白山市の県ふれあい昆虫館は16日、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅の恐れがある危急種とされている「オウサマゲンゴロウモドキ」の成虫の展示を始めた。欧州に生息し、生体展示は国内で初めて。同館にはゲンゴロウの飼育で国内トップレベルの知見があり、今後、生態の解明を進めながら飼育、繁殖技術を確立し、成虫を提供したラトビア共和国側にノウハウを伝える計画だ。
オウサマゲンゴロウモドキは欧州諸国の巨大な湖に生息し、体長36~44ミリとゲンゴロウの中で最大となる。背面は深緑色で、上皮が横に広がっているのが特徴だ。展示されたのは雄雌各4匹で、ラトビアのラトガル動物園から提供された。
ふれあい昆虫館でゲンゴロウなどの水生昆虫を専門とする渡部晃平学芸員(33)によると、オウサマゲンゴロウモドキは近年の気候変動などの影響で減少傾向にある。ただ、繁殖のために、幼虫の餌となるトビケラを大量に捕獲すると、その地域の生態系の破壊につながりかねない。
そこで、ラトガル動物園側から相談を受けた日本の研究者を通じ、ゲンゴロウの飼育や繁殖で豊富な経験のあるふれあい昆虫館など国内3施設に声が掛かり、トビケラの代わりとなる餌の調査、開発に協力することになったという。
昆虫館は今後、展示と並行してオウサマゲンゴロウモドキの繁殖に取り組み、来年3月頃に採卵を予定している。幼虫まで育てた後、トビケラ以外の昆虫を食べるかどうかなどを調べ、将来的に調査結果を動物園側に伝える予定だ。
オウサマゲンゴロウモドキの生体展示が夢だったという渡部学芸員は「大変感激しており、多くの人に見てもらいたい。種の保全に貢献できるよう全力で研究していきたい」と意欲を示した。