安倍晋三首相(65)の在職日数が20日に通算2887日となり、桂太郎元首相の記録を106年ぶりに塗り替えて史上最長になる。第1次政権は早期退陣し、再登板以降も現在野党から追及を受けている「桜を見る会」問題など数多くの批判を集めながら、なぜ長期政権を築けたのか―。新人議員時代の派閥の先輩で、現在も親交の深い亀井静香元衆院議員(83)は後継者の人材不足を挙げ「おチンチンついてるヤツがいない」と喝破した。
現在も官邸や富ケ谷私邸に足を運び、電話でも安倍首相と頻繁な意見交換を続ける亀井氏は、異例の長期政権が続いている理由を極めて単純に解釈している。
「そんなの簡単じゃん。『晋三もう辞めろ、オレがやる』ってヤツがいないからさ。単騎で駆け出す信長がいないんだ。誰か後ろをついて来てくれるかな…って気にしてるような。それじゃ天下は取れんわい」
言われ続ける後継者の人材不足。今も「ポスト安倍」には岸田文雄政調会長、菅義偉官房長官、石破茂元幹事長らの名が挙がっているが、国民的期待を受けているとは言い難い。
「石破にはアドバイスしてるんだけど『オレが代わる』とは、よう言わん。100%の政治家なんていないんだから、イチャモンつけてでもやらないと。みんな、おチンチンついてないんだ。こないだ晋三に聞いたら『辞めろ、と言われるのはやっぱりイヤですよ…』と言ってたぞ。小泉進次郎(環境相)は若手の中では良い方だと思うけど、まだちょっとなあ」
党内事情の前に、野党が政権交代をうかがうような支持を集められず、国政選挙で安倍自民が大勝し続けていることが長期政権の呼び水になっていることは間違いない。
「野党だって同じだよ。戦闘力のある激烈な政治家がいなくなったな。もちろん選挙区制度の問題とかはあるにしたって、組織に乗っかる甘ちゃんばかりで去勢された男たちだよ。女学校の方が元気あるぞ。コレ、ちゃんと書いといてくれよ」
吉田茂首相はサンフランシスコ講和条約締結、佐藤栄作首相は沖縄返還。長期政権を築いた首相は政治史に残る実績を任期中に成している。安倍政権はどうだろう。
「なーんもない。惰性で長くやってるだけだ。今、残っている日本の力は日本人の勤勉さで、政治の力じゃない。実現できていないことが多すぎる。憲法改正にしたって、誰でも言えるような程度の話しかしてない。で、アメリカのポチになってナメられてる。仲良くするってことはオネエ言葉で擦り寄ることじゃないんだ。フトコロに何か隠し持ってる危うさがないとダメだし、ホッペタ引っぱたきながら仲良くすればいい。将来に対しても同じだ。必ず再び大地震は起きるのに、竹細工をチョボチョボ作るレベルの防災意識しかない」
1979年、新人自民議員の亀井氏は派閥「清和会」に入り、現首相の父・安倍晋太郎元外相を支えた。
「晋太郎先生はあったかい人で、派閥を除名された時も『亀井君、帰ってこいよ』って戻してくれたりね。政治家としては…世界中をパーティーして回っただけで正直学ぶことはなかったけど…。晋三も同じで人はいいんだよ。いい子。本当にナイスガイだよ。でも、政治家としては別の話だ」
晋太郎氏の死去後の93年、清和会に入った新人が安倍首相だった。
「最初は『晋太郎先生の秘書』って印象しかなかったよ。派閥のみんなで酒を飲んでるとね、幹部たちと乾杯するために晋三は荒井広幸と組んでいつも宴会芸をやってたよ。なんかアーチェリーの真似事みたいなのをしたりさ。そんな子が今は総理だからなあ…。いい子だけど、もうひとつ頑張らにゃいかん」
(北野 新太)
◆亀井 静香(かめい・しずか)1936年11月1日、広島県庄原市生まれ。83歳。60年に東大卒業後、サラリーマンを経て警察庁入庁。あさま山荘事件などを担当した。77年、政治家を志して退官。79年、自民党公認で衆院選旧広島3区初当選。以降13期務め、運輸相や建設相、党政調会長などを歴任。2001年、党総裁選立候補。05年、郵政民営化法案に反対して離党。国民新党を旗揚げ。17年、政界引退。現在は太陽光発電企業「MJSソーラー」代表取締役会長。