ドイツ議会がiPhoneのNFCモバイル決済を他社に開放する法律を可決。アップルは「セキュリティに危険」と警告
Apple Payの急成長が警戒されている?
ドイツ連邦議会がiPhoneのNFCチップをApple Pay以外のモバイル決済サービス企業に開放することを義務づける趣旨の法案を可決しました。アップルはこれに対して、データ保護と財務情報のセキュリティが損なわれる可能性があるとコメントしています。
米Reuters報道によると、この法律はアップルを具体的に名指しせず「電子マネーのインフラ運営者に対して、合理的なマージンを支払う他社モバイル決済サービスにインフラへのアクセスを認めることを義務づける」というもの。マネーロンダリング防止法の修正というかたちで、来年初めに施行される予定です。
アップルの名前こそ挙がっていないものの、Androidスマートフォンでは全てのカードと銀行アプリがNFCチップにアクセスできると謳われています。それに対してiPhoneでのNFCによる支払いは「Walletアプリに追加されたカードや決済サービス」のみ。今回の法律も、事実上Apple Payを狙い撃ちしたと言えそうです。
アップル広報は「この法律がいきなり導入されたことに驚く」とコメント。「ユーザーの使いやすさやデータ保護、および財務情報のセキュリティに有害である可能性がある」としています。
しかし他のEU加盟諸国も、ドイツの動きに続くかもしれません。EUの独禁法規制当局がApple Payを調査しているとの噂は、10月にも報じられたばかりです。当局からの質問に対して、企業側からはiPhoneの初期設定中にApple Payをセットアップするよう促したり、アップルが競合他社の決済サービスをWalletアプリに持ち込むのを拒否したなど、Apple Payが他社サービスを排除するようiOSに統合されていると裏付ける回答があったとも伝えられています。
近年サービス事業への進出がめざましいアップルにとって、Apple Payは主要な成長分野の1つです。米金融大手モルガン・スタンレーも、その決済額が2022年には1900億ドル(約26兆7000億円)、2027年には3040億ドル(約33兆円)に達し、オンライン決済業界トップのPayPalとの差も着実に縮小すると予想していました。アップルにオンライン決済での主導権を握られることに、EU諸国も危機感を募らせているのかもしれません。
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