11月13日、香港中文大学で武装した警官隊と抗議者が激しく衝突した。言論と研究の空間である大学キャンパスに公権力が突入し、抗争が起きるまでに深刻化した香港政府への抗議活動。大学の自治が揺らぎ混乱が深まる現場で今、何が起きているのか。同大に在籍する若手日本人研究者がキャンパス内から緊急寄稿した。
新たな局面を迎えたデモ
11月8日に香港政府に対する抗議活動を巡る死亡者が出て、11日には警官が実弾を発砲し抗議者が重傷を負った。ストライキは香港全体に呼びかけられ、道路やMTR(鉄道)などの利用を妨げるため障害物が高架や歩道橋の上から落とされるようになった。警察はこうした妨害運動を理由に抗議者の拠点とされる複数の大学を直接攻撃対象とし、催涙弾をキャンパスに対し大規模に打ち込み始めた。(ただし、実際に妨害活動が始まったのが、警察の攻撃よりも前だったのか後だったのかについては諸説ある)
その中でもとりわけ激しい抗争が、11日から行われているのが、香港中文大学だ。報道によれば警察は2000発以上の催涙弾を使用し、さらに犯人識別用のインクが出る放水車もキャンパス内で使用した。筆者は今、この大学の博士課程で文化人類学の研究を行っており、同時にTA(ティーチング・アシスタント)として学生を教える立場でもある。この原稿は混乱の渦中にあるキャンパス内で執筆しているものだ。
高層ビルが立ち並ぶ一般的な香港のイメージとは裏腹に、香港中文大学のキャンパスは山そのものが大学になったような地形であり、市街地に隣接していない。大学に出入りできる場所も市街地にあるキャンパスに比べれば限られている。抗議者はキャンパスへの限られた進入路を塞ぐ形で大型バスから樹木まで様々なものでバリケードを作り、燃やした。特に車両を燃やした際はガソリンに引火し相当燃えたようで、数km以上先からその黒い煙が見えたと聞く。
現在、キャンパスの主要な出入り口は塞がれている。外に出ようとする学生や教職員によって、獣道やフェンスを壊して脱出ルートを作って出入りを確保した場所など地図には載っていない出口が次々に作られ、あるいは発見されている。ただし、それらを使って大学から脱出しても周囲の公共交通はほとんど動いていないため、そこから先の移動は基本的に徒歩かシェア自転車となる。道路に大量のレンガが並べてあったりバリケードが築かれたりしているなど障害物が道路に多くあり、周囲への自家用車の乗り入れも容易ではないからだ。
コメント16件
u_dragon
中国が要求を飲むことはないと、香港トップの林鄭長官を通して再度明言してしまいました。
予測しえたものの非常に残念な瞬間でした。
他国はそれを助ける事は出来ないのか。
米国の下院の香港人権法案くらいですかね。それとトランプ大統領にしか出来な
いのか、中国との(貿易)対立の明確化。
...続きを読む人権のない中国を放置して、よしんば中国が覇者となっては、他国にも他人事ではなくなる未来が待つ。
今でも南沙諸島基地建設や港の差し押え、インド国境付近のじわじわ侵略など。実例が増えていく。
(南沙諸島の付近の漁師は魚を無料でぶんどられるんだとか)
香港の市民の思惑を達成するなら独立しか無いのかもしれないが台湾へのしつこい嫌がらせを考えたら先行きは明るくない。
せめて香港警察や市民デモに紛れ込んだ中国共産党の手下へ国際社会が一丸となって非難をぶつけるべき。
(数日遅れて中国本土で報道された最初のほうの香港デモ。逃亡犯防止条例の賛成多数という見出しと。CIAとかFBIとかの文字が紙面に多数踊っており、外国の工作だと宣伝していたのかもしれない。)
護民官ペトロニウス
猫
>他国はそれを助ける事は出来ないのか。
運動の指導者層の亡命を受け入れる事ですかねー、その昔孫文の亡命を受け入れたように。
ちなみに、戦前の日本は中国に限らず政治亡命者を受け入れていました。インドで独立運動をしていたボースとかね。
日本
を英国起源のジャパニーズカレーの他に、インド直伝のカレーも存在しているのは彼の貢献によるもの。
...続きを読むhttps://www.nakamuraya.co.jp/pavilion/products/pro_001.html
M
香港の学生たちによる指導者のいない運動は、香港政府と話し合いをして落としどころをつけることもできないまま長期化し、双方過激化しているように見えます。残念ですが、犯罪人引渡条例への反対だけでなく普通選挙の実施要求など、西側諸国から見たら当然
の要求であっても、香港政府を指導しているだろう北京が認めるとは思えないものです。同じように学生が行ったひまわり運動は、普通選挙が実施され言論の自由も保証されている台湾であったからこその成功だと言えると思います。...続きを読むこの件で国連や米国などが調停者となれれば学生たちは話し合いに応じるのでしょうか。ただ、北京は介入を拒否しそうで、どうも話し合いの実現が想像できないです。
けるん
ゴルゴ13に「偽りの五星紅旗」っていうエピソードがある。掲載は1985年、舞台は返還前の香港。香港の巨大財閥の総帥が、返還前の香港経済を敢えて破綻させ、香港を無価値なものにして中国、台湾から手を引かせ独立することをもくろむが、それを察知した
CIAと中国共産党がこの総帥を暗殺するっていう話。...続きを読む今や、香港の民衆はみんなそんな気分なのかもしれない。「昔は良かった。今は働けど働けど中国、そして中国と手を組んだ大財閥に搾り取られるだけ。」というのが香港の現実。ある意味、上海や北京と変わらないのだが、中国人には耐えられても、香港人には耐えられないのでは?
foo-bow
先日のキャノンの方の記事に比べると、臨場感というか緊張感というか、伝わってくるものがありますね。先に投稿した他サイトの福島香織さんの記事からみても、既に中国共産党は搦め手で裏からあの手この手を香港につぎ込んでいると思われます。天安門で正面か
ら弾圧して非難を浴びた経験から学んだかのように。...続きを読む中国は香港返還時の約束事を誠実に守るべきだし、これ以上の悲劇の回避には強者の側が度量を見せるしかないという(これも福島さんの)意見に賛同します。イギリスはどう思っているのか、それどころではないのかもしれないが・・・。
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