2020年代は日本株が復権 5Gがけん引(藤田勉)一橋大学大学院特任教授

写真はイメージ=123RF
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米国株が史上最高値を更新するなど世界の株式相場の上昇に弾みが付くなか、日本株の出遅れ感が目立っている。年初来高値こそ更新しているが、過去1年間の投資収益率(配当込み)を2019年10月末時点でみると、米国(S&P500種株価指数)が14.3%、欧州(STOXX欧州600株価指数)が12%であるのに比べ、日本(東証株価指数)は3.9%と大きく下回る。過去10年では日本株は2.3倍と欧州の1.8倍を上回るものの、米国株の3.6倍には劣後している。

しかし20年から日本で本格的に立ち上がる次世代通信規格「5G」は、日本株の劣位を一変させる可能性を持つ。19年10月21日付当コラム「5Gが起こす大変革 日本株の主役は通信株」では主に通信企業への影響を取り上げたが、実は製造業やIT(情報技術)企業を中心に波及力は大きい。今回はこの点について筆者の見解を説明しよう。

通信サービス、加速度的に性能向上

通信サービスは世代が進むにつれて加速度的に性能が向上してきた。1980年代に始まった第1世代(1G)はアナログ通信であり、携帯電話は音声通話のみだった。90年代の第2世代(2G)はデジタル通信であり、代表的なサービスが「写メール」や「iモード」である。第3世代(3G)は2001年にサービスが開始され、音声が高品質化するとともに伝送が高速化した。さらに通話を超えた高度なサービスが発達した。米アップルが開発した「iTunes」「iPod」などが音楽ビジネスを根底から変え、ネットを通じた配信サービスが重視されるようになった。そして07年に米アップルは世界初のスマートフォンである「iPhone」を発売した。10年代に普及した第4世代(4G)によってスマホの性能は飛躍的に高まり、我々の生活やビジネスの形を大きく変えた。

通信規格の進化は通信企業の業績と株価を大きく押し上げた歴史がある。日本最大の移動体通信企業であるNTTドコモは3Gのサービス開始後、05年3月期の連結純利益が7476億円に増加した。10年代には15年3月期の4101億円から18年3月期の7908億円とさらに飛躍した。時価総額も10年代に12年11月の4.9兆円から最大時には16年12月の11.8兆円まで増加した。

「au」を運営するKDDIはNTTドコモ以上に成長した。純利益は02年3月期の130億円から19年3月期には6177億円に増えた。時価総額も02年2月の8609億円から最大時には16年4月の9.1兆円に増加した。KDDIはトヨタ自動車が1割強の株式を保有しており、自動運転時代に強みを発揮することが期待される。

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米国株が史上最高値を更新するなど世界の株式相場の上昇に弾みが付くなか、日本株の出遅れ感が目立っている。年初来高値こそ更新しているが、過去1年間の投資収益率(配当込み)を2019年10月末時点でみると、米国(S&P500種株価指数)が14.3%、欧州(STOXX欧州600株価指数)が12%であるのに比べ、日本(東証株価指数)は3.9%と大きく下回る。過去10年では日本株は2.3倍と欧州の1.8倍を上回るものの、米国株の3.6倍には劣後している。

しかし20年から日本で本格的に立ち上がる次世代通信規格「5G」は、日本株の劣位を一変させる可能性を持つ。では主に通信企業への影響を取り上げたが、実は製造業やIT(情報技術)企業を中心に波及力は大きい。今回はこの点について筆者の見解を説明しよう。

通信サービスは世代が進むにつれて加速度的に性能が向上してきた。1980年代に始まった第1世代(1G)はアナログ通信であり、携帯電話は音声通話のみだった。90年代の第2世代(2G)はデジタル通信であり、代表的なサービスが「写メール」や「iモード」である。第3世代(3G)は2001年にサービスが開始され、音声が高品質化するとともに伝送が高速化した。さらに通話を超えた高度なサービスが発達した。米アップルが開発した「iTunes」「iPod」などが音楽ビジネスを根底から変え、ネットを通じた配信サービスが重視されるようになった。そして07年に米アップルは世界初のスマートフォンである「iPhone」を発売した。10年代に普及した第4世代(4G)によってスマホの性能は飛躍的に高まり、我々の生活やビジネスの形を大きく変えた。

