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【国際】30万人規模 反政府デモ チェコ 89年以来、最大か
一九八九年に当時のチェコスロバキアで社会主義体制が崩壊した「ビロード革命」から十七日で三十年を迎えた。チェコの首都プラハでは十六日、汚職疑惑に揺れるバビシュ首相の退陣を求める大規模な反政府デモが行われ、主催者発表で三十万人が参加。今年六月のデモ動員数を超え、革命以来最大規模になったとみられる。 (プラハで、近藤晶、写真も) 「三十年前のデモがなければ、今こうして声を上げることはできなかった」。大学で政治学を学ぶヤクブ・フーシュさん(23)は仲間五人とプラハ中心部のレトナー公園に駆け付けた。デモには家族連れや高齢者ら幅広い層が参加。プラカードや横断幕を掲げ、バビシュ氏に対し「恥を知れ」などと声を上げた。 実業家で「チェコのトランプ」とも呼ばれるバビシュ氏は、欧州連合(EU)の補助金を不正に受け取った疑惑が浮上。四月から各地でデモが頻発していた。六月のデモには二十五万人が集まったが、バビシュ氏は疑惑を全面否定し、首相辞任も拒否している。 デモを主催したのは学生らが設立した市民団体。ベンジャミン・ロール副代表(24)は「権力の乱用を阻止するために私たちはここにいる。自由と民主主義を守る闘いに終わりはない」と演説。ミクラーシュ・ミナーシュ代表(26)はバビシュ氏の辞任を求めた上で「私たちは政治家がルールを守っているかどうかチェックする番犬のような存在だ」と述べ、民主主義を守るための署名を呼び掛けた。 バビシュ氏率いる中道右派の新興政党「ANO2011」は二〇一七年の下院選で第一党に躍進し、バビシュ政権が発足。好調な経済を背景に、バビシュ氏の支持率は疑惑発覚後も40%以上を維持している。 十六日のデモには、EUの補助金を申請する企業の手続きをサポートする会社に勤める女性も参加した。ティナ・ディミトロフさん(53)は「最初から不正受給の狙いがあった」と指摘。「バビシュ氏にはモラルも信頼もない。今すぐ辞めるべきだ」と憤る。 デモを呼び掛けた市民団体は、年末までにバビシュ氏が辞任しなければ、来年一月七日に再びデモを行うとしている。 <ビロード革命> チェコスロバキアで民主化運動が弾圧された「プラハの春」から約20年後の1989年、東欧各国の社会主義政権崩壊とともに起きた。11月17日にプラハで合法的な学生デモが警官隊により制圧され、民主化運動が全国に拡大。1カ月余りの間に共産党支配の打倒と民主化が流血を伴うことなく実現されたため、滑らかなビロードに例えて命名された。93年に連邦制が解消され、チェコとスロバキアに分離された。 PR情報
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