補完的な利用者基盤を持ち合う両社

川邊健太郎氏(以下、川邊):危機感と志を共有しまして、我々これからやっていきたいなと思いますけれども、具体的な統合におけるシナジーがどのようなものがあるのかということが重要だと思っておりますので、こちらについてこれから説明させていただきたいと思います。

それぞれのシナジー、1つまずあるのが、利用者基盤だと考えております。ヤフーは月間利用者が6,700万人ほどおります。ヤフーに何かお願いをしたい、ビジネスのクライアント様が300万社以上ございます。

出澤剛氏(以下、出澤):一方のLINEは国内の月間ユーザー数で8,200万人おります。そして、同じくクライアント数で、350万社のお客様とつながっております。

川邊:利用者というのは、単純に足し合わせられるものではないと考えております。当然、両方とも日本において大変愛されているサービスですので、重複のユーザーがいると考えております。

ただし補完的なユーザー層かなとは思っております。LINEは、やはりアプリにて大成功したサービスですので、若いユーザーが多い。一方でヤフーは創業20数年経っておりますので、PC時代からのシニアなお客さんがたくさん使ってくださっています。

また、ユーザーの接点において、LINEはスマホのアプリ、ヤフーはスマホに加えてPCや各種ブラウザからもたくさん利用されておりますので、そのようなかたちでの利用者基盤の補完関係が両社ではあるんじゃないのかなと、現在考えております。

さらに、海外ユーザーについてご説明させていただきますと、LINEは多くの海外ユーザーを抱えております。世界全体では1.85億人のユーザーに使っていただいておりまして、提供の国と地域は230にものぼるというところです。

とくに台湾やインドネシアでは、高いシェアを誇りまして、各国ではすでにLINE Payの提供を始めて拡大している途中ですし、今やっている3カ国で銀行開設の準備も同時に進んでいるところなので、今後金融事業の拡大にもこういったユーザー、フットプリントというのは非常に有意義なものだと考えております。

最大のシナジーはサービスの補完関係

川邊:そして我々がシナジーと考える最大のものは当然、両社が提供するサービスです。Yahoo! Japanは検索を祖業としてしまして、メディアのサービス。たとえばYahoo!ニュースですとか、Yahoo!ファイナンスに拡大をしていきました。

川邊:最近で言いますと、みなさんご存知のとおり、「Eコマース革命」に向けて、さまざまな努力をおこなっております。この1年で申し上げますと、モバイルペイメントのPayPay、まさに今日プレスリリースを出させていただきまして、利用者が2,000万人となりました。PayPayを核に、Fintechの事業も現在拡大しております。

出澤:一方のLINEは、メッセンジャーアプリとしてスタートしまして、その利用者さんとのつながりを生かして、その上でニュースであったりゲームであったり、コマースなど、さまざまな生活に関わるサービスを提供しています。

LINEアプリひとつあれば、すべての生活関連サービスが非常にクオリティ高く享受できるという。いわゆる最近の注目の言葉で言うと、「Super Apps」といわれるような構想を当初から行ってきたわけでございます。

そして近年では、ペイメント、ブロックチェーンなどのFitechの事業、そしてLINE ClovaをはじめとするAIの事業に、非常に大きな投資をしてきているというのがLINEの現状でございます。

川邊:このサービスのシナジーも補完的だと思っております。それすなわち、ヤフーでは、まったくメッセンジャーのサービスを提供できておりません。それに対して、LINEはすでに国民的なメッセンジャーサービスである。

一方で、LINEはEコマースはそれほど力が入っている事業ではないですけど、一方でヤフーはEコマースを近年頑張っているということで、それぞれの弱い点を補い合える期待を持っております。

MaaSに取り組む上でのシナジー

川邊:そしてもう1つのシナジーが、株主も含めた大きなグループシナジーが我々には強みとしてあるのではないかと思っております。

すなわち、ヤフーの株主としては国内通信事業者のソフトバンクがございます。当然通信のサービスとしては、ソフトバンクはこれから5Gをやっていきます。そして、Y!mobile、LINEモバイルなどの、さまざまなブランドの通信サービスを提供しています。