通信規格の進化は通信企業の業績と株価を大きく押し上げた歴史がある。日本最大の移動体通信企業であるNTTドコモは3Gのサービス開始後、05年3月期の連結純利益が7476億円に増加した。10年代には15年3月期の4101億円から18年3月期の7908億円とさらに飛躍した。時価総額も10年代に12年11月の4.9兆円から最大時には16年12月の11.8兆円まで増加した。

「au」を運営するKDDIはNTTドコモ以上に成長した。純利益は02年3月期の130億円から19年3月期には6177億円に増えた。時価総額も02年2月の8609億円から最大時には16年4月の9.1兆円に増加した。KDDIはトヨタ自動車が1割強の株式を保有しており、自動運転時代に強みを発揮することが期待される。

そして(1)高速・大容量(2)低遅延(3)多数同時接続という特徴を持つ5Gは、通信企業にとってさらに飛躍するチャンスとなろう。日本の時価総額上位10銘柄のうちNTT、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクグループ、ソフトバンクと5社が広義の通信株であり、これが日本株の復権が期待できると考える根拠の一つである。

5Gは通信企業だけでなく、幅広い業種で進化を促すだろう。例えば5Gは自動運転に不可欠な技術であり、世界の自動車業界を根本的に変化させよう。自動運転では遠隔操作で運転車両を制御する必要があり、通信の遅延(タイムラグ)は事故につながりかねない。また車両や交通インフラなどに多数のセンサーを取り付け、安全を確保しなければならないため、多くの機器が同時にネット上でデータをやり取りする仕組みが重要である。

IT業界でも例えばクラウドサービスの品質が一段と向上する。クラウドサービスは利用者とサーバーを通信回線でつないで、ITサービスやインフラを提供するものである。定期的に顧客に課金するため、景気変動の影響が少なく、安定成長することが期待できる。クラウドサービスで世界をリードする企業は米アマゾン・ドット・コムと米マイクロソフトである。

こうした進化の恩恵を特に受けるとみられるのが半導体である。車載向け、スマホ向けの需要が増加している画像処理用半導体「CMOSイメージセンサー」は一段と市場拡大が見込まれ、世界シェア首位はソニーである(18年で約5割)。またクラウドサービスにはデータの蓄積が不可欠でありデータセンター、サーバーの能力拡充が欠かせない。そのためには記憶用の半導体であるメモリーの増産が必要となる。必然的に半導体関連のニーズも高まり、世界有数の半導体製造装置メーカーである東京エレクトロン、半導体材料のシリコンウエハーで世界首位の信越化学工業にフォローの風が吹くだろう。

デバイス分野でもキーエンス、日本電産、村田製作所など5Gの恩恵を受ける企業が多く、5Gは日本の得意な電機業界を中心とするものづくりの復活にも貢献できるのである。

20年代の世界の株式市場はアマゾン、マイクロソフト、アルファベット、アップルを中心に米国株が優位であることに変化はないだろう。ただし10年代のように米国株圧勝とはならず、日本株も世界の中で優位に立つことが期待される。その意味では20年代の相場のテーマとして日本企業が強みを持つ5Gが大いに注目されると考えている。

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米国株が史上最高値を更新するなど世界の株式相場の上昇に弾みが付くなか、日本株の出遅れ感が目立っている。年初来高値こそ更新しているが、過去1年間の投資収益率(配当込み)を2019年10月末時点でみると、米国(S&P500種株価指数)が14.3%、欧州(STOXX欧州600株価指数)が12%であるのに比べ、日本(東証株価指数)は3.9%と大きく下回る。過去10年では日本株は2.3倍と欧州の1.8倍を上回るものの、米国株の3.6倍には劣後している。

しかし20年から日本で本格的に立ち上がる次世代通信規格「5G」は、日本株の劣位を一変させる可能性を持つ。では主に通信企業への影響を取り上げたが、実は製造業やIT(情報技術)企業を中心に波及力は大きい。今回はこの点について筆者の見解を説明しよう。

