ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

57 / 58
・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

・いきなり強烈な厨二電波から始まります。

 以上を踏まえた上でお読み下さい。


【番外編】伝道師の真価 サイド:ナザリック

 ――穢れる事の叶わぬ宵闇の天上へ降臨せし月の女神(ディアーナ)よ。清楚なる気高き光を顕現させ闇に潜む獣に久遠の安寧を、咎に迷いし天壌の無窮が如き子羊達へ神の真なる祝福を。天上へ華やかに咲き誇る月光が如き白銀の弓を背負いし君。

 

 狂躁と饗宴を以って天高く、尊く、そして残酷に地上を照らしたる月の女神(ディアーナ)よ。神が与え賜う天命を全うせし同胞。君の与えられた天命を想えば邂逅への歎願さえも烏滸がましい。運命の悪戯を呪いたくなる背信者たる私を赦して欲しい。

 

 私も絶対神に造られたる月の女神(ディアーナ)の矢に射貫かれた、憐れな犠牲者の1人なのだから。――

 

 

 

「うん、こんなもんですかね。」

 

 

 宝物殿の談話室。パンドラズ・アクターは山の様な色取り取りの花束と共に一筆の手紙を書いていた。自らの創造主アインズが、その御手によって死後再構成した存在……義理の妹とも言うべきネイア・バラハに向けた手紙だ。

 

 あの影武者騒動以来、こっそりと彼女の活動を見守っているが、自らの創造主にしてこの世で最も偉大な御方、アインズ様の素晴らしさを実によく解っている。

 

 パンドラズ・アクターとしては若干物足りない部分もあったが、彼女がアインズ様に従えていた期間は季節にして二つ分なのだ、無知から来る情報の欠落は致し方無い。……それだけに惜しいとも思う。シモベとしてアインズ様のお近くに居れば、彼女の能力はより一層発揮出来るだろう。

 

「ああ、そういえばデミウルゴス殿からチェスのお誘いがありましたね。何の御用時でしょうか?」

 

 ナザリックで一番多忙な男がただ遊技をするため自分を呼ぶはずもない。エ・ランテルの執務室で夜待ち合わせをしている。パンドラズ・アクターは漆黒の鎧姿に変化し、そのまま宝物殿から姿を消した。

 

 

 ●

 

 

 エ・ランテルの執務室でデミウルゴスは漏れ出しそうな鼻歌を抑え込み、1つ咳払いをする。ここ最近のデミウルゴスは何時にも増して忙しく、牧場運営・ローブル聖王国併呑のプラン、それに【魔導国情報先進国化及び、プロパガンダ構想】の委員として秒単位のスケジュールを組んでいる。

 

 それはいと尊き御方アインズ様へ挺身出来る無上の喜びであり、何よりの愉悦……引いては自らの存在証明である。〝アインズ様のお造りになられた駒は、自分の計画を年単位で縮める〟最初はそう考えていたが、未だ自分はアインズ様という至高の御方々のまとめ役、その端倪すべからざる越智と御力を、またしても正しく理解出来ていなかったようだ。

 

 ローブル聖王国は一度富ませた上で、南北が対立し、幾多の血が流れた後に魔導国が掌握可能と考えていたが、無血で富んだ地を掌握出来るなど正にベストと言える。懸念されていた聖騎士と南部の掌握だが、そのままネイア・バラハの活動を支援すればいいだけだろう。彼女の理念とその煽動能力を持ってすれば、自ずとローブル聖王国は魔導国の手の内となる。

 

「〝伝道師〟という駒の有用性……。いやはや、アインズ様は常にわたくしの愚案などを遙かに超えられる。それなのに、わたくし如きに知恵で華を譲って下さるのですから、全く酷い御方です。」

 

 カスポンド・ドッペルから報告される事案は毎回デミウルゴスの予想さえ遙かに上回る。忌まわしき聖騎士や神官までもアインズ様を讃え、その煽動能力は上昇する一方だ。

 

「さて、あの不愉快な者の処遇を考えないといけませんね。アインズ様に不快な思いをさせた重罪を、身を持って知って貰わなければなりません。」

 

 新しく牧場へ追加された両脚羊を思い、デミウルゴスは唇を愉快気に吊り上げた。アインズ様に確認した所、なんとあの両脚羊はローブル聖王国において至高の主であるアインズ様を都度不愉快にさせたという。万死に値する罪だ。

 

「デミウルゴス様、モモン様がお目通りをしたいとの事です。」

 

「ああ、入れてくれ。」

 

 一般メイドの声掛けに、デミウルゴスは時計を見て予定通りの時刻であることを確認する。

 

「デミウルゴス殿、失礼する。」

 

「呼び出して済まなかったね、パンドラズ・アクター。君も多忙であろうに。……あとこの空間は安全だ、演技を止めても問題は無い。」

 

 パンドラは〝そうですか。〟と言って、動作が一気にオーバーなものになる。

 

「いえいえ、あなた様には負けますよ。流石はナザリック1の知者に御座います!」

 

「わたしはあくまでアインズ様の深遠なるお考え、その一端を汲み行動しているに過ぎない。……そしてアインズ様の叡智を前にすれば、酷く劣った存在となります。さて、ローブル聖王国を魔導国へ併呑させる目処が付きました。わたくしの想定を遙かに上回る速度です。」

 

「おお!流石は月の女神(ディアーナ)!!……こほん、ネイア・バラハですね。」

 

「そうこの一件は彼女の活動が大きい。無血で富んだローブル聖王国を掌握することも可能なのだが、アインズ様を新たな王とローブル聖王国に知らしめるに際し、ここは一つ神格性を孕ませる方法を考えているんだが……」

 

「なるほど、革命ですか。」

 

「流石、話が早い。下劣な暴君を真なる国民が審判し、新たに王を迎える……。こういった筋書きは君が得意とする分野かと思ってね。」

 

「武器を取れ市民らよ♪隊列を組め進もう進もう♪汚れた血が我らの畑を満たすまで~~♪……っと!素晴らしい考えです!アインズ様を讃える声は歴史となり、ネイア・バラハの名も青史に列する事となるでしょう!」

 

 デミウルゴスはいきなり舞って歌い出したパンドラズ・アクターを慣れた様子で見つめ、結論を下す。

 

「ふむ、では南北の対立計画から、南北の融和へシフトし……。そして、聖王家から貴族達へ強権を与え、内部不満を高める方針へ転換しなければならないね。」

 

 アインズ様はネイア・バラハの活動について尋ねた時こう仰った。〝好きにさせておけ〟と。

 

 おそらく自分達が動かずとも自身の造り上げた駒がいずれローブル聖王国を掌握することを見越していたのだろう。それなのに手柄を自らに譲ってくれるなど、なんと慈悲深い御方なのだろう。デミウルゴスのチェス駒を動かす指先が感激を孕んだ激情でぶるりと震えた。


 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。