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【社説】

どうする災害ごみ 平時にもできること

 ごみ処理は、今や災害対策のメインストリーム(本流)。公助による撤去を待つだけでなく、日ごろからごみを出さないようにする自助の構えも必要だ。

 「自然災害に直接起因して発生する廃棄物のうち、生活保全上の支障へ対処するため、市区町村等が処理を実施するもの-」

 東日本大震災を契機に策定された環境省の対策指針は、このように「災害廃棄物」を位置付ける。

◆天災は全てをごみに

 木くず、コンクリートがら、瓦、ガラス、陶磁器くず、太陽光パネルの破片、流木、倒木、廃家電、マットレスや布団、そして土砂…。自然物、人工物の区別なく、ありとあらゆるものが地震で崩され、洪水や津波に押し流されて、混然一体の巨大な“ごみ”の塊と化す。自然災害の猛威をここでも実感させられる。

 東日本大震災では、推計約三千百万トン、阪神大震災では、同じく約千五百万トン、熊本地震(熊本県)約三百十一万トン、昨年夏の西日本豪雨(岡山、広島、愛媛県)では約百九十万トンもの災害ごみが発生した。

 台風19号による被災から一カ月が過ぎた。住宅被害は全半壊、一部損壊合わせて約二万九千棟。環境省によると、災害ごみの発生量は数百万トンに上るとみられ、リサイクルや埋め立てによる処理終了までに二年以上かかるという。

 自治体が用意した仮置き場は、発災後早々満杯になり、住民が自主的に設置した「仮の仮置き場」とか「勝手仮置き場」と呼ばれる私的集積場が、被災地では散見される。

 たかがごみ、されどごみ。未分別のごみ置き場には、第一に公衆衛生上の問題がある。ある仮置き場のごみの山から大きなキノコが何本も生えだしているのを見た。

◆復旧、復興を阻害する

 空き地や空間を占領し、人や重機の作業を妨げる。ごみの山の存在自体、復興への心理的な壁になる。福島第一原発の周辺でも、除染の土が詰められた黒い大きな袋の山を見るだけで「気持ちが萎(な)える」という話をよく聞いた。

 災害ごみの迅速処理は、復旧復興への第一歩という見方もある。

 災害ごみの処分は法律上、一般の家庭ごみ同様、取りあえず市区町村の責任だ。

 市区町村は、国の指針に基づいて災害廃棄物処理計画を策定し、備えを進めることになっている。

 しかし、二〇一七年末の時点の策定率は27%にとどまっている。

 巨大化した台風が列島各地を頻繁に襲うようになり、南海トラフ巨大地震の危険も迫る。膨大な災害ごみが毎年、同じ地域で発生しても不思議ではない時代、「計画なんか立てられない」という担当者の本音も耳にする。

 もはや災害ごみ処理は、一自治体の手に余り、広域連携の必要性が叫ばれる。国や県も自治体間連携の仲介を進めている。しかし、災害が大きくなればなるほど「想定外」の起きるリスクは高くなり、広域連携ができたとしても、思い通りにことは進まない。埋め立て処分場のスペースにも限りがある。広域処理にも限りがある。だとすれば、必要なのは災害ごみの発生抑制、そして減量だ。通常の家庭ごみと同じである。

 減量には、やはり分別が有効だ。大分県臼杵市は昨年、「家庭ごみ分別事典」中に「災害ごみの出し方」という項目を追加した。木質系(大型の家具等)、畳、がれき等、家電製品、タイヤ等-など九種類の分別を求めている。民間の処理業者を頼むにしても、混ぜ合わさって状態の悪いごみほど、リサイクルなどが難しくなるからだ。

 <明日はわが身という危機感をもって日ごろから備えておくことが、いかに大切であるかということを改めて認識させられた>(廃棄物資源循環学会誌)

 一昨年、九州北部豪雨の被害に遭った福岡県朝倉市。その当時、市のリサイクル推進係長として災害ごみの受け入れに奔走した上村一成さんが、現場から得た教訓である。

 上村さんが「これだけは言っておきたい」ということがある。

 「家庭内で不要になった古い家電や日用品など退蔵物を早めに処分しておいていただきたい。いざ災害が起きると、これらがごそっと、ごみになって出てきます。それが本当にやっかいで…」

◆断捨離は防災活動だ

 「非常時のごみ分別はやはりストレス。リサイクルよりリデュース(発生抑制)を-。ごみ処理の基本は、災害ごみの場合も同じです」と、国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センター主任研究員の多島良さんは考える。

 大災害が起きれば、家屋が破壊されるなど、どうしても大量のごみが出てしまう。しかし平時に減らせるものもある。

 

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