【ワシントン=河浪武史】米連邦議会で香港での人権や民主主義を支援する「香港人権法案」を可決する可能性が出てきた。同法案は香港で不当拘束などの人権侵害があれば、関税やビザ発給など米国が香港に認める特権を剥奪できる仕組みだ。下院は通過済みで上院でも早ければ18日に採決する。同法案が成立すれば中国の反発は必至で、両国の貿易協議が一段とこじれるリスクもある。
米議会では「香港人権・民主主義法案」の審議が最終局面に入った。同法案は香港で「一国二制度」が保たれているかを監視するよう米国務省に求める。その上で香港で人権侵害があれば、米国が認める貿易や金融などの特権を香港から剥奪でき、関与した中国や香港の当局者に制裁措置を講じることも認める。下院は10月に可決済みで、上院でも早ければ18日に可決する可能性がある。
米政権は知的財産権の侵害などを理由に中国との関税合戦に突入しているが、米議会の強硬姿勢も目立つ。法案提出者であるルビオ上院議員(与党・共和党)は「米国は中国に対して、香港市民の奮闘を自由世界が支持しているとのメッセージを発する必要がある」と早期採決を要求。野党・民主党の上院トップ、シューマー院内総務もトランプ大統領に中国との対決を求めており、与野党をまたいで香港人権法案への賛同者が多い。
米中の対立は貿易不均衡の問題からハイテク分野の覇権争いへと戦線が拡大しているが、米議会が人権侵害を理由に新たな制裁に道を開けば、中国の反発は必至だ。習近平(シー・ジンピン)体制は人権問題に最も過敏に反応するだけに、中国外務省は「同法案が成立すれば、主権を守るために効果的な措置を講じる」と報復措置すら視野に入れる。
ホワイトハウスは中国との貿易交渉で、農業や金融分野などで「第1段階の合意」を目指し、11月中の協定署名に向けて最終調整中だ。交渉終盤で米議会が「香港人権法案」を可決すれば、中国が態度を硬化させて貿易協議が再び膠着するリスクも残る。同法案の成立にはトランプ氏の署名が必要になるが、米政権にとって中国との対決姿勢を鮮明にするか早期合意を優先するかを選ぶ試金石ともなる。
政府に対する抗議活動が長引く香港では17日もデモ隊と警察の衝突が続いた。一部の大学周辺ではレンガを投げつけるデモ隊と催涙弾で排除を図る警官隊が対立し、香港警察は同日に警官1人が矢で射られ負傷したと発表した。香港政府はすべての学校を18日は休校にすると決めた。休校は週末も含めると14日から5日連続となり、教育現場での混乱が続いている。