ヤフーを展開するZホールディングス(HD)と無料通信アプリのLINE(ライン)は14日、両社の経営統合について「協議を行っていることは事実」と発表した。LINEは人工知能(AI)に巨額の投資を続けている。ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長はAIに傾倒しており、資金力にモノを言わせた拡大路線という“お家芸”に打って出た。ただ、相乗効果は未知数で、巨大IT企業への規制強化という落とし穴も待ち構えている。
ヤフーとLINEの経営統合には、インターネットサービスの顧客基盤を拡大し、国内のネットビジネスで覇権を握る狙いがある。LINEは国内で約8000万人の通信アプリの利用者を抱え、ヤフーの利用者は約5000万人にのぼる。1億人規模のネットサービス基盤で、米中の巨大IT企業に対抗する。
両社の主要事業は、メディア、金融、インフラなどで重複し、統合が「食い合い」を招く可能性もある。ただ、ヤフーの利用者の中心は30代以上。一方のLINEの通信アプリは若年層の厚さが強みで伸びしろが大きい。慶応大大学院の黒坂達也特任准教授は「コンテンツのヤフーとコミュニケーションに強いLINEでは事業の重なりは少ない」と相乗効果に期待する。
スマホ決済でも「ペイペイ」と「LINEペイ」のアプリを残したまま、取り扱金額を維持・拡大し、販売管理費などを削減することも可能だ。
米ヤフー(現アルタバ)との合弁で誕生したヤフーは、事業を国内に限定されている。一方、LINEは2020年にインドネシアやタイ、台湾で銀行事業を開始する予定で、海外展開にも積極的だ。ヤフーは経営統合でアジア市場の成長も取り込みたい構えだ。
ただ、SBGは6日発表した中間連結決算で、主力のファンド事業で多額の損失を計上し、営業赤字に転落。孫氏の経営姿勢に「焦り」を指定する声もある。LINEは赤字決算が続いている。
また、巨大IT企業に対する世界的な規制強化の流れも立ちはだかる。黒坂氏は「提供するサービスのほとんどで寡占でき、国内ではGAFA以上のパワーを持つ」と警鐘を鳴らす。これらの課題をクリアできるかも、統合を実現させる過程で壁となる可能性がある。
(高木克聡)
copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.