一方で、「ビヨンドキャリア」ということで、通信のサービス以上をやっていこうとしている会社でもございます。その戦略の中で、今回の我々と非常に補完的だなと思っているのはMaaSの部分ですね。移動の部分で、MONETやDiDiというような、非常に戦略的な取り組みをしておりますので、こういったシナジーがあるかと思っております。

またすでにYahoo! Japanと生じているシナジーといたしましては、これもかなりおなじみになりつつありますけれども、「ソフトバンクのスマホユーザーであればポイント10倍」などといったものを展開しております。

こういったものが、統合を果たした暁には、「LINEのユーザーもポイント10倍」みたいなことが、もしかしたらできるかもしれません。

アプリ、スマートスピーカーなどの技術連携

出澤:一方の株主であるNAVERなんですが、韓国ナンバーワンのポータルサイトでして、日本におけるヤフーさんに非常に近い部分があって、検索を中心にさまざまなサービスを展開しております。

検索の関連技術だけではなく。技術開発に非常に力を入れておりまして、たとえばカメラアプリのSNOW、非常に若い方たちに人気がありますけれども。SNOWですとか、3DアバターのZEPETOといわれるような、世界的に使われるスマホアプリを提供している会社です。

実際にLINE ClovaのAI技術はLINEとNAVERの共同開発をしているという部分もありますので、このような技術連携というのは、AI化を進めていく上で、さらに大きな意味を持ってくると考えております。

川邊:はい。ヤフー、LINE、そして株主である通信会社のソフトバンク、そしてNAVER。どれも東アジアに位置する会社です。それが、グループシナジーを効かせて、ぜひ世界に羽ばたいて。今のところGAFAとBATというのが、世界において、大きなデジタルのサービスを提供しておりますけれども、我々がぜひこのグループにおいて、第三極、そういったシナジーを作っていきたいなと考えております。

人財ならびに投資、ダイナミックなリソース活用を

そして、両社統合のシナジー。もう1つ、大変重要なところが、人財でございます。ヤフー、LINEともに日本国内においては大変大きなデジタル企業です。その社員数は両方合わせると、なんと2万人以上の社員がおります。

未来を作るという意味においては、エンジニアやデザイナーといったいわゆるクリエイター、データサイエンティストが大変重要なんですけれども、我々両社あわせますと、数千人の規模になっていきます。デジタルの社会において、数千人のクリエイターが未来を作っていける。そういう人財のシナジーも、大変期待をしております。

出澤:もう1つ、非常に大きなシナジーが、両社の投資額でございます。この1,000億という数字は、両社の年間の投資額を合わせた金額になります。今後もこれまで以上に、1,000億規模以上の投資を大胆に実施していきます。統合が完了した暁には、共通化する部分も当然出てくることを考えると、今まで以上に迫力のある投資ができるものと考えております。

そして、今ご紹介してきたようなシナジーをどのような領域で生かしていくのか。

例えば、メディアコンテンツの領域では、双方のデータを適切に利用することによって、当然ながらユーザーさんの許諾をいただきながら適切に利用することによって、今まで以上にひとりひとりのユーザーに寄り添ったサービス・情報をお届けすることができるんじゃないかと思いますし、広告の領域においては、検索、ディスプレイ、アカウントなど相互のソリューションを組み合わせた形で新しい価値をご提供できると思います。

そしてコマースにおいても、メッセンジャーとECとの連携による新しい価値観、新しいユーザー体験を生み出すことができると考えています。

そして両者が積極的に推進しているFintech。この分野、とくにペイメント事業においては、両社の強みをかけ合わせて、ユーザーさん、店舗さん、その双方に利便性を飛躍的に向上させることができると思いますので、スピードアップ、スケールアップを、このペイメント事業においてしていくと。

そしてそれはO2Oの事業であるとか、あるいは銀行はじめFintechの事業、ペイメントの先につながっている力強い垂直的な立ち上げにつながっていくもの、という確信をしています。