通信サービスは世代が進むにつれて加速度的に性能が向上してきた。1980年代に始まった第1世代(1G)はアナログ通信であり、携帯電話は音声通話のみだった。90年代の第2世代(2G)はデジタル通信であり、代表的なサービスが「写メール」や「iモード」である。第3世代(3G)は2001年にサービスが開始され、音声が高品質化するとともに伝送が高速化した。さらに通話を超えた高度なサービスが発達した。米アップルが開発した「iTunes」「iPod」などが音楽ビジネスを根底から変え、ネットを通じた配信サービスが重視されるようになった。そして07年に米アップルは世界初のスマートフォンである「iPhone」を発売した。10年代に普及した第4世代(4G)によってスマホの性能は飛躍的に高まり、我々の生活やビジネスの形を大きく変えた。

通信規格の進化は通信企業の業績と株価を大きく押し上げた歴史がある。日本最大の移動体通信企業であるNTTドコモは3Gのサービス開始後、05年3月期の連結純利益が7476億円に増加した。10年代には15年3月期の4101億円から18年3月期の7908億円とさらに飛躍した。時価総額も10年代に12年11月の4.9兆円から最大時には16年12月の11.8兆円まで増加した。

「au」を運営するKDDIはNTTドコモ以上に成長した。純利益は02年3月期の130億円から19年3月期には6177億円に増えた。時価総額も02年2月の8609億円から最大時には16年4月の9.1兆円に増加した。KDDIはトヨタ自動車が1割強の株式を保有しており、自動運転時代に強みを発揮することが期待される。

そして(1)高速・大容量(2)低遅延(3)多数同時接続という特徴を持つ5Gは、通信企業にとってさらに飛躍するチャンスとなろう。日本の時価総額上位10銘柄のうちNTT、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクグループ、ソフトバンクと5社が広義の通信株であり、これが日本株の復権が期待できると考える根拠の一つである。

5Gは通信企業だけでなく、幅広い業種で進化を促すだろう。例えば5Gは自動運転に不可欠な技術であり、世界の自動車業界を根本的に変化させよう。自動運転では遠隔操作で運転車両を制御する必要があり、通信の遅延(タイムラグ)は事故につながりかねない。また車両や交通インフラなどに多数のセンサーを取り付け、安全を確保しなければならないため、多くの機器が同時にネット上でデータをやり取りする仕組みが重要である。

IT業界でも例えばクラウドサービスの品質が一段と向上する。クラウドサービスは利用者とサーバーを通信回線でつないで、ITサービスやインフラを提供するものである。定期的に顧客に課金するため、景気変動の影響が少なく、安定成長することが期待できる。クラウドサービスで世界をリードする企業は米アマゾン・ドット・コムと米マイクロソフトである。

こうした進化の恩恵を特に受けるとみられるのが半導体である。車載向け、スマホ向けの需要が増加している画像処理用半導体「CMOSイメージセンサー」は一段と市場拡大が見込まれ、世界シェア首位はソニーである(18年で約5割)。またクラウドサービスにはデータの蓄積が不可欠でありデータセンター、サーバーの能力拡充が欠かせない。そのためには記憶用の半導体であるメモリーの増産が必要となる。必然的に半導体関連のニーズも高まり、世界有数の半導体製造装置メーカーである東京エレクトロン、半導体材料のシリコンウエハーで世界首位の信越化学工業にフォローの風が吹くだろう。

デバイス分野でもキーエンス、日本電産、村田製作所など5Gの恩恵を受ける企業が多く、5Gは日本の得意な電機業界を中心とするものづくりの復活にも貢献できるのである。

20年代の世界の株式市場はアマゾン、マイクロソフト、アルファベット、アップルを中心に米国株が優位であることに変化はないだろう。ただし10年代のように米国株圧勝とはならず、日本株も世界の中で優位に立つことが期待される。その意味では20年代の相場のテーマとして日本企業が強みを持つ5Gが大いに注目されると考えている。

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