平幕の輝(25)=高田川=は志摩ノ海を押し出して7勝目を挙げた。
「黄金の左」はなくても輝が、地道に勝ち星を積み重ねている。横綱輪島の血を引く大器が、ようやく目覚めの気配だ。志摩ノ海との立ち合いで右を差し、じりじりと前へ。頭を付けてくる粘りに手を焼いたが、左おっつけの追撃で押し出して7勝目。優勝争いに1差で名を連ね、幕内前半の土俵を盛り上げている。
輪島は父方の遠縁にあたり、同じ石川県七尾市出身。能登の港町生まれの素朴な25歳は浮かれない。「上半身の力が抜けて、しっかり中に入れた。体が動いてやりたいことをやれている。星は気にしない」と淡々と話した。モットーは「相手あってのことなので、多くを言ったら失礼」。勝ち越し王手にも笑顔はなかった。
2014年秋場所後の新十両昇進に合わせ、しこ名の下の名前を輪島と同じ「大士」に。トレードマークの黄金まわしも受け継いだ。そんな特大の期待を背負いながら幕内上位が遠く、3場所連続負け越し中ともがいてきた。
師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)が「ようやくまともな相撲を取るようになってきた。気が優しいのか、もう少し荒々しく取ってほしい。自信を持たないといけない」と話すように、まだ力を秘めている。
これまでは、192センチの長身を生かした突き押しにこだわってきたが、前のめりになるのが負けパターンだった。「足を出す。背中と腹に意識を置いている」と重心を低くする安定性重視が、白星につながりつつある。
場所前はちょっとしたハプニングも。愛用の締め込みを慣らす作業で「濡らしすぎて、色落ちしちゃいました」。苦笑いで振り返ったが、それだけ今場所に懸けている。まずは勝ち越し、そして初の2桁勝利へ。白星を連ねて輝けばいい。