族が「上司による業務指導の範囲を逸脱する言動があった」として労災を申請。労基署は遺族側の主張をほぼ認め、9月11日付で労災認定した。
復職後に通院していない場合は病気が治ったと判断され、労災と認定されないことが多いが、遺族側代理人の立野嘉英弁護士は「復職後も症状があり、自殺との因果関係が認められた意義は大きい」と評価している。
遺族は代理人を通じ「会社が対処していればパワハラは未然に防げたはず。労災認定を機に職場環境の改善に努めてほしい」とのコメントを出した。今後、トヨタ側に損害賠償を求め、協議したいとしている。
トヨタは「労基署の決定を真摯に受け止め、労働災害の防止、社員の健康管理に今後とも一層努めたい」とコメントした。