ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
「……ヒクッ……」
ナザリック地下大墳墓の第九階層にある食堂でひときわ大きな音が響きわたりました。
「……ヒック!」
食事中の一般メイド達が一斉に振り向いた視線の先にいたのはなんと! ありんすちゃんでした。
ありんすちゃんは目を見開いて口を両手で押さえています。
「……ヒック! しゃっくり、とまらない……ヒック! でありんちゅ……ヒック!」
どうやらありんすちゃんはしゃっくりが止まらなくなってしまったようですね。
ありんすちゃんは昼食にペペロンチーノを食べていたのですが……口に入れようとする度にしゃっくりが出て、フォークに巻かれたペペロンチーノが弾みで飛んでいっちゃうのでした。
「……全く……このナザリックの次期支配者たる私、エクレア・エクレール・エイクレアーに先程からパスタを投げつけているのはいったいどなたですかな?……」
エクレアが頭の上からパスタをたらしてありんすちゃんのもとにやってきました。
「……ありんちゅちゃ、ヒック! わざとじゃ、ヒック! ないで…………ヒャックション!」
ありんすちゃんがくしゃみとしゃっくりを同時にした為に〈グレーターテレポーテーション〉が発動してエクレアは何処かへ転移してしまいました。
「……ヒャック……ヒック……」
ありんすちゃんのしゃっくりは止まりそうにありません。
「おやおや? ありんすちゃん、17回目のしゃっくりっすね。知ってたっすか? しゃっくりって止まらずに百回続けてしたら死んじゃうっすよ?」
唐突に姿を見せたルプスレギナの言葉にありんすの顔色が真っ青になります。
「……ヒクッ……なんちょかちないと……ヒクッ……ちんじゃうで……ヒクッ……ありんちゅ……」
ありんすちゃんは食事を中断すると走り出していきました。
※ ※ ※
「えー? しゃっくりを止める方法が知りたい?」
突然のありんすちゃんの来訪にアウラがすっとんきょうな声を上げます。
「……うーん……いろんな方法があったと思うけど……どうしようかな?」
腕を組んで考え込むアウラをありんすちゃんは期待のこもった眼差しで見つめます。
「わっ‼ ど、どうかな? あの、びっくりするとしゃっくりが止まりますよね」
突然現れたマーレがありんすちゃんを驚かしました。でも……
「……………ヒック」
残念ながらありんすちゃんのしゃっくりは止まりません。
「……そうだ! たしか茶釜様に教えてもらった方法があった!」
アウラが手を叩きました。
「うんうん。これなら大丈夫だよ。こうして鼻をつまんで水を一気に沢山飲むんだよ。そうすれば一発で止まるはずだよ」
ありんすちゃんは頑張って水を沢山飲み続けました。沢山飲んでお腹はチャポンチャポンです。
「……………………………ヒック」
うーん……残念ながらありんすちゃんのしゃっくりは相当手強いみたいですよ。
「……ヒック……ヒック……ヒック……」
大変です。しゃっくりが収まるどころかむしろひどくなってきたようです。
「……ヒック……ありんゅちゃ、ヒック……ちにたくないでありんゅちゃ……ヒック……うわわああん!」
ありんすちゃんは泣きながら飛び出していってしまいました。
※ ※ ※
「……え? ありんすちゃんのしゃっくりが止まらないと……ありんすちゃんが死んでしまう、ですって?」
ありんすちゃんが泣きながら訴えていますがアルベドは落ち着いていました。
うーん……さすがは守護者統括ですね。アインズ様が留守中のナザリックを任せるだけの事はあります。
「……ありんすちゃん、一言だけよいかしら?」
ありんすちゃんは真っ赤に腫らした目をこすりながらアルベドを見上げました。
「……アンデッドは死なないんじゃないかしら?」
「………………」
ありんすちゃんはポカーンと口を開けたまま固まりました。
「……………」
「……………」
しばらく二人は無言で向き合っていましたが……
「あ! しゃっくり、止まったでありんちゅ! ありんちゅちゃ、こりでちなないでありんちゅ!」
ありんすちゃんは踊りながら飛び出していきました。仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。